「政権交代」。この4文字がついに現実のものとなりました。先日の首相指名選挙、「鳩山由紀夫」と書いて投票した瞬間、「本当に日本の政治が変わるんだな」という改めて実感が沸いてきました。これまでにない高揚感と緊張感を味わう日々です。
 総選挙後の国会の雰囲気は、それまでとは大きく違っています。衆議院では308議席を獲得した民主党が議場の大部分を占め、控室も2階部分のすべてを使用することになりました。参議院では議場の席や控室はそのままですが、委員会での席順は全く反対になっています。今までは自民党、公明党が陣取っていた場所に僕たちが座り、逆に自民党、公明党の委員のみなさんが僕たちが座っていた場所に席替えとなりました。

 新人議員が多く当選したため、まだ国会内では迷子状態になっている方も多く見受けられます。2年前、初当選した僕がそうだったように、当選後の1カ月はあいさつ廻りや引っ越し、秘書選びなどであっという間に過ぎていきます。今回の特別国会は4日間で終了しましたが、おそらく臨時国会が始まる10月末頃まで、新人の方は慌ただしい毎日になることでしょう。

 与党会派の議員となったこともあり、事務所を訪れる方にも変化があります。来年度予算の陳情について、県から問い合わせがあったり、文部科学省からはスポーツ局長があいさつに訪れたり、他の部署からも事務次官クラスがやってきたり……。今まではよくても課長止まりだったのが、まさに手のひらを返したような対応です。

 年金問題などに代表されるように、野党側がいくら追及しても、官僚は必要な資料をなかなか出してきません。「資料は自民党にだって全部出していない。民主党にはもっと出していない」。ある官僚の方からは、こんな話を聞いたこともあります。今までがいかに官僚支配の政治だったかを示す一言でしょう。良いことも悪いこともすべて情報を明らかにし、政策を立案することが新政権の大事な仕事になります。

 僕の専門であるスポーツ政策でも、いよいよ温めていた構想を実行に移す時が来ました。スポーツに熱心な鈴木寛さんが文部科学副大臣に就任されたこともあり、早速、今後の方針について相談する機会をいただきました。まず、当面の課題はスポーツ基本法の成立です。解散前、自民、公明両党はスポーツ基本法案を駆け込みで提出しました。しかし、その内容は各スポーツ団体の要望が色濃く反映され、トップ選手の強化に重点を置いたものでした。

 新政権が提出するスポーツ基本法は、各競技のトップクラスばかりに目を向けるのではなく、そのすそ野を広げるべくボトムアップ型の内容を目指しています。民主党の政策INDEXにも提示されていた「地域密着型の拠点づくり」「校庭の芝生化」「地域スポーツリーダーの育成」は、その一例です。今年いっぱいをかけて法案をよりブラッシュアップさせ、来年中の成立を目標に活動したいと思っています。

 新しい基本法の軸になるのは、以前もご紹介した「スポーツ権」の確立です。すべての人にスポーツをする権利、楽しむ権利がある――。この考え方を基本にすべてのスポーツ政策が行われることを目指しています。そのためには「スポーツは誰のためにあるのか」との問いを避けて通ることはできません。残念ながら日本のスポーツ界には、まだまだ各団体をはじめとする組織優先の体質が残っています。「たかが選手が!」。選手会の訴えに対して、球界のあるボスから、そういった発言が飛び出したことは記憶に新しいでしょう。“上意下達”“問答無用”という封建的な風潮が、スポーツの幅広い発展を妨げるひとつの要因となっています。

 当たり前のことながら、スポーツにおいては、する人、楽しむ人の権利が何よりも尊重されなくてはなりません。各団体はそれを最大限サポートするために存在します。単なる天下り先や、私腹を肥やす場所ではありません。各スポーツ施設も、そこで活動する人たちの利便性を最大限踏まえたものである必要があります。無用なハコモノであってはいけません。

 10月2日、2016年のオリンピック・パラリンピックの開催地が決定します。昨年の北京五輪では28競技、302種目が実施されたように、ここまで多くのスポーツを間近で見られる機会は滅多にありません。日本のみなさんがスポーツにより親しめるきっかけとなるよう、僕は東京での開催を応援しています。

 しかし、たとえ五輪招致に成功し、大会が開催できたとしても、日常のスポーツ環境が充実していなければ、その熱は一過性のもので終わってしまうでしょう。現在、東京は世論の支持率が低いことがネックだと言われています。これは日本において、スポーツが人々にとって身近な存在ではないことを意味しているとも捉えることもできます。それだけ過去の政策が人々とスポーツを結び付けられなかったのだと言えるでしょう。

 たとえば国会の近くでは、皇居の周辺を走っている市民ランナーの方を多く見かけます。ところが、シャワーで汗を流したり、着替えをする公共の施設は存在しません。最近は民間のランニングスポットがあちこちにできていますが、少し前までは銭湯がその役割を果たしていました。皇居周辺に限らず、安全にランニングできる道路や周辺環境が整っている場所は全国的にみてもほぼ皆無です。ランニングひとつとってもわかるように、スポーツを楽しめる日常を日本の行政は提供できていませんでした。「スポーツ=体育、苦しいもの、やらされるもの」。そんなイメージがまだまだ強いのも仕方がないことでしょう。

 招致の結果がどうであれ、スポーツは人々が生活する上で欠かすことのできないものです。ところが国会内でスポーツ政策の重要性を本当に理解している議員は決して多くありません。みなさんの一票によって、今回、政策を実行に移せる役割を与えていただくことができました。与野党問わず、ひとりでも多くの仲間とスクラムを組み、よりよい政策づくりに励んでいきたいと思っています。スポーツでもっと幸せな国、幸せなふるさとを――。いよいよ、大きな夢へのキックオフです。


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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