トルコ・イスタンブールで開催されているレスリングの世界選手権で女子55キロ級の吉田沙保里(ALSOK)が優勝し、9連覇を達成した。世界選手権9連覇は男子グレコローマンスタイル130キロ級のアレクサンドル・カレリン(ロシア)に並び、史上最多タイ。また63キロ級では伊調馨(ALSOK)が初戦から1ポイントも失わない強さをみせ、2年連続7度目の世界一に輝いた。両階級で日本は来年のロンドン五輪の出場権を獲得した。
 苦しんだV9だった。
 吉田は初戦から2試合連続でフォール勝ち。準決勝、準決勝も大差で勝ちあがった。無敵の女王ぶりを発揮して臨んだ決勝だが、トーニャ・バービーク(カナダ)に苦戦を強いられる。第1ピリオドをとり、優勝がかかった第2ピリオド。2−0とポイントでリードしながら、終盤にタックルを崩され、2ポイントを失う。このピリオドはビックポイントを奪ったバービークが制した。

 勝敗を決する最終第3ピリオド、吉田は再び2−0とリードを奪う。しかし、またも試練が待っていた。さらにポイントを加算しようとしかけたタックルを返され、2−2に追いつかれる。相手には消極的姿勢に警告が与えられていたため、このままでも吉田の勝利だったが、本人は「負けた」と感じていた。

 試合時間残り3秒。吉田は思い切って相手にタックルをしかける。これが決まって相手を場外へ押し出し、1ポイントを獲得。最後は女王の意地をみせて、五輪3連覇へまずは出場権を確保した。

 伊調は顔をアザだらけにしながらも、栄冠は放さなかった。
 初戦で相手の頭突きを受け、鼻を骨折した。さらに3回戦では相手の指が右目に入り、目の周りも腫れた。集中が途切れそうな状況ながら、初戦から試合内容は危なげなかった。北京五輪後は一時、競技を離れていたが、これで復帰後、2年連続での優勝。五輪前年で出場選手が増えた中でみせた強さは、3連覇を目指すロンドンへ大きな弾みがついた。

 なお、女子59キロでは初出場の斉藤貴子(自衛隊)が銅メダルを獲得している。