香川を大切にしたいマンUの配慮

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 昨今の今頃、わたしにとっての年間最優秀監督はデンマークのFCコペンハーゲンを率いていたノルウェー人監督、ストール・ソルバッケンだった。これといったスター選手がいないチームでありながら、欧州CLでバルセロナを苦しめ抜いたのは彼の手腕があればこそ。シーズン終了後にブンデスリーガのケルンへと引き抜かれたのも当然のことのように思われた。
 ところが、ケルンの指揮官になってから聞こえてくるのはネガティブな評判ばかり。チームの成績はあがらず、フィンケSDとの不仲説まで取り沙汰されるようになり、結局、彼はシーズン半ばにしてチームを追われる形となった。ケルン自体も2部降格となり、エースのポドルスキがチームを去ることも決まった。ケルンのファンにとって、ソルバッケンという名前はほとんど疫病神にも近いイメージで記憶されていくことになろう。

 新シーズン、ソルバッケンはプレミアから降格したウルブズ(ウルバーハンプトン)の監督に就任することとなった。ブンデスリーガ1部からイングランド・チャンピオンシップ(2部)に。監督してのキャリアからすれば、間違いなく一歩後退である。しかも、プレミアに比べれば古典的なイングランド・スタイルのチームが少なくないカテゴリーで、ソルバッケンのモダンでコンパクトなスタイルが受け入れられるのかどうか。彼にとっても相当に困難な挑戦となるのは間違いない。

 新しい監督を探すチームにとって、判断の拠りどころとなるのは言うまでもなく過去に率いていたチームの戦績と内容である。ウルブズがソルバッケンに声をかけたのも、ケルンではなくコペンハーゲンでの仕事を評価した人間がいたからに違いない。だが、余所のチームでの実績が新しいチームでそのまま再現できるとは限らないのがサッカーの難しいところ。これは、監督はもちろんのこと、選手についても当てはまる。

 香川の移籍先として名前の上がっているマンチェスターUでは、香川だけでなく、他に複数名ドルトムントから選手を引き抜こうとしているという。さすがにサッカーの難しさを熟知したチームだと感心させられると同時に、何としても香川を大切にしたいという配慮のようなものも感じる。これは過去を振り返ってみても相当に特別な選手しか享受できなかった待遇である。

 サッカーの世界に、新天地での保証はない。今年は、そのことをあらためて痛感させられたシーズンだった。ちなみに、わたしにとって今季の最優秀監督は、ついにレアル・マドリードでも結果を出したモウリーニョである。

<この原稿は12年5月17日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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