衆院選の投票日まで、あと4日。多くのメディアが世論調査の結果を踏まえ、民主党の「圧勝」と報じている。郵政選挙の反動などという生易しいものではない。まるでオセロゲームである。そこで今日はスポーツ政策に絞って自民、民主双方のマニフェストを比較、検証してみたい。
 まずは自民党。<「スポーツ基本法案」を制定し、スポーツ庁を創設。トップレベルのアスリート育成や地域スポーツを振興します。子供に夢を与える2016年東京オリンピック・パラリンピックの招致なども進めていきます>。「スポーツ基本法」の制定やスポーツ庁の創設をきちんとうたっている点は評価できる。ちなみに基本法は自民・公明両党の議員立法として7月14日に衆院に提出されたが、1週間後の解散で廃案となった。

 日の目を見なかったスポーツ基本法案を読んでいて感じたのは競技力向上を国家戦略として位置付けようとの強い意志だ。それ自体は悪くない。しかし国威発揚の色が濃すぎると、仮にスポーツ庁が創設された場合、中国の「国家体育総局」のような中央集権的な組織になってしまうのではないかとの危惧が残る。

 先の北京五輪で最多の51個の金メダルを獲得した中国は確かに金メダル大国にはなった。だが金メダル大国とスポーツ大国は似て非なるものだというのが、かねての私の持論だ。五輪を国威発揚の場に利用した中国は、果たして世界から尊敬を得られたであろうか。文化的で成熟した社会を実現するためにも、日本は強化よりも育成と普及、中央集権よりも地方分権に重きを置くべきだと考える。

 さて一方の民主党は……。マニフェストを隅から隅まで読んだが、スポーツのスの字も出てこなかった。国民生活にスポーツは必要ないのか。嘆いてみても仕方がない。そこでHPの〈民主党政策INDEX2009〉をのぞいてみた。こちらは地域密着型のクラブづくりや公共施設の芝生化に力点を置いている。西欧型のスポーツクラブをモデルにしていることがうかがえる。自民党がプルトップ型なら、民主党はボトムアップ型と言うこともできる。

 スポーツ環境の整備などは子育て支援ともリンクしており、私の考え方に近い。しかしマニフェストに盛り込まなかったのは大きな失点だ。執行部はあまりスポーツに興味がないということなのか。きわめて残念だ。

<この原稿は09年8月26日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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