翻って地域密着を旗印にするJリーグは「100年に一度の不況」に際しても、ひとつもクラブが消滅するということはなかった。現在J1、J2ともに18クラブで構成されており、さらに拡大する方針。
「昔はサッカーよりもラグビーのほうが人気があったのに……」
 そう嘆くラグビーファンをたくさん知っているが、構造自体を変えない限り、残念ながら“過去の栄光”は取り戻さないだろう。

 もちろん、ラグビー界にもそうした現状に危機感を覚える者がいる。現神戸製鋼GM兼総監督の平尾誠二氏はそのひとりだ。
――本来、スポーツの主役は「地域」と「住民」でなければならないのに、この国は「学校」と「企業」です。ここを改革しない限り、この国のスポーツの後進性は何も改善されないのでは?

 かつて私の質問にこう答えた。
「取りあえず、スポーツを教育の現場からどう切り離していくか、がテーマになるでしょうね。例えば神戸市なら、神戸というスポーツクラブの中に、野球もサッカーもラグビーも入っていく。
 これは文化の創造ですよ。しかも、採算の取れるマーケットが既にある。神戸市民は夏に野球、春と秋にサッカー、冬にラグビーを見る。それはほかのスポーツであってもいいんです。ところが、今の日本は選手からして冬の寒い日でも野球をやっているし、夏の暑い日でもラグビーをやっている。これでは心身共にバランスの悪い人間になってしまいますよ。
 いろいろなスポーツをやることで、自分の好きなもの、合ったものを探すこともできる。子供の頃から、ずっとそのスポーツだけというのは、決して好ましい傾向とは思えませんね」

 サッカーがプロ化するに当たり、「Jリーグ百年構想」という理念を掲げ、グランドデザインを描いたように、ラグビーも2019年のもっと先を見通した未来図を提示すべきである。

 10年なんて、あっという間である。

(おわり)

<この原稿は「経済界」2009年9月8日号に掲載されました>
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