見逃せない、2000本安打達成の瞬間! 〜プロ野球〜

 3月30日にセ・パ両リーグが同時開幕した日本のプロ野球。昨季に続いて採用されている低反発の統一球の影響が顕著に表れ、今季も「投高打低」の様相を呈している。30日の開幕戦では、石川雅規(東京ヤクルト)と吉見一起(中日)が終盤までノーヒットノーランの可能性があった。結局、吉見は8回に、石川は9回にヒットを打たれ、史上初の開幕での快挙達成とはならなかったが、そのわずか1週間後の4月6日には前田健太(広島)が横浜DeNA相手にノーヒットノーランを達成した。その後も投手戦が多くを占めており、27日現在、両リーグ合わせて消化した129試合のうち、完封は30%の39試合にのぼる。こうした打者にとっては厳しい環境下において、2人のベテラン打者が大記録に挑んでいる。稲葉篤紀(北海道日本ハム)と宮本慎也(ヤクルト)だ。同じ年(1995年)に同じ球団(ヤクルト)でプロ生活をスタートさせた2人の“2000本安打達成”が今年のGWの目玉となる。
(写真:2000本安打達成に王手をかけている稲葉)
 まさに“飛ぶ鳥落とす勢い”でヒットを量産しているのが稲葉だ。開幕から好調の稲葉は、ここにきてさらにその勢いを増している。11日のソフトバンク戦では満塁弾と3ランで自身最多タイの7打点をマーク。残り10本と迫った1990安打目は19日の埼玉西武戦、6回表満塁の場面での逆転2点タイムリーと、満塁での勝負強さが光る。22日のオリックス戦は木佐貫洋の前に3打数無安打に終わり、連続試合安打は5でストップした。

 しかし、25日の千葉ロッテ戦で4安打の固め打ちをして、2000本安打まで残り2本に迫ると、翌日には1−1で迎えた6回裏、渡辺俊介から勝ち越しホームランを放った。結局、これが決勝打となり、チームは今季最多の貯金8。51歳の誕生日を迎えた栗山英樹新監督への祝砲ともなった一発で、2000本安打に王手をかけた。個人成績でも現在、打率(3割8分4厘)、打点(22)、本塁打(4)の主要3部門でリーグトップを誇っている。GW中での史上39人目となる快挙達成は間違いない。さらに2000本目が本塁打となれば、通算250本目のメモリアルアーチとなる。

 その稲葉と同じプロ18年目、ヤクルト同期入団の宮本は、稲葉とは対照的に、マイペースだ。開幕時には残り34本だった稲葉に対し、残り25本としていた宮本だが、ハイペースの稲葉に先を越された状態。だが、本人はいたって冷静で、特に気に留める様子もない。 満塁本塁打、4安打の固め打ち、誕生日を迎えた監督への祝砲……と話題性たっぷりのヒットを放っている稲葉に対し、宮本はいぶし銀の職人技を見せている。22日の巨人戦では1死一塁からエンドランでスタートした一塁走者へのベースカバーに入ったショートの坂本勇人の位置に狙いすました技ありの1本を放った。

 稲葉が4安打と猛打をふるったその日、宮本は中日の投手陣の前に5打数無安打と足踏みしていた。しかし、翌日には初回、吉見(中日)からヒットを放ち、残り7本としている。稲葉との“同日達成”は難しいが、宮本もGW中に到達する可能性は十分にある。快挙達成となれば、大学、社会人を経由してプロに入った選手としては、古田敦也に続いて史上2人目。さらに既に41歳5カ月の宮本は、落合博満の41歳4カ月を抜いて最年長での達成だ。そして、宮本は今季、もう一つの大記録を目前にしている。川相昌弘、平野謙に続いて史上3人目となる通算400犠打まで、あと9つと迫っているのだ。ちなみに川相、平野は2000本安打は達成していない。両方の快挙達成は史上初となる。

 日本ハム、ヤクルトは現在、ともにリーグ首位に立っている。今もなおチームの主力として活躍するプロ18年目のベテランへの信頼は厚い。その2人の快挙達成が、チームに勢いをもたらすことは想像に難くない。その意味でもGW中の2人のプレーに注目したい。

