1月21〜23日、伊予銀行男子テニス部は日本リーグ・セカンドステージに臨んだ。昨年12月のファーストステージで1勝3敗に終わり、決勝トーナメント進出の可能性が低くなったチームに求められたのは“リーグ残留”だった。しかし、結果は2勝5敗の7位。来シーズンは日本リーグ出場をかけて、10年ぶりに全国実業団対抗テニストーナメント(日本リーグ昇格決定大会)を戦うこととなった。果たして現在のチーム状況は――。そして、今後の展望は――。就任3年目を迎える秀島達哉監督に現状と課題を訊いた。

 4連勝でスタートダッシュに成功した昨季とは打って変わり、1勝3敗に終わった今季の日本リーグ・ファーストステージ。決勝トーナメント進出を目指してきたチームは一転、リーグ残留へと舵を切ることとなった。セカンドステージでの対戦相手はリビック、イカイ、東京電力。秀島監督は当初から「セカンドステージでは最終戦の東京電力戦が最大のヤマ場となる」とにらんでいた。

 もちろん、最初から諦めていたわけではないが、決勝トーナメント進出をほぼ手中におさめていたリビック、プロ揃いのイカイには、決して安易に勝ち星を計算することはできない。勝利への執着心とは別に、指揮官は冷静に現実を把握・分析し、負けない戦略を立てることも必要である。そこで秀島監督は東京電力との6位争いの可能性が高いと見て、最終戦での直接対決にしぼった対策を練った。

 しかし、やはり勝負はやってみなければわからない。セカンドステージ第2戦のイカイ戦、伊予銀行は2(シングルス1本、ダブルス)−1で貴重な白星を挙げた。この試合、秀島監督は出場メンバーの入れ替えも検討していたという。前述した通り、ヤマ場は最終戦だと踏んでいたため、シングルスの小川冬樹選手、植木竜太郎選手に休養を与えた方がいいと考えたのだ。しかし、小川選手も植木選手も出場することを強く望んだ。指揮官はそんな2人の気持ちをくみ取り、出場させることを決意した。

「特に植木は使命感に燃えていました。というのも、ファーストステージでの九州電力戦、第1セットを先取し、第2セットも5−3とリードしながら、突然、右足の痙攣に見舞われ、勝てるゲームを落としてしまったことを、ずっとひきずっていたんです。もともと責任感の強い選手ですからね。セカンドステージまでの1カ月間、今度こそは結果を出したい、と走り込んでいたんです」

 その努力が実り、植木選手はプロ相手に、6−4、7−5のストレート勝ちを収めた。そしてプロ同士ながら即席ペアだったという相手に、萩森友寛・坂野俊ペアが挑んだダブルスではセットカウント1−1で最終セットにもつれ込むと、タイブレイクの末に接戦を制したのだ。

 そして迎えた東京電力戦。この時点で伊予銀行は2勝4敗、対する東京電力は1勝5敗だった。伊予銀行が負ければ、2勝5敗で並ぶことになる。その場合、並んだ相手との対戦結果で決まるルールであるため、東京電力が6位となる。つまり、この試合で勝った方がリーグ残留、負ければ降格が決定する。秀島監督の予想通り、お互いに今リーグ一番の勝負どころとなった。

 セカンドステージに入っての成績を見れば、イカイから金星を挙げた伊予銀行に対し、東京電力は連敗していただけに、伊予銀行に分があったといってもいい流れにあった。秀島監督は勝負は最後のダブルスとにらんでいた。つまり、シングルスを1−1で乗り切るつもりだったのだ。小川、植木の両選手の実力からすれば、無理な話ではない。そのため、ファーストステージ後にはダブルス強化に力を入れてきた。ところが、その目算は外れた。小川、植木の両選手が黒星を喫し、ダブルスの前で勝負がついてしまったのだ。

「植木の相手は元ナショナルチームに選ばれるほどの選手。もう、これは致し方ありませんでした。もちろん、小川の相手も強いプレーヤーでした。でも、実力的には小川の方が上。本領を発揮すれば十分に勝てる相手でした。でも、小川は相当なプレッシャーを感じていたんでしょう。植木が負けたことで、自分が勝たなければチームの降格は決定することがわかっていましたからね。加えて、相手は絶好調。ほとんどミスがなく、エースの選手と同じくらいのプレーをしていたんです」

 チームの命運を背負った小川選手は第1セット6−7と善戦し、続く第2セットは7−5で奪い返した。しかし、第3セットは1−6での完敗。自分が負けてもダブルス勝負と考えられた相手とは裏腹に、襲いかかるプレッシャーと戦わなければいけなかった小川選手の疲労はピークに達していたのだろう。伊予銀行の10年ぶりとなる降格が決定した。

 次のダブルスは正直言えば、消化試合だった。しかし、それでも萩森・坂野ペアが勝利したことは、チームにとって非常に大きな意味をもたらしたのではないか。気持ちの切り替えができたこと、そして最後まで勝負を捨てないこと。チームにそんな精神的強さが養われていることが証明されたといえよう。そして来シーズンへとつながる勝利となったに相違ない。

 来シーズンは10月に入れ替え戦に臨む。伊予銀行を含めた今シーズンの日本リーグから降格した4チームに加え、都道府県大会、各地域(北海道、東北、北信越、関東、東海、関西、中四国、九州)の代表選抜大会を勝ち抜いた12チーム、計16チームがトーナメント方式で争う。4位までに入れば、日本リーグへの出場権が与えられる。

 ベスト4に入るためには、2試合勝ち抜かなければならない。リーグ戦とは異なり、負ければ終わりの一発勝負が続くトーナメントでの連勝は決して簡単なことではない。そして5位以下のチームは翌シーズン、各地域の代表権を勝ち取り、再び入れ替え戦に臨むこととなる。まさに明暗がハッキリと分かれるのだ。

 自らの現役時代に4度、入れ替え戦の経験をしているという秀島監督。果たして、どのような対策を考えているのか。
「一発勝負は技術うんぬんというよりも、やはりメンタル面での勝負となります。ですから、プレッシャーを克服することがチームの課題となる。今回の日本リーグの経験から、プレッシャーを感じた時にどうするかではなく、プレッシャーを感じないようにするためにはどうするのかが重要だと思っています。10月には入れ替え戦のほかに大事な国体もある。それまでにプレッシャーを感じない強い精神力を養いたい」
 
 現在のチームが置かれた状況が厳しいことは確かである。乗り越えなければならない山はいくつもあり、決して低くはない。だが、選手たちは下を向いてなどはいない。日本リーグでは明るい材料もあった。何よりも「自分たちのやってきたことは間違っていない」という確信がある。指揮官もまた選手たちが確実にレベルアップしていると感じている。今は我慢の時である。そして、チームが成長する絶好のチャンスだ。今回の経験を糧に、ひと回りもふた回りも成長した姿を日本リーグで再び見せてほしい。


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