なでしこジャパン、世界一おめでとうございます。
 今回、その歴史的瞬間を現地フランクフルトのスタジアムで味わう機会に恵まれました。日本サッカー協会よりスポーツ議員連盟に観戦の案内があり、各会派の皆さんと相談の上、準決勝からドイツに伺うことになったのです。旅費はすべて自己負担でしたが、お金には換えがたい貴重な経験ができました。
 準決勝も決勝もスタジアムは超満員。いいプレーにはいいタイミングで拍手が起こり、ボールが外に出た時には自然発生的にウェーブができる。観客が雰囲気をうまくつくり、選手たちを乗せていました。長年培われたドイツの応援文化の素晴らしさを改めて感じましたね。

 フランクフルトは近郊に米軍基地がある関係で、決勝には米国人がたくさん詰め掛けていました。日本への声援も小さくはなかったものの、明らかにUSAコールのほうが大きかったです。なでしこジャパンにとってはアウェーに近い雰囲気と言えたでしょう。しかも試合内容は猛攻を受け、2度リードを許す展開。それでも2度追いつき、PK戦で勝ったのですから、これは本当にすごいことです。最後まで諦めないことの大切さを、また教えてもらいました。

 実はドイツに行って痛感したのは、日本に対するイメージの低下でした。長引く不況に、3月の震災に伴う原発事故、政治の混迷。報道もネガティブなものが多く、「日本はダメだ」と思われている節がありました。しかし、今回のなでしこの優勝は「日本はまだやれる」という強烈なメッセージを発信できたのではないでしょうか。自分たちのやり方を貫き通し、結果を残す。ここに日本復活のヒントがあると強く思いました。

 ドイツ滞在期間中には現地のスポーツ施設の視察や、日本人学校の訪問も行いました。ドイツといえば、総合型地域スポーツクラブの先進国。フランクフルトだけでも430ものクラブがあるそうです。ただし、自前の施設を持っているクラブはそのうち100だけ。残りの330クラブは公共の施設を活用しています。
(写真:フランクフルトにある屋内の陸上競技場)

 ドイツのスポーツクラブは充実した施設を備えているとのイメージを抱いている方には、この数字は意外かもしれません。これは日本でも公共施設を有効に使えば、地域スポーツの活動が充分可能であることを示唆しています。特に日本は部活動が活発なため、小中高と多くの学校にグラウンドや体育館があります。新たにスポーツ施設をつくるのみならず、既存のものをいかに活用するか。ここに総合型地域スポーツクラブ成功のカギがあると感じました。

 日本同様、ドイツでも少子高齢化が進み、若者のスポーツ離れも問題視されています。スポーツが多様化した影響で、地域のクラブでは対応しきれない限界も出てきているようです。そこでフランクフルトでは18歳以下の青少年が多いスポーツクラブに優先して助成するシステムをとっています。すると各クラブは若者を何とか集めようと努力します。必然的にスポーツに取り組む子どもが増えるというもくろみなのでしょう。

 これは日本でも応用できる仕組みです。ドイツ以上に高齢化が著しい日本では、若者に限らず、高齢者のスポーツ参加に対して助成をするのも1つの手かもしれません。今回、短い滞在期間ではありましたが、地域スポーツクラブの先駆者であるドイツの現状を知り、また、それに対する施策を勉強できたことは非常に有意義でした。今後の政策立案に大きく役立てたいと考えています。

 ちなみにフランクフルトのスポーツ関連予算は1600万ユーロ(約18億円)。この地域の人口は約230万人ですから、日本と比較して、かなり多くの金額がスポーツに割かれていることがわかります。視察先では担当者が「スポーツは人と人とのつながりを深め、健全な社会をつくる」と語っていました。まさに、その理念が共有されているからこそ、充実した環境やシステムが整えられているのでしょう。

 なでしこジャパンの優勝で、これからサッカーを志す女の子も増えてくるはずです。残念ながら、女子サッカーを取り巻く環境は、まだ子どもたちが夢見るほどはよくありません。スポーツ基本法が成立した今、そこに手を差し伸べるのも政治の役割と言えます。その勇気をなでしこの選手たちは与えてくれました。

 スポーツでもっと豊かな国へ――。この偉業を追い風に、その実現へ邁進していきます。
 

友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
>>友近としろう公式HP
(写真:決勝後に会ったUEFAミシェル・プラティニ会長と)
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