<セ・リーグ>
4月28日(土)〜30日(月)
 広島 − 東京ヤクルト (マツダスタジアム)
 中日 − 横浜DeNA (ナゴヤドーム)
 巨人 − 阪神 (東京ドーム)
5月1日(火)〜3日(木)
 巨人 − 広島 (東京ドーム)
 横浜DeNA − 東京ヤクルト (横浜)
 中日 − 阪神 (ナゴヤドーム)
4日(金)〜6日(日)
 横浜DeNA − 中日 (横浜)
 阪神 − 巨人 (甲子園)
 東京ヤクルト − 広島 (神宮)

<パ・リーグ>
4月28日(土)〜30日(月)
 オリックス − 埼玉西武  (京セラドーム)
 東北楽天 − 北海道日本ハム (Kスタ宮城)
 千葉ロッテ − 福岡ソフトバンク (QVCマリン)
5月1日(火)〜3日(木)
 北海道日本ハム − 福岡ソフトバンク (札幌ドーム)
 埼玉西武 − 東北楽天 (西武ドーム)
 オリックス − 千葉ロッテ (京セラドーム)
4日(金)〜6日(日)
 埼玉西武 − 千葉ロッテ (西武ドーム)
 北海道日本ハム − オリックス (札幌ドーム)
 福岡ソフトバンク − 東北楽天 (ヤフードーム)


 仙台、首位固めへ 名門は巻き返しなるか 〜Jリーグ ディヴィジョン1〜

 GWのJ1は、4月28日(土)、5月3日(木)、5月6日(日)に試合が組まれている。ACLに出場するクラブを除いた14クラブは9日間で3試合をこなすハードな日程だ。しかし、首位を行くベガルタ仙台にとっては、どこ吹く風かもしれない。

 第7節終了時の戦績は6勝1分。18クラブ中唯一の無敗だ。昨季はJ1最小失点(25点)を誇った“守”のチームだったが、今季は“攻”のカラーに一変した。ここまで既にリーグ最多の18得点。1試合平均の得点は唯一の2点台だ。たった7試合で昨季(39得点)の半数に迫るゴールを挙げている。

 圧巻だったのはアウェーで昨季王者の柏を下した一戦(第6節)だ。試合は仙台が2度リードを奪いながら、追いつかれる展開。しかし、後半33分、FW赤嶺真吾が決勝点をあげて勝ち切った。光るのはフィニッシャーの質の高さだ。この試合で仙台が後半に放ったシュートはわずか2本。しかし、いずれもゴールネットを揺らしている。第7節(FC東京戦)でも、シュート9本で4ゴールを奪っており、赤嶺をはじめ、MF関口訓充、MF太田吉彰と攻撃の選手が軒並み好調を維持している。

 そんな仙台はこの3連戦、アルビレックス新潟、サガン鳥栖、清水エスパルスと対戦する。注目は5月3日の鳥栖戦だろう。今季J1に昇格した鳥栖は、7試合を終えてわずか3失点という鉄壁ぶりを披露しているからだ。順位も堂々の5位につけている。攻撃的な仙台と堅守の鳥栖の一戦は、いわば矛と盾の戦い。戦力的に仙台優勢ではあるが、ホームで迎え撃つ鳥栖の厚い盾が、その快進撃に待ったをかけるかもしれない。

 今季のJ1は、ビッグクラブと呼ばれる鹿島アントラーズ、ガンバ大阪、横浜F・マリノスが軒並み不振に陥っている。鹿島とG大阪はともに開幕5戦未勝利と苦しんだ。G大阪は監督交代に踏み切り、松波正信新体制になってようやく初勝利をあげている。一方の鹿島は、ジョルジーニョ体制を継続し、同じく第6節で今季初白星を飾った。両クラブは第7節にも勝利し、連勝を収めて復調気配が出てきた。そんな両者が4月28日に相まみえる。ライバル対決を制して上位に浮上してくるのはどちらか。

