26日、世界ボクシング評議会(WBC)フライ級王者・内藤大助(宮田ジム)が同級10位の熊朝忠(中国)を3−0の判定で下し、5度目の防衛に成功した。これで内藤は自ら持つ最年長防衛記録を34歳8カ月に更新。戦績は40戦35勝(22KO)2敗3分けとなった。
 中国・上海で行なわれるはずだったこの一戦は、試合3日前になって会場の使用許可が下りていなかったことが判明。急遽国をまたいでの会場変更という前代未聞の事態に見舞われた。しかし、試合はそんなアクシデントをものともしない、まさに手に汗握る激戦が繰り広げられた。中国人ボクサーとして初の世界戦に臨んだ熊は、身長150.5センチと小柄で、内藤よりも12.5センチ低い。さらにリーチの差は14.5センチだ。しかし、鍛え抜かれた体から繰り出されるパワーは本物だった。

 2Rまで内藤ペースで進んでいたが、3Rに入ると、熊の威力あるパンチがチャンピオンに襲いかかった。内藤の変則的なスタイルも気にする素振りも見せず、果敢に懐に飛び込み、フックを浴びせかける熊。4R終了間際には内藤の左まぶたから血が流れた。偶然のバッティングによるものと判定されるが、熊のパンチ力を感じさせるには十分だった。

 それでも4R終了後に発表されたジャッジは3ポイントで内藤がリードというものだった。だが、前に出る姿勢を崩さない挑戦者に対し、後退する動きが目立つようになるチャンピオン。左に続いて右まぶたも切った内藤に対し、熊の顔はほとんど無傷だった。そして6R、熊の体ごと預けるようにして思いっきり振り上げた右フックを内藤が食らい、ダウンを奪われた。その後、内藤はほとんど自らパンチを繰り出すことなく、逃げることで精一杯。それでもなんとか持ちこたえた。

 7R、内藤はなんとか状況を打開しようと果敢に攻めた。すると、終了間際にはこの試合一番といってもいい右フックが熊の顔にきれいに入った。だが、再び熊の右フックを受けた内藤はまたも劣勢になり、ダウン寸前まで追い込まれるも、会場に鳴り響くゴングに助けられた。その後は互いにほぼ五分五分の戦いが続く。結局、勝負は判定へともつれこみ、3人のジャッジともに内藤がポイントを上回り、辛くも5度目の防衛に成功した。

 試合後、内藤は次のようにコメントした。
「せっかくこんなに来てくれたのに、しょっぱい試合してすみませんでした。これが僕の実力でまだまだと自分自身、わかりました。まず今日1試合だけのために来てくれたお客さんに感謝したい。心の底からお礼を言いたい。次、試合がある時は期待に応えられる試合をしたいと思う」