この1週間、リーグは大きく揺れました。各球団への分配金の未払い、そして運営会社の撤退……。果たして野球を続けられるのか、たとえ続けられたとしても給料はちゃんと支払われるのか。チーム全体が不安な気持ちに包まれていました。
 しかし、僕は今回の一件でリーグはいい方向へ向かう気がしています。それを実感したのが、先週末のオープン戦。騒動が勃発して初の実戦を神戸とやることができました。この試合、僕は全員を試合に出そうと決めていました。石毛博史コーチにもマウンドに上がってもらいましたし、僕も代打で打席に立ちました。

 野球って楽しいな。グラウンドにいるすべての人間が同じことを思っていたはずです。実際に体を動かすと、モヤモヤした気持ちが吹っ切れたのでしょう。試合後、選手の目はいきいきしてきました。リーグは新しく運営会社をつくり、再出発します。フロントの方にはリーグの存続と選手の給料の現状維持を約束していただいきました。あとは僕たちがグラウンドでプレーするだけです。選手たちも改めて野球ができることに感謝の思いを強くしたことでしょう。土曜日(30日)からの試合では、ひとりひとりのプレーがより真剣味を増してくるのでは、と期待しています。

 僕たちは“スピード”が持ち味のチームです。打撃は練習すれば上達しますが、足は鍛えてもそう速くなるものではありません。トライアウトの際にも守備走塁は最も重視して選手を選考しました。

 ランナーにはチャンスがあれば、1球目からどんどん盗塁をしかけるように指示しています。思い切ったプレーでの失敗は一向に構いません。それを次に生かしてくれればいいのです。「失敗したらオレの責任だ。下を向くな。グラウンドでは胸を張れ」。常日頃から選手にはこう伝えています。

 もちろん思い切ったプレーをするためには、しっかりとした“準備”が必要です。準備と一言で言うのは簡単ですが、その中身には重いものがあります。チーム結成当初、選手たちの準備には認識の甘さが感じられました。準備には試合に向けた体づくり、コンディショニングのみならず、ゲーム中でも1球1球、次のプレーに対する備えが求められます。練習、実戦を重ねるにつれ、その点も徐々に意識が高まり、プロらしくなってきました。

 個々人が準備をしっかりした上で、型にはめず長所を伸ばす。これは僕が現役時代に近鉄の仰木彬監督(故人)をはじめ、多くの指導者から吸収した選手育成のモットーです。僕たちは大阪で生まれた球団。個人的には近鉄のいてまえ魂を継承するような破天荒な
チームを目指したいと思っています。近鉄と違って、まだまだ打撃には物足りなさがありますが、明るく雰囲気の良いところは似てきました。

 再スタートを切るリーグにはみなさんの応援が何よりも力になります。ぜひ一度、僕たちの野球を観に来てください。


村上隆行(むらかみ・たかゆき)プロフィール>:大阪ゴールドビリケーンズ監督
1965年8月26日、福岡県出身。大牟田高を経て、84年ドラフト3位で近鉄に入団。2年目でショートのレギュラーをつかみ、打率.274、16本塁打の成績を残す。翌年には22本塁打をマーク。長打力を生かすため外野に転向し、猛牛打線の一翼を担った。01年、西武へ移籍して代打の切り札的存在に。同年限りで引退。解説者生活を経て、今季より大阪の監督に就任。現役時代の通算成績は1380試合、916安打、打率.258、147本塁打、464打点。





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 今回は村上監督のコラムです。「クローザー遠上は力んで投げろ!」。ぜひ携帯サイトもあわせてお楽しみください。
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