3月30日、政府は消費税増税の関連法案を閣議決定しました。このコーナーでもたびたび触れたように、僕は現段階での消費税増税には賛成できません。党の政策決定に関わる政調会長補佐を務めてきましたが、このままでは自分自身が納得のいかない法案を認めてしまうことになるため、役職の辞表届を出しました。
 今回の消費税増税を巡る議論のなかで、僕が最も納得がいかないのは、2009年の政権交代時に国民の皆さんと約束したマニフェストがほとんど手つかずのまま、マニフェストにはない増税に着手していることです。

 しかも政権交代の際には、当時の鳩山由紀夫代表が「衆議院の任期中の4年間、消費税を上げない」と発言をしています。この整合性を問われ、「消費税を上げるのは、4年の任期が終わった後(2013年秋)だから問題ない」とまで言っている方もいますが、全くの詭弁です。なぜなら、09年の総選挙で民主党に1票を投じた皆さんのなかで、「消費税を上げてくれ」と望んで投票した人はいないと思われるからです。むしろ、「消費税を上げない」という言葉に期待して民主党を支持した人のほうが多いでしょう。

 先の選挙では消費税増税に対して有権者は意思表示をしていないのですから、「4年が過ぎれば上げても構わない」という論理は成り立ちません。どうしても増税をしたいのであれば、法案を通す前に解散総選挙で国民に信を問う必要があるでしょう。

 衆議院議員の任期も、僕の参議院議員としての任期も、あと1年ちょっとで切れます。つまり、最長でも1年後には選挙があるのです。そのタイミングで皆さんに意思表示をしていただき、増税派が議会の多数をとれば、消費税をアップするのが本当の民主主義でしょう。今のまま消費税増税を進めることは、民主党が野党時代に徹底批判していた“国民不在”以外の何物でもありません。

 加えて党内手続きの面でも今回は問題があります。閣議決定前の党内議論は、最終的に前原誠司政調会長に一任となりました。議論のなかでは増税に伴う負担増への対策なども出ていましたが、こちらもすべて「一任」です。国民の生活に直結する重大な問題は、議員ひとりひとりに説明責任が求められます。議論が尽くせていない状態での“丸投げ”では、国民の皆さんに何と話をしたら良いのか分かりません。多くの議員が地元に帰って困っている状況ではないでしょうか。

 実際、地元企業の皆さんからは「消費税がアップしたら会社が成り立たない」という声をたくさんいただいています。小売や請負の弱い立場にある会社だと、増税分を価格に転嫁するのは容易ではありません。まさに増税分は自らの身を削って穴埋めすることになります。

 果たして現政権は消費税を上げる前に、身を削るような施策を行っているでしょうか。ムダの削減はもちろん、年金制度などの社会保障の改革も遅々として進んでいません。野田首相は、消費税増税に「政治生命をかける」そうです。しかし、もっと他に「政治生命」をかける事案はあるのではないかと感じます。

 赤字が膨らむ一方の財政状況を考えれば、将来の増税はやむを得ないと僕も考えます。しかし、単に消費税を上げただけで、すぐに財政が良くなるわけでもありません。長期的な視点にたった税制の見直しも必要でしょう。そのなかで、なぜ消費税だけを急いで上げなくてはならないのか。現状では国民の皆さんに納得していただける材料が足りません。こんなことをやっていては、民主党、ひいては日本の政治に誰も期待しなくなってしまう……。政治に携わるひとりとして強い危機感を抱いています。

 さて、同じく3月30日にスポーツ政策では、またひとつの前進が見られました。文部科学省からスポーツ基本計画が発表されたのです。この基本計画は昨年施行されたスポーツ基本法に基づき、今後の10年を見通した基本方針を定めています。そのなかで、今後5年間で取り組むべき施策として、大きく以下の7項目があげられました。

1.学校と地域における子どものスポーツ機会の充実
2.若者のスポーツ参加機会の拡充や高齢者の体力つくり支援等ライフステージに
応じたスポーツ活動の推進
3.住民が主体的に参画する地域のスポーツ環境の整備
4.国際競技力の向上に向けた人材の養成やスポーツ環境の整備
5.オリンピック・パラリンピック等の国際競技大会等の招致・開催等を通じた国
際交流・貢献の推進
6.ドーピング防止やスポーツ仲裁等の推進によるスポーツ界の透明性、公平・公正性の向上
7.スポーツ界における好循環の創出に向けたトップスポーツと地域におけるスポーツとの連携・協働の推進

 このスポーツ基本計画を進める上では、国はもちろん地方公共団体の役割も重要です。ところが地方の財政が厳しくなるなか、スポーツ関係の支出は95年を境にどんどん減っています。09年度は5,015億円とピーク時の半分になってしまいました。文科省のスポーツ関連予選が過去最高額を計上しているのとは対照的です。スポーツ振興には各地方公共団体での取り組みが欠かせません。そして、その取り組みは、各地方に応じた特色のあるものであっていいと考えます。国が一定の方針を示し、補助を出しながら、地方の権限で政策を進める。スポーツ政策から地方分権を実践していければと思っています。

 7項目のなかで「スポーツ界の透明性、公平・公正性の向上」に関しては、先日、ボートの武田大作選手が日本スポーツ仲裁機構(JSAA)に五輪予選の代表選考について不服を訴え、内定が取り消されたのは記憶に新しいところです。選手側の訴えが認められ、再レースで武田選手のペアが代表を勝ち取ることができたのは本当に良かったと感じます。

 ただ、今回の武田選手のJSAAに対する申し立ては門前払いになるリスクもはらんでいました。日本ボート協会が紛争の解決をJSAAに委ねる「スポーツ仲裁自動受諾」条項を採択していなかったからです。協会がJSAAによる仲裁を拒否した場合は、せっかくの申し立ても実らなくなってしまうところでした。

 自動受諾条項を採択していないのは、ボート協会だけではありません。何とJOC、日本体育協会とその加盟、準加盟団体の半数以上に、この条項がないのです。僕は2007年の初質問の際、我那覇和樹選手(当時川崎フロンターレ、現FC琉球)のドーピング問題に絡んでJリーグに自動受諾のシステムがないことを指摘しました。あの後、Jリーグは条項を採択しましたが、その他の団体は、あまり状況が変わっていません。

 スポーツ基本法では第5条で「スポーツ団体は、スポーツに関する紛争について迅速かつ適正な解決に努める」と定められました。各スポーツ団体は国からの補助金を得ています。今後は基本法の精神にのっとって、公平、公正なガバナンスをしている団体に対してインセンティブをつけるといった方法も視野に入れることになるでしょう。この補助金に関しては、複数の団体でコーチ報酬が所属団体に還流していたという問題も発覚しています。スポーツ団体は何のために、誰のためにあるのか。この問いかけを今後も僕は続けていきたいと考えています。


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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