副題に「アーミテージ・ナイ緊急提言」とある。親日派で知られる元米国国務副長官リチャード・アーミテージと知日派の政策通ジョセフ・ナイの縦横無尽の語らいは、まるで上質のフットボールゲームの試合を見るようにスリリングで機知に富む。
 中にはドキリとする発言もある。たとえばアーミテージは自国の大統領であるバラク・オバマに対し、<非常に不安を覚えています>と率直に言ってのける。<なぜなら、彼は一切の人間関係を拒むからです>
 鳩山由紀夫前首相に対して「宇宙人」と評する向きもあったが、それなどまだかわいいほうか。<孤高とか孤立とかいうのとは違います。すべての関係がビジネスライクなのです>。アーミテージによると<人間関係を築こうとしない>大統領への不満や批判はそこら中で耳にするという。
 良好な日米関係がトップ同士の濃密な信頼関係をベースにして成り立つものだとすれば、かつての「ロン・ヤス外交」や「ブッシュ・小泉外交」のような蜜月時代の再現は望めないということか。
 日米同盟とはいかなるもので今後、いかにあるべきか。その指南書として比類なき1冊。 「日米同盟vs.中国・北朝鮮」 ( リチャード・L・アーミテージほか著・文春新書・820円)

 2冊目は「和解する脳」( 池谷裕二、鈴木仁志著・講談社・1400円)。 もめごとを平和的に解決するには、どんなメカニズムが必要なのか。人が争っている時、和解に至る時の脳の働きに着目する。最先端の脳研究者と弁護士との刺激的な対談。

 3冊目は「大和魂」( 田中マルクス闘莉王著・幻冬舎・1300円)。 南アW杯で決勝トーナメント進出を果たしたサッカー日本代表。「俺たちはヘタくそなのだから、泥臭くやらないといけない」。流れを変えたのは大会前の著者の一言だった。

<上記3冊は2011年1月26日付『日本経済新聞』夕刊に掲載されたものです>
◎バックナンバーはこちらから