当HP編集長の二宮清純がインタビュアーを務めるBS朝日の番組「勝負の瞬間(とき)」では、今年4月から毎月1回ペースでさまざまなスポーツからゲストをお招きしてきました。今回、BS朝日の開局記念特番として過去の放送分より反響が大きかったものを一挙再放送。11月30日(月)より12月3日(木)まで連日22時より、ご覧いただけます。この番組では二宮清純が各スポーツの一流たちにインタビューをする中で、その思考メカニズムをさまざまな角度から解明。彼らにとっての“勝負の瞬間”を探っていきます。今までのスポーツ番組とは一味違ったインタビュードキュメントです。
(写真:今季もリーグ打率2位と好成績を残した内川聖一編からスタート)
〇11月30日(月)22時〜 内川聖一編(2009年4月放送)

 メジャーリーグ移籍も視野に

二宮: 昨年、大ブレークをして、今年のWBCも優勝に貢献すると、また次の高い目標が見えてきたのではないでしょうか?
内川: 見えてきましたね。現時点で自分がどうなるかは何とも言えないですけど、海を渡ってアメリカで勝負したいと考える人の気持ちが少し分かってきました。やはり今回のWBCでアメリカに渡ってメジャーリーグのチームと練習試合をしたり、ペトコ・パークやドジャー・スタジアムでもゲームをすると、この舞台でやりたいなという思いは出てきますよ。

二宮: メジャーリーグ移籍も視野に入ってきたと?
内川: やっぱり、そこを目標にやらないといけないですよね。まだ、どうなるかはわかりませんが、どうせ野球をするならメジャーリーグでプレーすることを考えながらやりたいと思っています。

二宮: 私は今の内川さんの技術があれば、間違いなくメジャーリーグでも通用するとみています。でも、せっかくならイチローみたいに日本の右打者として初めてメジャーで首位打者を獲ってほしい。そういう大きな目標を掲げてほしいなと感じています。
内川: そうですね。現段階でもそうですが、僕にとっての究極の目標は「10割打つこと」。長いシーズンの中では、点差が開いたりして絶対に何打席か気持ちが抜けてしまう時がある。でも、10割打つとなると、そういう打席はあってはいけない。

二宮: 理想は分かりますが、長いシーズンで精神的にも肉体的にも全部ピークを保つのは難しいでしょうね。
内川: 難しいですね。でも、それを目指さないと自分が変われないっていう恐怖感があるんですよ。少しでも気を抜いてしまうと、また元のオレに戻っちゃうんじゃないかと……。
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〇12月1日(火)22時〜 白鵬編(2009年9月放送)

 なぜ日本人力士は勝てないのか

二宮: 横綱や朝青龍関のようにモンゴル人力士が活躍している一方で、日本人力士がなかなか出てこない。多くの相撲ファンは日本人力士の台頭も望んでいるのですが、横綱からみて彼らに足りないものは何でしょう?
白鵬: なんでしょうね。みんな一生懸命やっていると思いますよ。ただ、モンゴル人力士のほうが相撲を誰よりも愛しているからかもしれません。今、モンゴル出身の幕内力士の半数はおやじさんがモンゴル相撲をやっている。そのDNAもあるでしょうし、小さい頃から相撲に親しんできましたからね。相撲が大好きなんですよ、たぶん。

二宮: 確かにそうかもしれません。僕らが子供の頃は、よく相撲をとったものです。学校や神社の境内には土俵があって、いつでも相撲ができた。ところが最近は土俵も相撲をとっている子供もほとんど見かけなくなりました。
白鵬: 見ないですね。でも、モンゴルのほうも最近はだんだん相撲をとっている子供たちが少なくなってきていますよ。僕たちが子供のころは草原に行くのが唯一の楽しみでしたが、今は草原に行きたがらない。家の中でゲームをしている子が増えてきましたよ。時代なんですかね。

二宮: つまり、モンゴルの子供たちも弱くなっていると?
白鵬: これから横綱、大関になるようなモンゴル人力士が出てくるかどうかは、ちょっと分からないですね。モンゴル人が強い時代が続くとは限らないと思っています。
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〇12月2日(水)22時〜 長谷川穂積編(2009年11月放送)

 次の防衛戦は2階級制覇へのステップ

二宮: 長谷川選手は今、9連続防衛中。とにかく長谷川さんの試合は劇画を見ているように、あっという間に終わってしまう。日本のあらゆるスポーツシーンの中でも、イチローのヒットを見る喜びと長谷川さんのフィニッシュを見る喜びとは双璧の位置にきていると思うんです。長谷川さん自身にとって、今後極めていきたい点とはどこでしょう?
長谷川: 僕はボクシングが大好きなんで、まずは長く続けたい。長く続けるには、勝ち続けないといけないし、まだまだ自分を伸ばさないといけないと思っています。その結果として3階級制覇ができたら、一番最高ですね。

