日本の領土でありながら自由に上陸できない島がいくつかある。そのひとつが沖縄県の尖閣諸島だ。大正島、久場島、魚釣島、北小島、南小島の5つの島と岩礁から構成されている。
 島には、それぞれ所有者がおり、現在は政府と賃貸契約を結んでいる。ちなみに魚釣島、北小島、南小島の所有者は埼玉県の実業家で、知人から「島を永久に自然のまま残す」という条件で譲渡されたものだ。
 著者はあの手この手で上陸を試みようとするが、絶海の孤島ゆえ、おいそれとは近づけない。しかも勝手に上陸すれば軽犯罪法違反に問われる。結局、プロペラ機で上空から視察するのだが、島の現状を伝えるナマの報告は貴重である。
 著者は持ち前の行動力を発揮して北方領土や竹島にも足を運ぶ。色丹島では銃撃を受けて拿捕された日本船を発見する。また「ここは日本の領土です。島を日本に返すべきです」というロシア人の声を聞く。竹島では警備隊の隊員からマークされながら取材を続ける。
 領土問題はなぜ発生し、なぜ今もくすぶり続けるのか。著者はその背景に米国の影を見る。一読の価値あり。 「ニッポンの国境」 ( 西牟田靖著・光文社新書・760円)

 2冊目は「ぜんそく力」( 清水宏保著・ぴあ・1400円)。 著者はぜんそくの持病を抱えながらスピードスケートという過酷な競技で金メダリストになった。“ぜんそく博士”とでも呼ぶべき豊富な知識で患者の疑問に答える。

 3冊目は「わが心の木内野球」( 仁志敏久著・ベースボール・マガジン社・1400円)。今夏限りで監督を勇退した常総学園の木内幸男といえば高校球界屈指の名将だ。その卓越した指導の秘密を教え子が豊富なエピソードを交えて紹介する。

<上記3冊は2011年9月14日付『日本経済新聞』夕刊に掲載されたものです>
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