昨年、ドイツW杯で歓喜の初優勝を達成したなでしこジャパン。次なる目標は今夏、ロンドンで開催されるオリンピックでの金メダルだ。その前哨戦となったアルガルベ杯では、準優勝に終わったものの、25戦して過去一度も勝利できていなかったアメリカ(※W杯決勝でのPK戦は引き分け扱い)に、初めて土をつけた。果たしてその勝因は何だったのか。過日、なでしこジャパンの新主将に就任した宮間あやにインタビューを敢行した。そこで、彼女はアメリカ撃破のポイントを語っていた。
二宮: 宮間選手は09年にアメリカのプロチームに移籍しました。アメリカの女子サッカーは、世界ナンバーワンです。どういった点がプラスになりましたか。
宮間: まず、初めてプロ選手としてサッカーをしたことが大きかったです。プロとしての姿勢や自覚が生まれましたし、そこで出会った多くの人たちが、私の人生に大きな影響を与えてくれました。アメリカでは計3チームに所属しましたが、どこへ行ってもポジションに変化なくスタメンで出場できたところは非常に恵まれていたと感じます。

二宮: 普通、チームが変わると戦略に合わないからと外されたり、ポジションを変更させられることも少なくありません。どんなチームでも同じように必要とされたというのは実力が認められた証拠でしょう。
宮間: ありがとうございます。私もそういう選手になりたいと思い、頑張ってきたので自信になりました。

二宮: アメリカの選手たちは、フィジカルが強く、コンタクトプレーでは日本はどうしても不利になる。ロンドン五輪ではアメリカとの再戦も予想されます。再び勝利を収めるためには、何が必要だと思いますか。
宮間: 昨年のワールドカップのような運も必要ですし、運をたぐり寄せるための努力も必要だと思います。そのうえで、日本とアメリカとの間にあるのは「差」ではなく「違い」だという発想が大事になるでしょう。
 たとえばフィジカルを差ととらえてしまうと、アメリカのようにフィジカルの強いチームを目指さなければならない。
それでは、いつまで経ってもアメリカの上にいくことはできません。佐々木監督がいま私たちに浸透させているサッカーの質をさらに上げていけば、結果はもちろん内容でもアメリカに勝利できる日が必ずくると確信しています。

二宮: 差ではなく違い。非常によくわかります。日本が勝っている点をもっと磨いていくことが重要だということですね。
宮間: これは私の持論ですが、フィジカルの強さは「決定的な勝利の要因にはならない」けれども、フィジカルの弱さが「負ける要因にはなる」ので、ある程度、フィジカルのトレーニングは必要です。だけど、それによって勝つのではなく、違う点で勝負をすることが大事だと思っています。

二宮: 7月にはロンドン五輪があります。ワールドカップで優勝したことで、国民の多くは再び金メダルを期待しています。しかし、女子サッカー界でワールドカップを制した翌年の五輪で優勝したケースはありません。金メダルへの道のりは決して容易ではないことは選手自身が一番わかっているのではないでしょうか。五輪への意気込みを聞かせてください。
宮間: 五輪でメダルを獲ることは、すべてのアスリートの夢です。ワールドカップ以上に各国は力を入れてくるでしょう。本当に厳しい戦いになると思います。だからこそ、金メダルを取って、ワールドカップで得た喜びよりも、もっと大きな喜びを味わいたいという気持ちが強くなっています。
 特に今回のロンドン五輪は、日本女子サッカーの未来を左右すると思っています。五輪にかける思いは前回以上に強いです。

二宮: ロンドンでも宮間選手らしいプレーが見られることを楽しみにしています。
宮間: 以前、テレビで過去の五輪のメダルを見たら、ワールドカップでもらったものよりサイズが大きかったんです。だから、ぜひ大きいメダルを日本に持って帰りたいと思っています。

<この原稿は『第三文明』2012年3月号の原稿から一部を抜粋・再構成したものです>
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