まだ10年も先と考えるべきか、それとも、もう10年しかないと考えるべきか……。
 2019年、ラグビーW杯が日本にやってくる。
 ご同慶の至りと言いたいところだが、W杯開催までに日本がやらなければならない問題が山積している。
 これまで日本は第1回大会からすべてのW杯に出場しているものの、戦績は1勝1分け18敗と全く振るわない。
 ちなみに過去6大会でホスト国・地域は最低でもベスト8以上に進出している。
 忘れられないのが第3回大会(1995年)でのニュージーランド戦だ。17対145という記録的大敗を喫し、これがラグビー離れに拍車を掛けたといわれる。

 それに少子化が追い打ちをかける。底辺の縮小を示す記事を2つ紹介しよう。
<国内の競技人口は92年度の15万3506人をピークに、06年度は12万5004人まで減少した。特に高校は5万4868人から3万3287人に激減>(毎日新聞07年12月22日付)
<全国高等学校体育連盟の登録人数は、91年度の5万7826人がピーク。ところが08年度は半数以下の2万7340人にまで落ち込んだ。都道府県別に見ると、08年度の加盟校数が最小なのは、福井県と島根県の3校。人数では鳥取県の89人(5校)だった。07年度の全国大会島根県予選では、15人の部員を確保できたのが江の川高(現石見智翠館高)1校だけ。結局、出雲高と松江高専の合同チームと壮行試合を行った>(読売新聞09年7月15日付)

 底辺が縮小してしまっては強化どころではない。ピラミッドの構造と一緒で、頂点を高くしようと思えば、底辺を拡大しなければならない。
 つまり今、ラグビー界がやらなければならないのは普及だ。その次が育成で最後が強化と考えるべきだろう。
 そのためには「学校」と「企業」を中心にした運営から脱却する必要がある。

 地域密着の理念を掲げるサッカーのJリーグとは異なり、ラグビーの社会人チームは親会社にオンブにダッコの状態だ。
 周知のように企業スポーツは不況に弱い。この1年だけでワールド、日本IBM、セコムと3つのトップリーグ経験チームが休部や大幅な縮小に追い込まれた。
 いくら若手を育てても、その受け皿がなければ強化策は絵に描いたモチに終わってしまう。

(後編につづく)

<この原稿は「経済界」2009年9月8日号に掲載されました>
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