「前回のトリノ五輪(7位)では各メディアにチーム青森が大きく取り上げられましたが、バンクーバーではさらに高い位置を狙えると思います」
 そう答えてくれたのは、日本カーリング協会浦川事務局長だ。
 トリノ五輪で“カー娘”として、一躍時の人となった『チーム青森』。2006年のチームから目黒萌絵(みちのく銀行)、本橋麻里(NTTラーニングシステムズ)がバンクーバーを目指し、山浦麻葉(東奥日報社)、石崎琴美(木浪学園)、近江谷杏菜(青森市役所)といった選手が加わった。チームの核となるスキップの目黒とサードの本橋は大舞台での経験にプラスし、技術面でも大きく進化している。海外のカーリング選手は30代、40代の選手も活躍しているが、平均年齢の若いチーム青森も、世界と互角に渡り合う実力を持っている。

 オリンピックの出場権を持っているのは、日本チームでは女子チームのみだ。カーリングのオリンピック出場権は、07・08・09年の世界選手権の成績をポイント化し、上位10カ国に出場権が与えられる。男子は09年大会出場のみにとどまり、切符を手にすることはできなかった。

 日本のライバルも来年2月の本番に向け照準をあわせている。特に手ごわいのはカナダだ。「本場・スコットランドからの移民も多く、施設面が充実しています。老若男女がプレーしており、選手層も厚い。世界屈指の強豪といえます」と浦川事務局長が語る。多くの海外チームがカナダ国内で強化合宿をするほどのカーリングの本場。日本はトリノ五輪でそのカナダを破るという快挙を成し遂げたが、来年のバンクーバーオリンピックはカナダにとってホームゲームとなる大会。前回大会で負けていることも、日本をマークする十分な理由となるだろう。だが、日本が地元のカナダを破るようなことがあれば、それはメダル獲得に通じる。是非、本番では大国をもう一度、驚かせたい。

 アジアでも、強力なライバルが力をつけている。それは中国だ。これまでカーリングでは後進国だったが、徐々に力をつけてきた。浦川事務局長によると「国を挙げてのバックアップ体制が確立しており、フィジカルの強い選手をカーリング強化にあて一気に力を伸ばしている」とのこと。代表メンバーは1年のうち8カ月以上カナダに滞在し、その腕を磨いている。09年世界選手権を制し、一躍世界のトップに躍り出ただけに、本番でもメダル候補といえる。

「中国、日本というアジアの国が力をつけてきたことで、もともと力を持っている欧米勢は警戒しています。マークも厳しくなりますが、それ以上の力を出してくれると信じています。チーム青森は8月からカナダ遠征を行いチーム強化をしていますが、仕上がりは上々と聞いています。国際競技会でも優勝を収め、順調な調整をこなしています」と浦河事務局長。トリノで列島中に広がったカーリング熱が、4年後のバンクーバーでも再燃ことは必至だ。

 日本のカーリング代表が決定するのは、11月5日から8日にかけて行なわれる代表決定戦で代表チームが決まる。チーム長野と常呂高校(北海道)の勝者が、チーム青森と代表の座をかけて戦う。「五輪に出ることが目標ではなく、トライアルは最低限通過しなければならない」と口にしたのはチーム青森の本橋。バンクーバーでのメダル獲得に向け、代表決定戦では負けられない。

(写真提供:Team AOMORI)
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