「チェンジ」の1年、そして新しい政治の「礎」をつくる1年がいよいよスタートしました。5日に開会した通常国会、個人的にはちょっとした「チェンジ」がありました。所属委員会が議院運営委員会と文教科学委員会に変わり、会派「民主党・新緑風会・国民新・日本」の国会対策副委員長に就任することになりました。
 議院運営委員会はみなさんもご存知のように、国会の審議日程、取り上げる議題などを与野党で話し合い、決定する場です。国会にまつわるすべての情報が入ってくるため、今、何が問題となっているのか、何を優先的に議論すべきなのか、全体の動きがよく把握できます。与野党それぞれの思惑が真正面からぶつかりますから、委員会は常に白熱しています。

 僕は会派には属しているものの、無所属議員。重要な国会対策の役職に就くのは異例の人事だそうです。しかし、衆議院で野党が勝利し、政権交代が実現しても、少なくとも参議院では民主党だけで法案を通すことができません。会派を組んでいる国民新党、新党日本はもちろん、社民党など他の政党に協力を依頼する場面は必ず出てきます。そんな時に、「無所属議員としてうまく横のつながりをつくってほしい」。これが僕の選ばれた理由だと伺いました。僕もいただいた機会を生かして、少しでもいい法案が国会を通過するように、全力で取り組んでいきたいと思っています。

 さて、今国会の最初のヤマは第2次補正予算案をめぐる攻防です。この予算に含まれている定額給付金の問題点は前回までに指摘してきた通り。「定額給付金は切り離して議論すべき」。僕たちは、そう主張しています。

 ところが麻生首相には「これだけはやり抜かなければならない」と方針撤回の意思はみられません。「(定額給付金は)あくまで75兆円の景気対策のうちの2兆円」と、予算案に含まれている施策がそれだけではないことを強調しています。

 しかし、今回の2次補正の中身を精査すると、問題点こそ“それだけではない”のです。たとえば「子育て応援特別手当」。第2子以降で3〜5歳の子どもに対して、月に3000円を支給することになっています。しかし、給付はわずか1年限り。昨年、長男が誕生した立場から言わせてもらえれば、子育ては誰もが大変です。なぜ第2子以降に限定するのかも理解に苦しみます。

 蓮舫議員(民主党)が委員会で指摘したように、たった1年の支給では少子化対策にもつながりませんし、微々たる額では子育て支援にしても効果が薄すぎます。ならば、新生児集中治療室(NICU)の整備補助といった周産期医療体制を充実させる方向にお金をつかったほうが、国民にとってプラスになるのではないでしょうか。

 こういった素晴らしい提案が国会で出されているにもかかわらず、予算が修正されることはないと言っていいでしょう。今回も政府・与党は「原案通り可決」の方向で審議を進めています。いいものがあれば、取り入れる。世間では当たり前の常識が永田町で通用しないのは本当に不思議です。

 昨年の自民党総裁選で石破茂・現農林水産大臣は「今までは官僚が作ったものを自民党のラベルで売っていた」と発言していました。「100年に1度」といわれる経済危機が叫ばれる中、このまま半端な“商品”を国民に押し付けていいのでしょうか。予算はいったい誰のためにあるのか。官僚でも総理大臣でも国会議員でもないことは明らかです。

 まだ、今ならやり直しがききます。政府、与党のみなさんも良識はお持ちのはずです。それを今、この場で発揮していただくことを期待しています。

 さて、2次補正に続いては2009年度予算案の審議がやってきます。19日に閣議決定された予算案によると、文部科学省のスポーツ関連予算は225億円、補正による前倒分の15億円をプラスすれば、今年度より50億円の増額となりました。

 おおまかな内訳は以下のとおりです。
・ナショナルトレーニングセンター(NTC)競技別強化拠点施設高機能化事業
6億1300万円
・NTC宿泊施設の整備
17億400万円
・競技力向上ナショナルプロジェクト
6億800万円
・国立競技場の在り方に関する調査研究
1億7800万円
・ドーピング防止活動推進事業
2億7200万円
・総合型地域スポーツクラブの全国展開のための支援
8200万円
・「全国体育・運動能力、運動習慣等調査」に基づく子どもの体力向上支援事業
1億5800万円
・トップアスリート派遣指導事業
1億100万円
・安全・安心な学校づくり交付金(中学校武道場新規整備分)
40億2600万円
・中学校武道必修化に向けた地域連携指導実践(全国470校で実施)
4億9400万円

 特筆すべきは今回初めて、「総合型地域スポーツクラブの全国展開のための支援」に対し、きちんと予算が確保されたことでしょう。支援をどんな基準で行うのか、といった詳細は議論すべき点ですが、総合型地域スポーツクラブ拡充への道筋がついたのは一歩前進だと考えます。

 とはいえ、その額は1億円にも達していません。NTCやトップアスリートの環境整備、強化には約30億円もの費用が充てられますから雲泥の差です。以前も指摘したように、普及なくして育成、強化はありません。その観点からみると、まだまだ日本のスポーツ予算はアンバランスと言えるでしょう。

 また予算では今年度、約1億円が投入された国立競技場への調査を引き続き実施することになっています。総合型スポーツクラブ支援の8200万円を上回る金額を、わずか一施設の、しかも調査研究だけにつぎ込む意義はどこにあるのか。今回はさらに約7000万円も増額されていますから、しっかり追及しなくてはいけない部分だと感じています。

 前年度よりスポーツ関連予算は増えたものの、文化庁のそれと比べれば、まだ4分の1に過ぎません。ある統計によると、五輪の金メダル獲得数は国家のスポーツ予算に比例しており、ほぼ10億円でメダル1個の計算になるそうです。日本は昨年の北京五輪で9個の金メダル。予算は190億円ですから、残念ながら費用対効果が悪いようです。

「暗い世の中だからこそ、国民に夢を与え、元気にするスポーツは必要。もっと力を注ぐべきだ」
「日々の生活に困っている方の多い状況下で、スポーツ予算を増強するのはおかしい」
 スポーツ予算の増額については賛否両論あります。また中身についても、僕のように普及を重視する考え方もあれば、トップアスリートの強化費を拡充しようと考えている方もたくさんいます。

 スポーツは人々にとって、最も身近なもののひとつであるにもかかわらず、これまで国会で、そのあり方が大きな議論になることはありませんでした。しかし、スポーツ省(庁)を設立する動きも出ている中、日本のスポーツをどう位置づけるかは、国民のみなさんを巻き込んで話をしなくてはならないテーマになっています。

 流行の言葉ではありませんが、スポーツにまつわる「国民運動」を起こさなくてはいけません。おそらく近々、国会での質問機会も巡ってくることでしょう。運動の先導役として、どんどん問題提起をしていくつもりです。


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
>>友近としろう公式HP
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