先日、参議院予算委員会で質問の機会をいただきました。当日は民主党に割り振られた時間の中で2番手の質問者として登場し、約45分に渡って議論を繰り広げることができました。
 参議院の予算委員会では質問時間に関して、他とは違った珍しいシステムがあります。通常、各質問者の時間は、閣僚や政務官の答弁も含めて30分や1時間と区切られるのが一般的です。これを僕たち議員は“往復1時間”“往復30分”といった形で表現しています。では、参議院の予算委員会はどうなっているのか。ここでは答弁時間はカウントせず、純粋な質問時間だけが決められています。これを僕たちは“片道”と呼んでいます。つまり、“片道30分”であれば、質問する時間がまるまる30分間与えられるというわけです。いくら長々と答弁されても、質問はトータルで30分できるわけですから、訊ねる側としては準備していた質問が時間の関係で“お蔵入り”になる心配が少なくなります。この方式は質問の機会をより多く保障するための、ひとつのアイデアと言えるでしょう。

 特に少数政党の質問者の場合、“片道”方式はメリットがあります。質問時間は議席配分によって決められるため、数が少ない政党は割り当てが多くないからです。たとえば5分や10分といった時間で、答弁まで含んでしまえば、質問数は限られてしまいます。しかし、片道5分であれば、質問方法を工夫すれば、そこそこの内容を訊ねることが可能です。社民党の福島瑞穂さん(現消費者行政担当大臣)は野党時代、5分間でテンポよく何10個も質問をしていました。国会の質問はどちらかといえば冗長的で、質問なのか演説なのか分からないような節がありますから、この手法は非常に新鮮なものがありました。

 とはいえ、あまりにも一問一答形式の質問を繰り返していると、答弁も簡潔になりすぎ、突っ込んだ話を聞けなくなるデメリットも存在します。簡潔に質問しつつ、ある程度はデータや事実関係を抑えながら、鋭く切り込んでいく。何度か質問の機会をいただく中で、このバランス感覚が必要なのだと感じています。

 今回の質問では、パラリンピック選手のナショナルトレーニングセンター使用やメダリストの報奨金、平成22年度のスポーツ予算やスポーツ立国戦略、2018/22年のサッカーW杯招致などスポーツに関する内容を文部科学大臣を中心に伺いました。また前原誠司国土交通大臣にはフェリー航路の維持や、山鳥坂ダムの住民に対する生活支援など、地元・愛媛の懸案事項も質問しました。

「ナショナルトレーニングセンター(NTC)で練習をしたくてもできない」
 議員になって以降、ハンディキャップを持つアスリートの方からそんな声を多く聞きました。NTCを運営する財団法人日本スポーツ振興センターを管轄する文部科学省では「可能な限り門戸を広げている」との見解ですが、なかなか利用機会は増えていないのが実情です。この原因のひとつとして障がい者のスポーツ競技団体が人手も少なく、組織化されていない点も影響しています。つまり利用希望をリサーチしようにも、各アスリートから意見を集約すること自体が大変なのです。そもそも厚生労働省の障がい者スポーツの担当者が限られており、国主導でヒアリングする体制をつくるのも難しい状況と言えるでしょう。今回の答弁では「NTCでは宿泊施設の増設を計画しており、そこはバリアフリーの設計になる」との内容もありました。ハンディキャップの有無に関わらず、NTCがトップアスリートのトレーニング施設として有効に活用されるよう、今後もチェックをしていきたいと考えています。

 平成22年度の予算案では文部科学省のスポーツ関連予算は過去最高の227億円になりました。中でもトップレベルの選手を日々のとレーニングはもちろん、スポーツ医学や栄養学の面でも支えるチーム「ニッポン」マルチ・サポート事業には前年度の6倍となる19億円弱の予算がつきました。厳しい財政状況の中、スポーツ予算の拡充は喜ばしいことです。

 とはいえ、事業仕分けでスポーツ予算の削減が議論される中、あれもこれも額を増やすことは困難でしょう。個人的にはスポーツの普及に欠かせない環境整備には国が責任を持ち、その活用は民間に任せるべきだと感じています。つまりハードは国がつくり、ソフトでは民の力を借りるスタイルです。そのためには、校庭の芝生化事業を進める文部科学省、都市公園やスタジアム整備に携わる国土交通省がハードづくりで連携する必要が出てくるはず。これがスポーツ庁創設への一里塚にならないか。そんなことを考えています。

 また質問では地元で長年の課題になっている山鳥坂ダムについても取り上げました。政権交代に伴い、現在、本体着工していないダム事業は凍結されており、大洲市の山鳥坂ダムもそのひとつです。建設の可否については、今年の夏までに新たな国の治水基準に基づき、決定見こみになっています。ただし、これまで建設計画ができてから10年以上、水没予定地のインフラ整備は放ったらかしにされてきました。いずれにしても現地で実際に生活している方への支援は必要不可欠です。

 工事は止まっても生活は止められない。これは全国的に公共事業の見直しを進める民主党政権にとって避けられない問題です。ムダな公共事業をストップさせることは当然として、それを前提に生活していた地域住民の暮らしをいかに保障すべきか。このバランス、さじ加減が新しい政治には求められていると感じる今日この頃です。


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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