今年も新たな1年が始まりました。2011年の年明けは議員宿舎でのひとりの年越し。前日の大晦日までは、地元でお世話になったみなさんへお配りする広報の印刷、封入、発送をスタッフ総出で実施し、何とかギリギリセーフで間に合わせることができました。1枚1枚、プリントアウトして封筒に入れるのは大変な作業ですが、改めて多くの方々に支えられて仕事ができていることを実感させられました。
 みなさんの思いに僕たち国会議員はどこまで応えられているのか。そう問われた時、僕は「はい」とは素直に言えないのが現状です。年明けもさまざまな新年の会合に出席させていただきましたが、菅政権に対して厳しい意見を頂戴しました。「政権交代の時に掲げた理念、理想はどこへ行ってしまったのか」「マニフェストに変更点があるなら説明を尽くしてほしい」……。そのどれもが当然の声だと感じました。

 そして、菅内閣は今回の内閣改造で、与謝野馨氏を経済財政政策担当大臣として入閣させました。与謝野氏といえば、ご存知のようについ先日まで「たちあがれ日本」で共同代表を務めていた人物です。民主党のマニフェストについても、バラマキだと酷評していました。菅直人首相は「考えが一致した」ことを起用の理由にあげていますが、今回の人事は理解に苦しみます。正直、個人的には国民のみなさんにどう説明すればいいのか分かりません。

 与謝野大臣はかねてから財政再建、消費税増税を主張しています。それは民主党の従来の考え方とは一線を画すものです。昨年の参議院選挙のマニフェストをみても「消費税の税率を上げます」との記述はどこにもありません。「消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始します」。これがマニフェストの文言です。しかし、与謝野大臣を政権内に迎え入れたことで、消費税アップは規定路線になろうとしています。

 僕は民主党議員の一員として、いや、民主党議員の一員であるからこそ現時点で消費税を上げることには反対の立場です。なぜなら僕たちは国民のみなさんに「ムダづかいの根絶」「天下りの廃止」で財政を健全化させることをお約束しました。政権交代以降、度重なる事業仕分けでムダを洗い出してはきたものの、まだ道半ばです。かつて菅総理は「鼻血も出ないほど完全にムダをなくしたと言える時」まで消費税のアップはしないと発言していました。その言葉にならえば、まだまだ血の出るところはたくさんあります。少なくとも国民のみなさんに負担を求めるのであれば、「国会議員の経費を2割削減」といったマニフェストの項目は真っ先に実行しなくては納得が得られないでしょう。そして総理も国会で答弁しているように消費税を増税するのであれば、「国民に信を問う」必要があります。

 菅政権誕生以降、消費税の増税、環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(TPP)への交渉参加など、やや唐突に物事が進んでいるものが少なくありません。人事はトップの専権事項とはいえ、今回の与謝野大臣の起用にしても、ひょうたんから駒が出るような話です。世論調査で内閣不支持の理由に「リーダーシップの欠如」が挙がっており、菅総理が政策実現への強い姿勢を見せたいと思う気持ちは分からないでもありません。

 しかし、「リーダーシップ」と「独断専行」は違います。なぜ今、消費税の増税を検討しなくてはならないのか、なぜ今、TPPの交渉参加を急がなくてはならないのか。党内での議論は決して充分とは言えず、一致団結して取り組む体制にはなっていません。菅総理は「熟議の国会」を目指して、野党に政策論議を求めています。その前に民主党自体が「熟議の党」にならなくては、野党との話し合いもできないのではないでしょうか。

 24日から始まった通常国会では、まず来年度の予算案成立が最重要課題になります。一般会計の総額は過去最大の92兆4116億円。指摘されているように、うち国債の発行額は約44兆円で税収(約41兆円)を2年連続で上回るかたちになっています。歳入と歳出のアンバランスは解消しなくてはならない問題とはいえ、今回の予算案には目立たないながらも重要な項目がたくさん含まれています。

 文部科学省のスポーツ関連予算は過去最高の228億円を計上しました。先に述べたように財政状況が苦しい中、1億円とはいえ、予算枠が増えた点は日本のスポーツ界にとっては朗報です。今年は昨夏に発表したスポーツ立国戦略をいよいよ実行に移す1年となります。この通常国会中には、念願だったスポーツ基本法も提出し、成立を目指します。このスポーツ関連予算の中身については、また次回以降、ご紹介したいと考えています。

 現在、カタールで開かれているサッカーのアジアカップでは、日本時間の深夜の試合にもかかわらず、先日の韓国戦では35.1%の高視聴率を記録しました(関東地区)。日本代表はグループリーグのシリア戦、準々決勝のカタール戦と退場者を出し、1人少ない中での戦いを乗り越えて決勝にコマを進めています。参議院は少数与党の国会も、ザックジャパンにあやかって、次々と法案を通していきたいのですが、サッカーのようにはいかないでしょう。お互いに合意点が得られるよう徹底的に議論を深めるしか、ねじれ国会を克服する方法はありません。視聴率30%とはいかないまでも、多くのみなさんが国会論争に興味を持っていただけるよう、質問の機会に向けて準備したいと考えています。

 今年も1年間、政権与党のひとりとして、どんな政策が国会で話し合われ、実行に移されているのか、なかなかメディアでは報道されない部分をこのコーナーを通じて情報発信していくつもりです。2011年を振り返って、ひとりでも多くのみなさんが「いい年だった」と感じていただけるよう、目指すゴールへ少しでもボールを前へ運びたい。それが新年を迎えての偽らざる心境です。
  

友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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