来年度予算の概算要求のムダを洗い出す「事業仕分け」が27日まで計9日間、実施されました。対象となった447事業のうち、約7400億円が削減可能と判定されたことに加え、公益法人や独立行政法人の基金から約8400億円を国庫に返納することが求められ、あわせて約1兆6000億円の財源を捻出することができました。
 今回の事業仕分けはまさに政権交代を象徴する出来事だったと言えるでしょう。これまで誰がどこでどうやって予算を決めていたのか分からなかったものが、オープンな場で一般の方に見える形になって、その過程を知っていただくことができました。何より意義があったのは、連日、事業仕分けの内容が大きく報道され、みなさんの職場や家庭、居酒屋の中で予算のことが話題として出てきたことだと思っています。以前、カズ(三浦知良)さんが「食卓でスポーツの話題が出ることは、それが文化として根付いている証拠」だといった趣旨の発言をしていましたが、まさに政治が日常の身近なものになりつつあるのではないでしょうか。

 事業仕分けの対象になったのは、スポーツも例外ではありません。総合型地域スポーツクラブへの助成金はtotoの事業と重複している点を指摘され、大幅な削減が必要とされました。またJOC(日本オリンピック委員会)などへの補助金32億9200万円も縮減との判定が出されました。僕はこの仕分けに関しては正直、ビックリした部分があります。というのも国の地域スポーツクラブ推進事業とtotoの事業が重なっていることを知っている人間が政治家の中にはそういないからです。国のスポーツ支援とtotoとのすみわけについては以前、国会でも質問し、このコラムでも取り上げさせていただきました(>>第18回 学校を総合型スポーツクラブの拠点に!)。残念ながら国会議員の中で地域スポーツクラブの必要性や意義を完全に理解している方は多くありません。国会内で僕がその理念をお話させていただくと「そうだったのか」という反応が返ってきます。

 では、この重複を知っていたのは誰なのか。今回の事業仕分けは“財務省主導”との指摘もあるように、財務省の作成した評価シートをベースに議論が行われた面は否めません。地域スポーツクラブの助成に関しては、以前、自民党のムダ撲滅プロジェクトチームより、「不要」との結論が出されたことがありました。こちらも財務省のデータを元にした指摘だったことを踏まえると、おそらく財務省が長年カットしたかった項目だったのでしょう。短い仕分け時間の中で、事業内容が重複していると指摘されれば、「カット」との結果になるのは致し方のないことです。

「スポーツくじ事業などとの役割分担の見直しを行い、スポーツ予算の一本化をすべき」。仕分け人の意見はその通りです。これまでの繰り返しになりますが、国のスポーツ政策は各省庁でバラバラに割り振られ、さらにtotoや民間の事業との役割分担も不明瞭でした。ただでさえ多くないスポーツ予算を効率よく使えていなかったのが実情です。スポーツの底辺を支える地域スポーツクラブが予算削減の標的となったことは残念ですが、長年の問題が今回の仕分けでハッキリした点は良かったと感じています。

 今回の事業仕分けでスーパーコンピューター開発事業の大幅削減に科学技術の分野から一斉に反発が出たように、専門家からは必要と言われているものが切られたケースはいくつもあります。政権交代から時間がなかったこともあり、今回は政治や専門家サイドで取り上げるべき項目の検討が充分にできませんでした。財務省官僚の意向に沿って作業が進んでしまった側面があるのは事実でしょう。“事業仕分けの事業仕分け”を誰がどう行うのか。この点は今後の課題です。

 また真の政治主導を目指すのであれば、こういった作業は国会内で議員を中心として行うべきとの意見もあります。確かに今回は政治家の数が少なく、一部の仕分け人がスポットライトを浴びるとともに、批判の矢面に立ってしまいました。先の総選挙で民主党が圧勝したことで、国会には衆参合わせて430人以上の与党議員がいます。その人材をいかに活用するかも考えなくてはなりません。

 そして、何より事業仕分けに求められるのは、国としての明確なビジョンです。今回の仕分けでは、熱意の有無やプレゼンテーションの上手下手が結果に影響を及ぼし、官僚の説明能力が問題とされました。もちろん事業を実施するにあたって、熱意や説得力が不可欠であることは言うまでもありません。ただし、それが大きなウエイトを占めてしまっては、本当に必要なものとそうでないものの基準があいまいになってしまいます。

 今年の概算要求は民主党のマニフェスト部分を追加した以外は、基本的に従来の予算枠組みを元につくられています。結果、要求額は過去最大の約95兆円と額が多くなってしまいました。自民党がつくった枠の中に、なんとか民主党のパズルを入れ込もうとしたために、ピースがあふれてしまったような感じです。その中で不要なピースを探し出す最大限の努力がこの事業仕分けでした。

 仙谷由人行政刷新担当大臣は2012年度予算の事業仕分けについて、来年のゴールデンウィーク前後からスタートする意向を示しています。1つ1つのピースを精査するには、そのくらいの時間と人手を確保しないと難しいでしょう。そして、その時までに仕分けのよりどころとなる政権としてのグランドデザイン、国家プランをはっきりと描くことが大切です。政権交代から約2カ月半、改めてこの政権が何を重視し、それぞれの政策をどのように位置づけるのか。新しいパズルの枠組みを早く作り上げることが求められます。事業仕分けをさらに発展させ、国民のみなさんにとって、より身近な政治にすること。それが僕たち与党議員の責任だと考えています。


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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