 一方、横浜FMはいまだにトンネルのなかだ。開幕7戦未勝利はクラブワースト。ナビスコ杯を含めれば、公式戦は10戦していずれも勝てていない。GWの3連戦ではヴィッセル神戸、浦和レッズ、コンサドーレ札幌の順で対戦する。今のトリコロールに必要なのは勝利のみ。この3連戦で結果が出なければ、指揮官の交代といった手段に踏み切らざるを得なくなる。名門クラブにとっては、まさに正念場だ。

◇第8節
・4月28日(土)
F東京―清水(13:00、味スタ)
名古屋―浦和(13:00、瑞穂陸)
柏―鳥栖(14:00、柏)
川崎F―広島(15:00、等々力)
鹿島―G大阪(15:30、カシマ)
大宮―札幌(16:00、NACK)
横浜FM―神戸(16:00、日産ス)
新潟―仙台(16:00、東北電ス)
C大阪―磐田(19:00、金鳥スタ)

◇第9節
・5月3日(木)
札幌―C大阪(14:00、札幌厚別)
神戸―大宮(14:00、ホームズ)
川崎F―磐田(15:00、等々力)
広島―新潟(16:00、広島ビ)
鳥栖―仙台(16:00、ベアスタ)
浦和―横浜FM(19:00、埼玉)
清水―鹿島(19:00、アウスタ)
※F東京―柏、G大阪―名古屋はACL出場のため、6月27日(水)に開催

◇第10節
・5月6日(日)
仙台―清水(13:00、ユアスタ)
横浜FM―札幌(13:00、日産ス)
C大阪―神戸(13:00、金鳥スタ)
柏―広島(15:00、柏)
大宮―G大阪(16:00、NACK)
磐田―浦和(16:00、エコパ)
名古屋―川崎F(17:00、豊田ス)
鹿島―鳥栖(19:00、カシマ)
新潟―F東京(19:00、東北電ス)


 田中3兄妹、揃ってロンドン行きなるか 〜体操NHK杯〜

 男女体操のロンドン五輪日本代表決定競技会となるNHK杯が5月4日、5日と代々木競技場第一体育館で行われる。五輪で2大会ぶりの団体金メダルを狙う男子は既に、個人総合で連覇がかかる内村航平(コナミ)が内定。残りの4枠をこの大会と4月の全日本選手権の成績を基に争う。両大会の個人総合合計得点(全日本は半分で計算)がトップの選手はもちろん、五輪での戦略上、協会が重視している床運動または鉄棒で2度以上トップに立った選手、各種目の1位と2位選手に与えられるポイントの合計が1番高かった選手が選ばれる。女子は両大会の個人総合の合計得点で上位5人が代表となる。

 注目は田中和仁(徳洲会)、理恵(日体大研究員)、佑典(コナミ)の田中3兄妹だ。昨年の世界選手権では3人揃って代表入りを果たしており、いずれも初の五輪を目指す。現状、五輪に最も近いのは理恵だろう。先の全日本では安定した演技で初優勝。合計得点で2位以下の選手に大差をつけており、よほどのミスがない限り、代表入りは確実な状況だ。

 男子では全日本の結果、兄・和仁が個人総合トップ。しかし、男子は全日本の得点が半分になるほか、加藤凌平、野々村笙吾の順天堂大1年生コンビが予想以上の好成績を収め、選考に名乗りをあげてきた。昨年の世界選手権個人総合銅メダリストの山室光史(コナミ)も、全日本を終えて総合7位に沈んでいるが、このNHK杯で逆襲を誓う。若手と実績のある選手が僅差で並び、代表の行方は見えない。

 弟・佑典は総合で現状5番手。ただし、得意の鉄棒で全日本2位に入り、ポイントを獲得している。鉄棒は重視種目でもあり、ここで結果を残せば五輪行きも可能だ。また女子の代表争いでは昨年まで全日本6連覇中だった鶴見虹子(日体大)は7位と出遅れた。1月に左手甲を骨折した影響で演技に精彩を欠いている。逆転での2大会連続五輪へ、どこまで巻き返してくるかが焦点となる。