サッカーW杯開幕まで、あと2週間。日本の初戦の相手はカメルーン(6月14日)です。実は先日、僕は一足先に日本代表のユニホームを身にまとい、カメルーンの選手とサッカーで対戦してきました。この21日に南アフリカW杯開催を記念して、日本の国会議員チームとアフリカ大陸21カ国の駐日大使館のメンバーによるチャリティマッチに参加したからです。
 場所は東京・国立競技場。日本の国会議員チームは約30名。この日ばかりは与野党の垣根を越え、同じジャパンブルーのユニホームを着て試合に臨みました。僕自身、国立のピッチで試合をするのは早大時代以来のこと。練習をしていなかったので正直、不安な面もありましたが、ボールに触ると昔の感覚が甦ったのか、4ゴールも決めることができました。相手が一般人とはいえ、サッカーの聖地で4点なんて、なかなか取れるものではありません。

 ただ、肝心の試合は僕以外の議員の方が決定力不足(?)に泣き、4−7。カメルーンの大使館職員にもゴールを奪われ、“前哨戦”に敗れてしまいました。当日は29度と夏のような暑さで、試合時間を30分ハーフに短縮したにもかかわらず、後半はすっかりバテてしまいましたね。やはりアフリカのみなさんは小さい頃からサッカーに親しんできたのか、ボールの扱いがうまかったです。日本のスポーツ文化との差を感じた1日でもありました。

 国会の“ピッチ”では普天間問題ばかりやっているような印象をもたれているかもしれませんが、その他の分野でもしっかり“ボール”は動いています。20日は民主党のスポーツ議員連盟が立ち上がり、川端達夫文部科学大臣、鈴木寛文部科学副大臣と今後のスポーツ政策の方向性についてミーティングをさせていただきました。現在、文科省では「スポーツ立国戦略」をまとめており、来年の通常国会で「スポーツ基本法」の成立を目指しています。

 立国戦略には、「スポーツ庁の設置」「スポーツ団体への寄付に対する税の優遇」「アスリートのセカンドキャリア支援」「総合型地域スポーツクラブの充実」「スポーツ医科学、栄養学、トレーニング学などへのサポートの充実」といった施策が盛り込まれる予定です。文科省の資料にも「スポーツによる人づくりと国民幸福度の向上」という文言が入るようになり、その位置づけは単なる“教育の一環”から変化しつつあります。いわゆる「スポーツを楽しむことが国民の幸せにつながる」との思想が浸透してきたのです。

 厳しい財政状況の中、スポーツ予算はなぜ必要なのか。この問いの回答が「幸福度のアップ」だと僕は考えています。「幸福」は数値化できない抽象的な概念とはいえ、誰もが追い求めているもの。スポーツは心身の健康にも、経済の活性化にも、地域コミュニティづくりにも寄与し、最終的には人を幸せにする。着実に国のスポーツに対する認識は変わりつつあります。

 さて、4年に1度のW杯が終わる7月には3年に1度の参議院選挙がやってきます。改選を迎える議員は地元と東京を頻繁に往復し、国会内は慌ただしい雰囲気になってきました。今回の選挙では与野党ともにスポーツ界からの立候補が話題になっています。民主党からは柔道五輪連覇の谷亮子さん、競輪銀メダリストの長塚智広さん、体操の池谷幸雄さんが出馬を決めました。国民新党では元阪神の江本孟紀さんが立候補。野党からも堀内恒夫さん、石井浩郎さん(ともに自民党)、中畑清さん(たちあがれ日本)と巨人OBが続々と名乗りをあげました。

 どの方も公約として「スポーツ振興」を掲げている点は、「スポーツで幸せな国づくり」を目指す僕にとって非常に心強く感じます。実績のある人ばかりですから、当選すれば、スポーツ政策の「顔」にもなっていただけることでしょう。しかし、トップアスリートとして活躍されただけに心配な点もゼロとは言えません。一流選手の強化のみならず、スポーツ振興に不可欠な底辺拡大や環境整備について、どこまで理解し、目を向けていただけるのか。当選された暁には、僕もじっくり意見交換ができればと思っています。

「スポーツ選手や有名人で票を集めるのは良くない」
 立候補には、そんな批判があることも事実です。3年前、僕が選挙に出た時も同様の意見がありました。確かに政治家としての適性以前に、アスリートの持つ「さわやかさ」「ひたむきさ」というイメージが票集めに利用されている面はあるのかもしれません。ただし、過去にいわゆる“タレント議員”と呼ばれた方々の中にも、当選してから着実に実績を残した人は少なからず存在します。海外を例にとってもペレがブラジルのスポーツ大臣を務めたように、元選手が政治の舞台で仕事をしているケースは珍しくありません。

 ここには「政治は誰が行うものなのか」という根本的な問いが含まれています。単に政治を勉強した人や、親から地盤、看板、カバンを受け継いだ人のみに議員の資格があるのでしょうか。政治は国民のためにあると考えれば、スポーツ選手であれ、芸能人であれ、多様な経験を積んだ方が国会に集まるほうが健全とも言えます。そういえば僕が当選後、初めて文教科学委員会で質問に立った時には、当時の渡海紀三朗文部科学大臣からこんな言葉をかけていただきました。「いろいろな分野の方が議員となって、さまざまな意見を出したほうが、よりよい政治ができる」。僕もまさしく同じ思いです。

 もちろん、それでも「何も政策を知らないで議員になっても、国民の役には立たない」という声はあるでしょう。これは自戒の念も込めて、真摯に受け止めなくてはなりません。僕も3年間、少しずつですが、国のために何をすべきか、何ができるかを発見し、その実現に努力してきたつもりです。まだまだ至らぬ部分は、残りの3年で芽が出、花が咲くように一生懸命、頑張ります。

 議員に立候補する権利は誰もが平等です。本来はもっと気軽に、あらゆる職業の方が出馬してよいはずでしょう。裏を返せば、そうなっていないのが日本の現状です。政治をもっと身近に、もっと親しみやすく――。それが今、議員バッジをつけている者としての責任でもあると考えています。


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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