「意義とレベルの高さでは、ヒョードル×ノゲイラ戦(2004年)でしょう」
「緊迫感では、吉田×小川戦(2005年)だと思いますね」
「お茶の間に強いインパクトを残したのは、やっぱりサップ×曙戦(2003年)じゃないですか?」
「安田がバンナを破った試合(2001年)も良かったし、魔裟斗×KID(山本徳郁)戦(2004年)もドキドキしましたね」
 さまざまな意見が出た。先日、ある雑誌の企画で『大晦日、格闘技名勝負20』の選考に加わった時のことである。
(写真:吉田×小川、柔道メダリスト同士の因縁の対決は吉田(上)が腕ひしぎ逆十字固めで勝利した)
 大晦日の格闘技イベントがスタートしたのは2001年。『INOKI BOM-BA-YE 2001猪木軍 VS K-1最強軍』のタイトルの下、さいたまスーパーアリーナで開かれた。その前年(2000年)に、大阪ドームでも『INOKI BOM-BA-YE』は行なわれており、総合格闘家が多く出場しているが、試合はすべてプロレスであったのだから、実質的な大晦日・格闘技イベントのスタートは2001年からになる。

『INOKI BOM-BA-YE 2001』(さいたまスーパーアリーナ)/TBS
『INOKI BOM-BA-YE 2002』(さいたまスーパーアリーナ)/TBS
『PRIDE SPECIAL 男祭り 2003』(さいたまスーパーアリーナ)/フジテレビ
『K-1 PREMIUM 2003 Dynamite!!』(ナゴヤドーム)/TBS
『INOKI BOM-BA-YE 2003』(神戸ウイングスタジアム)/日本テレビ
『PRIDE男祭り 2004 〜SADAME〜』(さいたまスーパーアリーナ)/フジテレビ
『K-1 PREMIUM 2004 Dynamite!!』(大阪ドーム)/TBS
『PRIDE男祭り 2005 頂〜ITADAKI〜』(さいたまスーパーアリーナ)/フジテレビ
『K-1 PREMIUM 2005 Dynamite!!』(大阪ドーム)/TBS
『PRIDE男祭り 2006 〜FUMETSU〜』(さいたまスーパーアリーナ)/フジテレビ
『K-1 PREMIUM 2006 Dynamite!!』(京セラドーム大阪)/TBS
『やれんのか! 大晦日! 2007』(さいたまスーパーアリーナ)/TBS(一部)
『K-1 PREMIUM 2007 Dynamite!!』(京セラドーム大阪)/TBS
『Dynamite!! 〜勇気のチカラ2008〜』(さいたまスーパーアリーナ)/TBS

 少し長くなったが、過去8年の間に地上波テレビで放映された『大晦日・格闘技イベント』の数は実に14。2003年には、3局で大晦日のゴールデンタイムに格闘技が中継されていた。総試合数は、オープニングファイトを含めて155。これらの試合を全部、見直した。3日もかかったが結構、楽しい時間だった。

 時間を置いて改めて見るとよく解るのは、その時点で状態がピークにある者同士の闘いは、やはり見応えがある、ということ。加えて緊張感のある試合は、何度観ても良い。前者の代表格が、エメリーヤエンコ・ヒョードル×アントニオ・ホドリコ・ノゲイラ戦であり、後者のそれは、吉田秀彦×小川直也戦だろう。対して視聴率目的で投入された芸能人が絡んだ試合からは、格闘技の良さを見出すことができない。私は話題性よりも、試合内容と闘う両者が醸した緊迫感に重点を置いて名勝負を選んでみた。

 私が選ぶ大晦日ベスト3は次の通り。
1位 エメリーヤエンコ・ヒョードル×アントニオ・ホドリコ・ノゲイラ(PRIDE男祭り 2004)
2位 吉田秀彦×小川直也(PRIDE男祭り 2005)
3位 三崎和雄×秋山成勲(やれんのか! 大晦日! 2007)

 さて選考委員皆で選んだ『大晦日、名勝負20』は、12月下旬に発売される『最強の格闘技』(竹書房)の中に掲載される。是非、今年の大晦日の格闘技を、より楽しむために復習がてら読んでいただきたい。

 今年の大晦日は、2年ぶりにイベントW開催だ。魔裟斗のラストファイトが行なわれる『Dynamite!! 〜勇気のチカラ2009〜』(さいたまスーパーアリーナ)と吉田秀彦×石井慧戦がメインの『SRC(戦極ライデン・チャンピオンシップ)12』(有明コロシアム)。ともに名勝負の予感あり……いずれの会場に行くべきか迷っている。

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近藤隆夫(こんどう・たかお)
1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実〜すべては敬愛するエリオのために〜(文春文庫PLUS)』ほか。
連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)
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