シアトル・マリナーズのイチローが24日、敵地でのトロント・ブルージェイズ戦でメジャーリーグ移籍以来10年連続となるシーズン200安打を達成した。記録まであと2本で迎えたこの日、3回の第2打席でレフトへの2塁打を放って王手をかけると、続く5回の第3打席で初球をセンター前にはじき返した。10年連続の200安打は史上初で昨年打ち立てた自らのメジャー記録を更新した。通算の達成回数でもピート・ローズの10度に並び、歴代1位タイとなった。
 ストレートに反応した打球がセンター前に抜けると、スタンドからは大きな拍手が沸き起こった。だが、当の本人は一塁に到達しても表情を崩さない。ヘルメットをとって声援には応えたものの、いつもと変わらなかった。

 その変わらぬルーティンが10年もの間、安打を量産し続ける最大の理由だ。朝食のカレーライスに始まり、球場入り、ウォーミングアップの時間まで、チームメイトから「彼を見ていれば、時間がわかる」と言われるほど一緒だ。入念な準備が全米を移動し、162試合を戦う長いシーズンの中で、調子を落とさない要因になっている。

 今季は得意の夏場にヒットを量産できず、7月の成績は119打数29安打、打率.244。しかし、その他の月はすべて打率3割以上をマーク。ラストスパートの9月に入ると、この日も含め21試合で12度のマルチ安打を放ち、22日のブルージェイズ戦では今季初の4安打で一気に大台へのカウントダウンを進めた。

 昨季は春先に胃潰瘍を患い、8月には左ふくらはぎを痛め、計16試合を欠場。メジャー移籍後、最も少ない146試合の出場にとどまった。さすがのイチローも30代後半を迎え、体に衰えの兆しがみえてきたと指摘する者もいた。ところが今季の欠場はここまでゼロ。盗塁も2年ぶりに40個を超え、下半身の不安を吹き飛ばした。

 ただ、安打製造機がいくらフル回転しても、チームは依然、低空飛行だ。今季も58勝93敗と大きく負け越し、地区最下位に沈む。シーズン中には成績不振を理由にドン・ワカマツ監督が解任された。チーム状態が悪くなると、イチローへの風当たりはどうしても厳しくなる。2年前、地区最下位に終わった時には、地元メディアから「自己中心的」との批判を受けた。

 それだけに個人記録ではなく、チームの勝敗が注目が集まる状況をイチローは誰よりも望んでいるはずだ。19日に日米通算3500安打を記録した際には、電光掲示板での演出を辞退したのは、そのひとつの表れと言える。負けが込んでも気持ちを切らさず、淡々とヒットを積み重ねる姿は、それはそれで素晴らしい。だが、昨年のWBCでの優勝を決めた一打のように、しびれる場面での乾坤一擲の1本も見てみたい。それがすべてのファン、いやイチロー自身の本音だろう。