参入1年目は38勝97敗1分と散々だった楽天が、4年目の今季は17勝14敗(2008年4月30日現在)と大健闘している。とりわけ本拠地のKスタ宮城では13勝1敗と圧倒的な強さを誇っている。地元の熱い声援が生み出したひとつの現象とみていいだろう。
 プロ野球の人気低迷が叫ばれて久しいが、これは正しくない。巨人戦の視聴率が低下しただけだ。それにより、これまでセ・リーグの収益構造の大きな柱だった放送権収入が激減したのだ。だが、仙台における楽天をはじめとする地域密着型の球団は観客動員も堅調で、親会社の広告塔的な存在から脱しつつある。
 それにしても楽天球団の前年度の黒字には驚かされた。放送権収入の少ないパ・リーグにあって黒字化は不可能だとみられていたからだ。
 楽天が新規参入するまで、プロ野球ビジネスが旧態依然とした色に染められていたのは、いくら赤字計上しても親会社の広告宣伝費として処理されていたからである。これでは緊張感のある経営は望むべくもない。
 球団の健全経営を目指すことを至上命題にした若いスタッフたちは何をしたのか。丹念な取材が光る好著。「楽天が巨人に勝つ日」 (田崎 健太 著・学研新書・740円)

 2冊目は「近代スピリチュアルリズムの歴史」(三浦 清宏 著・講談社・1900円)。 霊なんてあるわけがないという人もいれば、その存在を信じている人もいる。いわば人類永遠のテーマに、人々はどう取り組んできたか。心霊研究の歴史をまとめた労作。

 3冊目は「レッドソックス・ネーションへようこそ」(李 啓充 著・ぴあ・1600円)。 現在、大リーグでプレーする日本人選手は15名。注目度を増す大リーグの世界をボストン在住の著者が分析する。元医学部助教授だけに薬物汚染に関する記述は読み応えあり。

<この原稿は2008年5月7日付『日本経済新聞』夕刊に掲載されたものです>
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