2010年のスポーツを振り返るうえで、忘れてはならないのが女子バレーボールの復活である。秋に行なわれた世界選手権で32年ぶりとなるメダル(銅)を獲得したのだ。
 女子バレーボールは1964年の東京五輪で、球技としては初めて金メダルを獲得した。監督の大松博文率いるチームは「東洋の魔女」の異名をとった。
 76年のモントリオール五輪でも金メダルを獲ったが、これがピークだった。84年のロス五輪での銅メダルを最後に、全日本女子は五輪の表彰台から遠ざかっている。
 それだけに世界選手権での3位はロンドン五輪に向け、弾みがついたのではないか。11月に行なわれるワールドカップで3位以内に入れば五輪の出場権が手に入る。

 チームを変えたのは08年12月に監督に就任した眞鍋政義だ。「IDバレー」を標榜している。
「日本は高さやパワーでは世界の強豪には勝てない。世界と渡り合うにはスピード、緻密さ、そして日本のお家芸といわれるレシーブを磨き上げるしかない」
 このコンセプトの下、あらゆる角度からデータを採取し、それを活用した。

 たとえば「スパイク効果率」。10本のうち5本決まれば「スパイク決定率」は5割となる。しかし残り5本がブロックに掴まってしまってはどうしようもない。
「スパイク効果率」の出番となる。5本が決まっても、5本がブロックに捕まってしまえば、差し引きゼロとなるのだ。

 眞鍋は語る。
「これまでのオリンピックや世界選手権を調べると、日本が負ける試合のほとんどは相手のブロックにやられている。世界の高さにシャットアウトされているんです。そこで選手にはこう言っています。“チームで1セットのうちスパイクミスと被ブロックを4本以内におさめよう。そうすれば次のオリンピックで我々はメダルを獲れる可能性がある”と」

<この原稿は「フィナンシャルジャパン」2011年3月号に掲載されました>
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