二宮: 3階級制覇に挑戦するとなると、そろそろ次の階級への転向を考えなくてはいけないですよね。
長谷川: 次が10回目の防衛戦で、いい区切りになるので、10回防衛した後で上のクラスのチャンピオンに挑戦したいと思っています。
 実は最初に世界チャンピオンになったときに、もうボクシングをやめたいと思ったんですよ。目標を達成できたので、もうあと何もしたくないと。ところが、(ベルトを奪った)ウィラポンがタイトルマッチの時には調子が悪かったと言われた。そこで、もう一回ウィラポンに勝ってボクシングをやめようと思ったんです。
 2度目の防衛戦でウィラポンに勝った時には、今度こそ“もうボクシングはいいや”と思いかけたのですが、ふと“目標がなくなったら、目標をつくったらいいんちゃうか”という気持ちが出てきた。そこで3回目の防衛戦あたりからは「海外で試合をしたい」という新しい目標を立てました。今すぐは無理ても、勝ち続ければ海外で試合ができるんじゃないと。その後の防衛戦は1戦1戦、海外で試合をするために頑張っています。そのうちに2階級制覇や統一戦という目標も出てきたので、今度の試合も防衛のためではなく、2階級制覇やこの先のためにやっているという感覚です。

二宮: 新たなステージに立つために試合をしていると?
長谷川: これで負けたら、自分も本望だなと思う試合をしてみたいんです。減量もしんどくて、練習もしたけど、気分的に乗らなくて負けたっていう試合は絶対にしたくない。すごく強い相手に挑戦して負けたら本望。そういう相手を探しています。

二宮: 長谷川さんは9回もタイトルを防衛して、日本のファンは別格だとみています。でも、本当は「あの長谷川でも危ないぞ」と言われる試合をしたいと?
長谷川: そういう試合をしたいですね。「もう勝たれへんやろ」って言われたい。最初にウィラポンに挑戦したときみたいに、接戦にもちこんだだけでも褒めてもらえるような相手とやりたいんですよ。たとえば(WBA世界フェザー級王座を12回防衛している)クリス・ジョンなんて「長谷川が9回防衛したって通用せんやろ」と言われると思う。そこを見返してやりたい自分がいます。
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〇12月3日(木)22時〜 中澤佑二編(2009年7月放送)

 岡田監督との信頼関係

二宮: 日本代表の岡田武史監督と中澤さんはマリノス時代から一緒にやってきた関係です。岡田監督が代表の中で一番信頼しているのは中澤さんだと思いますよ。
中澤: どうですかね。僕にすごく厳しいですけど……。いつも会うたびに「あっ、お前いたの」とか、「今、マリノス何位だろう。代表に来てる場合じゃないだろう」とかきついことを言われるんですよね。

二宮: 岡田監督は野村克也監督に似ているところがあります。野村さんがボヤくのもその選手に期待をかけているから。厳しい言葉も、愛情表現の裏返しなのでは?
中澤: って思いたいんですけど、監督の目を見ると結構マジなんですよ(苦笑)。

二宮: 岡田監督は選手たちにコンセプトをはっきり示してプレーさせるタイプの指揮官ですね。この点は選手としてやりやすいでしょう。
中澤: 岡田さんはミーティングのたびに前に張り紙を出して、日本のチームコンセプトを説明したり、「自分で考えて、チームのためにプレーしろ」といった心構えを繰り返し言っています。だから、みんな頭に残っている言葉が多いと思うんです。

二宮: 監督は中澤さんに直接「世界を驚かせたい」と言ったそうですね。
中澤: そうですね。いつだったか、いきなり監督の部屋に呼ばれたので、「俺、なんか説教でもされるのかな」と思っていたんですよ。部屋に入ると「ちょっと座れよ」って言われて、「俺は世界でベスト4に入るって本気で思ってんだけど、お前はどう思う? 行けないと思うか」と切り出されました。僕が「いや、世界のベスト4という目標を目指す覚悟はできてます」と答えると、「じゃ、たぶん今いる代表選手の中で不可能だと思っている奴もたくさんいるだろうから、お前は“ベスト4に入るんだ”という強い気持ちを姿勢で見せろ。プレーで見せろ」と。「そういう空気を出していけば、みんなに伝わるから」と言われました。

二宮: やはり、そこまで監督が腹を割って話すところが中澤さんへの信頼の証ですよ。
中澤: マリノスの時はそこまで個人的に話をされたことはなかったですからね。ベスト4に入りたいという監督の思いは充分伝わりました。僕も監督がそう言ってる限り、決して不可能ではないと信じています。
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 番組は今後も月1回ペースで放送し、2010年3月まで全12回のシリーズでお送りする予定です。次回12月放送分では日本テニス界の元第一人者が登場。世界と戦うためのテクニックや思考法について迫っていきます。どうぞお楽しみに!

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