民主党の代表選挙は、ご存知のように菅直人首相が小沢一郎元幹事長を破り、再選されました。今回の選挙、僕は敗れた小沢さんを支持し、一票を投じました。最終決断をしたのは投票の数日前。10日に実施された公開討論会の内容を比較し、その時にとったメモを読み直して、小沢さんを応援することを決めました。
 決め手となった最大の理由は政策です。僕は地方選出議員のひとりとして、地方分権は不可欠だと考えています。民主党は政権交代の時にお約束したマニフェストで、「地域主権」を確立し、その第一歩として地方の自主財源を大幅に増やすことを謳いました。もちろん同じ党ですから、菅首相も目指している方向性は変わりません。ただ、その力点の置き方は小沢さんのほうが重視していると感じました。

 たとえば国から地方への補助金を一括交付金に改める政策は、小沢さんが主張していた大きな柱です。現在、国から地方自治体に渡されるのは各省庁が使い道を定めた「ひも付き補助金」。これでは、各自治体のニーズに応じた政策がなかなか実行に移せません。「一括交付金にしてもらえれば、もっと行政がしやすくなる。実現してほしい」。僕もそんな声を地元でも各首長からいただいていました。小沢さんが主張していた一括交付金化による総額の削減が、国の財源確保につながるかどうかは別として、権限を地方に移譲することは地域主権の第一歩。地域の元気が日本の元気につながるとの発想は民主党が絶対にブレてはいけないポイントです。

 政権交代の大きな意義は、ここまで長い自民党政権下でゆがんでいた国のシステムを見直し、変えていくことにあったと考えています。その道のりは決して平坦なものではありません。1年、2年で大幅に変更できないのはやむを得ないでしょう。ところが、菅内閣の政治手法にはその努力を断念し、今までのやり方にひきずられていると思わせるものがいくつも出てきました。国家戦略室の局への移行を躊躇したり、予算の一律10%削減を表明したのは、その一例です。これでは、何のための政権交代だったのか分かりません。まだ2カ月の政権運営とはいえ、もう一度、出発点に戻って政治を進める必要性を考えると、菅首相を積極的に支持することはできませんでした。

 小沢さんに対しては、政治とカネの問題で世論の厳しい声があったことは充分、認識していました。しかし代表となり、首相に選出された場合、メディアや国会で追及を受けるのは、他でもない小沢さんです。そのリスクを背負ってでも出馬表明したのですから、説明できるだけの覚悟と材料は持ち合わせていると僕は判断しました。現に小沢さんは、政治資金の問題で起訴されているわけではありません。「推定無罪」の原則を考えれば、明確な証拠もなくイメージだけで決めつけるのはフェアではないでしょう。

 選挙期間中、菅首相からは3度ほど「サッカーW杯招致も目前に控えているので、力を貸してほしい」と電話をいただきました。また態度を明らかにするまでは、さまざまな形で両陣営の関係者から投票のお誘いがありました。加えて、国民のみなさんから事務所宛にいただいた電話、メールもいつになく多かったです。代表選の実施により、改めてみなさんのご意見を目にし、耳にする機会ができたことは非常に良かったと思います。今後の活動に、その声をどんどん生かしていきたいです。

 代表選そのもののあり方も政権党として見直さなくてはならないでしょう。衆議院の任期が4年であるのに対して、代表の任期は2年。これでは地に足をつけて政策を推進することは難しくなります。衆議院の解散や参議院選挙もあるため、国政選挙のスケジュールと完全にリンクさせることはできないでしょうが、与党にふさわしい方法を模索することが求められています。

 また投票のシステムも改善の余地があると感じました。党員・サポーター票で決まる300ポイントは衆議院の300小選挙区にそれぞれ1ポイントずつが割り振られ、1票でも多いほうがポイントをとる総取り方式。対して地方議員票で決まる100ポイントは、各候補が獲得した割合によって決まるドント方式でした。そのため地方議員票同様、党員・サポーター票の約4割は小沢さんの得票だったにもかかわらず、ポイントに換算するとわずかに51で大差(菅首相は249)がつきました。また僕たち参議院議員にとっては、自分の選挙区が衆議院の各小選挙区をまたがる形となり、投票を呼びかけるのに苦労しました。円高で経済状況が厳しい中、14日間も貴重な時間を選挙に費やした今回の教訓を次回に生かすことが大切です。

 代表選が終了し、民主党、内閣ともに新体制で再スタートを切りました。世間的には脱小沢の人事かどうかばかり取りざたされていますが、各大臣や副大臣、政務官の中には、その分野で活動をされてきたプロフェッショナルが多く含まれています。その点では適材適所のラインアップと言えるのではないでしょうか。スポーツ政策においても、熱心な鈴木寛文部科学副大臣が留任し、スポーツ基本法の制定に向けて引き続き前進していくはずです。

 首相は代表選の期間中から重要課題に取り組む特命チームをいくつも設け、全員参加の“412人内閣”をつくると宣言していました。ただ、いくら民主党が一致団結したところで参議院で与党が少ない“ねじれ現象”は解消されません。いかに国会での議論を通じ、野党と政策の一致点を見出すか。そして、どうすれば、“国民の生活が第一”の政治になるのか。もう党内の内向きの話ではなく、ここに力を入れるべきでしょう。

 10月1日からは臨時国会がスタートします。数の論理だけでは法案はひとつも通りません。与野党関係なく、意見を出し合い、良案を見出すこと。当然のこととはいえ、あらためて原点に立ち返り、一議員として責任を果たしていきたいと考えています。


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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