「健康寿命」なる専門用語を初めて知った。世界保健機関(WHO)によれば平均寿命から介護が必要になってしまった期間を差し引いたものだという。
 仮に80歳まで生きたとしても70歳で要介護になれば、「健康寿命」は70歳になる。人生を快適なものにするためには、病気の早期発見と早期治療が大前提である。
人間の体は、ある日突然、悪くなるものではない。自覚症状があるにもかかわらず、「この程度なら」と信号を無視する。あるいは「そのうち治るさ」と根拠もなく自らに言い聞かせる。これが大変危険であることは本書を読めば恐ろしいほど理解できる。
 たとえば「肩こり」。単なる筋肉疲労であれば神経質になる必要はないが、著者は長期間続くようなら変形性頚椎症や眼精疲労、肩関節周囲炎に加え、肺がん、高血圧、狭心症、胆石、肝炎、腎臓病なども疑ってみるべきだと説く。「肩こりの場所が移動する」場合は、転移性のがんの可能性もあるとか。
 本書では代表的な45の自覚症状を取り上げ、可能性のある病気を紹介している。自己防衛のためにも読んでおきたい。 
「読む人間ドック」 ( 中原英臣著・新潮新書・680円)

 2冊目は「心の野球」( 桑田真澄著・幻冬舎・1500円)。 努力に対する解釈、試練への対処法、指導者論…巨人のエースだった著者が半生を振り返り、その野球観を語る。球界のみならず、一般社会においても参考になる点が多い。

 3冊目は「総理官邸の真実」( 伊藤達也著・PHP研究所・1500円。 「小泉構造改革」と聞いただけで嫌悪感を示す者がいるが、その内実について、どれだけ冷静な議論が行われたのか。改革の中枢にいた政治家の奮闘の記録と未来への提言。

<上記3冊は2010年7月28日付『日本経済新聞』夕刊に掲載されたものです>
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