カーリングを観戦していると、日本代表という文字よりも先に“チーム青森”や“チーム長野”といった名称が先に飛び込んでくる。これはカーリングの国内普及における特徴を示している。
 各チームを構成しているメンバーは県協会所属の選手たちだ。青森や長野といった県単位で競技力強化に取り組んでいるのだ。それぞれでカーリングスクールなどを行い、競技力の底上げを図っている。

 日本国内で最初にカーリング普及に力を注いできたのは、北海道常呂町(現北見市)だ。国内初の屋内カーリング専用場である常呂カーリングホールはカーリングの一大拠点となっている。特に若年層に対し熱心な普及を行い、過去の五輪に出場した小野寺歩、林弓枝といった選手は常呂町出身であり、現在チーム青森の中心を担う本橋麻里もこのリンクから育っていった。

「各県で若年層への普及は力を入れてきています。これからの課題といえるのは、それぞれの地域で成人選手の社会人としての受け皿を作ること。競技する選手の環境を整備しなければいけません。これは県協会を超えて考えなければいけないことです」と日本カーリング協会浦川事務局長は話す。

 アマチュアスポーツにおいて、どの種目でも直面するのが競技環境の問題だ。企業がバックアップする形で発展してきた日本のアマチュアスポーツは、景気や企業業績でスポーツ全体に影響を及ぼす。カーリングが国内で本当の意味で定着するには、この問題を乗り越えなければならない。

「カーリングは比較的競技寿命が長い競技です。欧米の強豪国には、司令塔となるスキップで30代、40代の選手が数多くいます。そういった選手が競技を続けられるのは、家族をはじめとした周りのバックアップがあってこそ。中には妊娠して大きいお腹で氷の上に立っている選手もいます。日本だったらまず止められますよね。そこまで競技が生活に浸透しているんです」と話してくれたのは、チーム青森の本橋選手だ。

 メンタル面も大きく左右されるカーリングでは、数多くの経験を積んだベテラン選手の熟練の技が土壇場でものをいう。競技のレベルアップを図るためにも、競技の普及や強化、そして環境整備といった課題を少しずつ乗り越えていかなければいけない。

 そのためにもバンクーバーで日の丸をつけて戦うチームには、上位進出を果たしてもらいたい。日本代表チームが決定するのは11月7日、8日に行われる青森で行なわれる代表決定戦だ。バンクーバーへの切符をかけた氷上の熱い戦いに全国から注目が集まる。

(写真提供:Team AOMORI)
◎バックナンバーはこちらから