2人のボクサーの、ここ3試合の世界戦のテレビ視聴率(関東地区)を比較してみよう。
 まずはWBC世界フライ級王者・亀田興毅。
 対ファン・ランダエタ 42.4%(判定勝ち、WBAライトフライ級王座獲得、06年8月2日)
 対ファン・ランダエタ 30.1%(判定勝ち、同王座防衛、06年12月20日)
 対内藤大助 43.1%(判定勝ち、WBCフライ級王座獲得、09年11月29日)

 続いてWBC世界バンタム級王者・長谷川穂積。
 対ブシ・マリンガ 12.2%(初回TKO勝ち、同王座8度目防衛、09年3月12日)
 対ネストール・ロチャ 10.4%(初回TKO勝ち、同王座9度目防衛、09年7月14日)
 対アルバロ・ペレス 14.4%(4回TKO勝ち、同王座10度目防衛、09年12月18日)

 言うまでもなく長谷川は日本が世界に誇るチャンピオンである。日本のジム所属選手の連続防衛記録では元WBA世界ライトフライ級王者・具志堅用高の13回に次ぎ、歴代2位。
 しかも倒し方がすごい。現在5試合連続KO中(2回、2回、初回、初回、4回)。「早く倒してしまってスイマセン」とファンに謝るのは彼くらいのものだ。
 先のペレス戦では試合後、「これまでは早いラウンドで倒してクレームが多かった。今日は4ラウンドまでいったから、いつもよりクレームは少ないと思います」と発言して会場から笑いを誘った。

 長谷川のボクシングは芸術的ですらある。ペレス戦では4回、まずワンツーの左を軽く相手の顔面にヒットさせ、射程を確認。浅い当たりだったため、ダメージの少ない相手チャレンジャーは反撃しようと前へ出たが、それは長谷川の仕掛けた罠だった。
 ミクロのタイミングをチャンピオンは見逃さず、絵に描いたようなカウンターの左ショートストレート。前のめりに崩れ落ちたチャレンジャーはピクリとも動かなかった。

<この原稿は「フィナンシャルジャパン」2010年3月号に掲載されました>
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