2016年の夏季五輪、パラリンピックの招致を目指す東京都が12日、立候補の書類をIOCに提出しました。しかし、これにあわせて行うはずだった招致を求める国会決議は実現しないまま。招致議員連盟の一員として賛成討論の準備をし、与野党問わず働きかけをしていただけに残念な思いがあります。
 報道などでは、民主党が政局絡みもあって決議に反発しているという論調も出ているようです。しかし、国会内の実情は少し違います。むしろ、民主党が多数を占める参議院では決議はいつでもできる状況になっています。ただ、こういった決議は衆議院が先に行う慣例のため、それを待っているところなのです。

 今回のゴタゴタ劇の原因は第1に東京都の準備不足があります。招致にあたって、赤字になった場合の国による財政保証が必要であることは前からわかっていたはずです。ところが東京都から国会にアプローチがあったのは、期限ギリギリになってから。招致議連は決議へ向けて活動していたものの、「働きかけがないものを勝手に動くのはどうか」との思いが国会内にはありました。

 石原慎太郎都知事の対応も混乱に拍車をかけています。慎重姿勢をみせた民主党に対して、「次の政権を目指す民主党が、オリンピックに反対なのか」と発言。ますます感情的な反発を招いてしまいました。確かに都議会では民主党は野党の立場です。新銀行東京の問題などで激しく知事を追及しています。しかし、招致議連に所属する民主党の国会議員は「それはそれ、これはこれ」と柔軟に対応する構えをみせていました。先日の会合で、石原知事は「不手際があった」と陳謝していましたが、ねじれてしまった糸を元に戻すのは容易ではありません。

 都議会では五輪の計画に対して突っ込んだ議論も行われています。ただ、都側の答弁は「招致が決定してから詳細を詰めます」。これでは都民、国民の理解は得られないでしょう。東京都は五輪招致を支持する声は全体の約7割にのぼっているとアピールしていますが、その実感はあまりありません。東京都で五輪をやることにどんな意義があるのか、どんなメリット、デメリットがあるのか、まずは説明責任を果たすことが、招致への第一歩です。

 国会では2009年の予算案が衆議院を通過しました。これから参議院での審議がスタートします。メディアで自民党の「麻生降ろし」や中川昭一前財務・金融担当大臣の「もうろう会見」ばかりがクローズアップされている影響か、「もっと国民のためになる議論をしろ!」と感じている方も多いことでしょう。

 実際、メディアで取り上げないところで、国会は重要な問題について話をしています。たとえば、雇用保険の失業手当が支給されない人に対するセーフティネット。現在、各自治体では生活保護の申請が増えています。不況で職を失った人たちが失業保険に未加入だったり、失業手当の受給期間が終了しても仕事を見つけられない状態が続いているからです。

 この現状を踏まえて政府は、雇用保険の受給資格がない年収200万円以下の非正社員を対象に、生活費を貸与する制度を設けました。対する民主党は失業手当の受給期間が終わっても再就職できない失業者に生活費を給付する対案を出そうとしています。これまで日本の社会制度は非正規社員が全雇用者の3分の1を超える現状に追いついていませんでした。遅ればせながら、国会がシステム設計に乗り出したことは一歩前進です。

 こういった重要案件に加えて、専門のスポーツ政策についても政府に質したいことはたくさんあります。ところが僕が所属する参議院の文教科学委員会は、現在、ほとんど審議が行われていません。そのため、今は視察や勉強会が活動の中心になっています。正直、国会の舞台で議論ができないのはもどかしい思いです。

 そこには一般からみると非効率とも思える国会の運営方法が影響しています。国会議員を始めて約1年半、「なんでだろう?」と最も疑問に思っている点です。これは、また別の機会で詳しくお伝えしたいと考えています。


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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