日本代表チームを作るにあたり、招集しやすい「国内組」をベースにするか、能力が高く経験豊富な「海外組」を軸にすべきか。ここ10年に渡ってそんな議論が交わされてきた。岡田ジャパンでは、新たに「復帰組」が加わる。

 既にJリーグでは小笠原満男(鹿島)、中田浩二(同)など欧州帰りの選手が活躍しているが、今季からは中村俊輔(横浜FM)、稲本潤一(川崎F)、小野伸二(清水)ら大物が国内でプレーする。

 中でも、日本代表の司令塔・中村の復帰は、日本人スター不在と言われて久しいJリーグにとっても朗報だ。
 川崎Fに移籍した稲本は01年、イングランドの名門・アーセナルにレンタル移籍したのを皮切りに5カ国7クラブを渡り歩いてきた。大舞台での勝負強さは折り紙付きだ。
 過去、W杯3大会に出場している小野。W杯イヤーの日本復帰はこれが2度目だ。日本最初のスポーツライターと私が勝手に呼ぶ正岡子規は、ボールゲームを「球技」ではなく「球戯」と訳した。小野こそはボールと戯れる喜びを表現できる数少ないプレーヤー。少年に夢を与えてほしい。
 ちなみにドイツW杯に臨んだジーコジャパンは、「国内組」16名、「海外組」6名、「復帰組」1名で構成された。現在の日本は復帰組が増え、彼らの活躍の度合いが代表の浮沈のカギを握る。

 近年はJリーグの試合を、日本代表に選出されるためのオーディションのようにとらえている向きもあるが、それは筋違いである。本拠地を「ホームタウン」と呼ぶJリーグは、文字どおりスポーツ文化活動を通じて、地域の発展に貢献する存在である。Jリーガーはその担い手のひとりであるという自覚を持たなければならない。

 そこで、今季のJリーグを展望してみよう。鹿島3連覇の陰の立役者というべき本山雅志が2月椎間板ヘルニアの手術を受けた。大きな痛手だが、それを乗り越えての4連覇達成の可能性は50%とみる。指揮官オズワルド・オリベイラの手腕は既に実証済みであり、主力の負傷や移籍による“品薄感”は4連覇を妨げる決定的な材料にはなるまい。

 鹿島を追う一番手は、まだ一度もリーグ戦を制していない名古屋か。田中マルクス闘莉王、ダニルソン、そして金崎夢生と攻守にバランスのいい補強をした。
 浦和も侮れない。スピラノビッチが闘莉王の穴を埋め、サヌが左サイドを固めればフィンケ監督の理想のサッカーに近づく。展開力のある柏木陽介の加入も大きい。

 JリーグはW杯を挟んで2カ月間の休みに入る。指揮官の調整の巧拙もチームコンディションに反映される。代表選手は「ホーム」にどんな「南ア土産」を持ち帰るか。7月17日に再開される13節以降の戦いからも目が離せない。

<この原稿は2010年4月11日号『サンデー毎日』に掲載されたものです>

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