7月にスタートした後期も折り返し地点を過ぎ、いよいよこれからどのチームも優勝に向けての正念場を迎えます。福井ミラクルエレファンツは25日現在、7勝11敗1分で、首位・石川ミリオンスターズとの差は5.5ゲーム差です。しかし、昨日の新潟アルビレックスBC戦に勝ち、引き分けをはさんで現在3連勝中と勢いに乗りつつあります。優勝の可能性も十分にありますので、残り17試合、チーム一丸となって戦っていきたいと思っています。
 前期はリーグ記録の13連敗を含め、10勝23敗3分、首位・石川に10.5ゲーム差をつけられて最下位に終わりました。福井はリーグ一若いチームです。それだけに勢いに乗れば、怖い存在になるのではないかと密かに期待をしていたのですが、前期は若さが逆にマイナスに働いたかたちになってしまいました。

 そこで、後期は戦力補強をし、チームの活性化を図りました。まず後期スタート前に石川から内野手の内田享良(山梨学院大付高−専修大−IMGアカデミーズ−ケベックキャピタルズ)をトレードで獲得しました。内田は守備に関しては何も言うことはありません。期待通りの守備力を発揮して内野の要となってくれています。しかし、バッティングはなかなか波に乗れず、苦しんでいます。それもあって、後期のスタートは黒星先行となってしまいました。

 しかし、8月に入るとチーム状態がグッと上がってきました。13、14日には前期には0勝4敗と一度も勝つことができなかった群馬ダイヤモンドペガサスに2連勝。さらに20日の石川戦にエース藤井宏海(福井工大福井高−千葉ロッテ−三菱自動車岡崎)が3安打完封勝ち。2日後の富山サンダーバーズ戦は両チームあわせて27安打の乱打戦を制し、翌日の石川戦は新人の加藤朋人(大野高−大阪体育大−福井MD)の好投で0−0の引き分けにもちこみました。敵地での首位・石川戦ということを考えれば、この引き分けは福井にとっては勝ちに等しいものでした。

 こうしたいい流れの呼び水となったのが、一つは天候でした。福井は8月に入っていきなり3試合連続で雨天中止を余儀なくされました。しかし、私は波に乗り切れないムードを断ち切るには、返っていいのではないかと考えていました。選手たちにも「きっと、この中止がチームの追い風になってくれるから」と言い続けました。案の定、福井にとってはムードをかえるいいきっかけになったと思います。

 また、地元出身者の織田一生(福井高−東北福祉大−TDK千曲川−TDK)の加入も大きいですね。織田は投手以外はどこでも守れるユーティリティ・プレーヤー。バッティングも思い切りがよく、ようやく待ち望んでいた不動の4番となってくれることでしょう。早速、試合でも打線の柱として活躍してくれています。社会人の経験もありますから、キャプテンの慶家誠太朗(鯖江高−三重中京大−福井MD)とともに、チームのまとめ役としても期待しています。

 一方、投手陣は藤井に加えて前田祐二(富田林高−龍谷大)、加藤も調子が上がっており、ようやく先発3本柱が確立されつつあります。特に加藤はもともとおとなしい性格で、それがピッチングにも表れていました。しかし、ここ最近は気持ちを前面に出し、ピンチを迎えても最少失点で抑えられるようになってきました。まだ1勝しかできていませんが、今後が楽しみな投手の一人です。

 残るは17試合。これからは投手も野手もフル回転し、全勝するつもりで戦っていきます。若さあふれるプレーで、巻き返しを図っていきたいと思っていますので、応援よろしくお願いします!


天野浩一(あまの・こういち)プロフィール>:福井ミラクルエレファンツ新監督
1979年4月12日、香川県出身。高松東高、四国学院大を経て2002年、ドラフト10巡目で広島に入団。2年目には貴重な中継ぎとして49試合に登板した。06年オフに自由契約となり、翌年に四国アイランドリーグの香川オリーブガイナーズに入団。前期は先発、後期はリリーバーとして41試合に登板し、7勝6敗13セーブの好成績で最多セーブを獲得。リーグ優勝および石川とのチャンピオンシップでの優勝に大きく貢献した。08年はプレーイングコーチとして福井に入団。23試合に登板し、0勝2敗8セーブと主に抑えとして活躍した。昨年10月に藤田平前監督の後任として新監督に就任し、リーグ一の若き指揮官として采配をふるう。

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