消費税増税ばかりが政治のニュースで取り上げられるなか、離島振興法の改正案が20日の参議院本会議で可決、成立しました。この法案は1953年以降、10年ごとの期限で見直され、今回で6回目の改正となります。与野党の垣根を越え、昨年から話し合いを重ね、7党の議員による共同提案でひとつの法律ができました。
 僕の故郷である愛媛県は、全国でも有数の“島の県”です。今回の離島振興法の対象となる島は、何と79もあります。これは長崎県に次いで全国2番目です。島に暮らしている住民の方は約1万5000人を数え、愛媛県の100人に1人は島で生活している計算になります。

 しかし、近年、島の過疎化は著しく、この60年で日本の人口は約4割増えた一方で、島の人口は半減しています。島は交通が不便なことに加え、輸送費を加えた物価が高く、病院、学校などの住民サービスも整っていません。他の地域と同じく税金や社会保険料を支払っているにもかかわらず、島の人々が受ける恩恵には格差が生じています。この法律では、そういった格差を是正し、島でもしっかりと生活が営めるよう、国が対策を講じることが定められています。

 今回、民主党中心の政権となり、法案づくりのイニシアチブをとったため、その中身はこれまでのものと大きく変わりました。たとえば、離島活性化交付金の創設はその一例でしょう。これまでも離島にはさまざまな補助金がありましたが、それらはどれも用途が決まっており、またハコモノやインフラ整備が中心となっていました。

 しかし民主党が掲げてきた「コンクリートから人へ」「中央集権から地方分権へ」の理念の下、離島活性化交付金は各島の事情に応じて幅広い目的で使えるようになっています。従来のハード面のみならず、医療や教育、産業振興といったソフト面にも活用できるのが特徴です。そのため、この法律に関係する省庁も従来の国土交通省、農林水産省、総務省に加え、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、環境省と7つに広がりました。多くの省庁が絡むことにより、タテ割り行政の弊害もより解消されるでしょう。

 法案成立を踏まえ、今後は特定の島で規制緩和、税制優遇を行うことによって産業の発展を促す「離島特区」の創設などがテーマとなります。また、この法律がカバーする離島の規定見直しも重要課題です。たとえば、離島の定義は内海では「定期航路の寄港回数が1日3回以下で、本土との最短航路距離が10キロ以上」となっていますが、最短航路距離が10キロ未満でも多くの住民の方が暮らす島がいっぱいあります。また対象が「人口100人以上の島」となっている点もネックです。先程も紹介したように島の人口は半減しており、住民が100人以下の島はどんどん増えています。この規定は1957年から変わっておらず、時代にそぐわない感は否めません。

 成立前日の参議院国土交通委員会では、この規定見直しについても質問しました。ぜひ改正を機に、より多くの島の皆さんに対象が広がるよう、今後も働きかけていきたいと考えています。

 さて、今回の離島振興法のように超党派でまとまり、成案を得たものもあれば、3党合意といっても名ばかりの法案もあります。それが消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案です。民主党、自民党、公明党との修正協議により、このままなし崩し的に法案が成立してしまいそうな情勢です。

 このコーナーで何度も繰り返していますが、消費税を上げる前に、まず取り組まなくてはいけないことは山ほどあります。国会議員が自ら身を切るムダの削減、国民の皆さんが安心して生活できるための制度づくり……。震災復興もまだ道半ばです。今回の法案は社会保障と税の一体改革という“看板”はかかっていても、社会保障の部分は、ほぼ先送りや棚上げになったまま。レストランで、どんな料理かわからないのに先にお金を払うお客さんはまずいないでしょう。しかし悲しいかな、政治の世界ではどんな制度になるのかよくわからないのに、国民の皆さんから先にお金をとろうとしているのが実情です。

 そもそも僕は民主党の一員であるにもかかわらず、この消費税増税や3党協議について、党内で意思表示をする機会は充分に与えられませんでした。すべて最後は執行部に一任というかたちで、勝手に物事が進んでしまっています。挙句の果てに、3党合意案について前原誠司政調会長から「一字一句変えるつもりない」と言われてしまっては、何のために国民の皆さんに選んでいただいて議員の仕事をしているのか分かりません。

 僕は5年前の選挙で愛媛の皆さんから378,813票をいただいて当選しました。その時、「消費税をアップする」とはお約束していません。今、僕がこの法案に賛成することは応援していただいた約38万人の方々を裏切る行為になります。そうなれば今後、どんな立派な政策を訴えても信用されないでしょう。これは2009年の総選挙で当選した民主党議員も同様です。現在、増税まっしぐらの野田佳彦首相も、あの選挙中に消費税アップを訴えていたわけではないでしょう。当選後は豹変しても構わないのなら選挙の意味は全くなくなります。

 今、どうしても、この法案を通さなくてはならないとすれば、真っ先にすべきことは国民の声を聞くこと、すなわち選挙でしょう。制度上、参議院は解散できませんが、衆議院なら総選挙は可能です。そこで消費税増税を唱え、多数派をとってから法案を通すのが最低限のルールではないでしょうか。野田首相が「命をかける」と言うのであれば、それくらいの覚悟で臨むのが当然です。

 選挙もなしに、この法案を無理矢理通そうとするのであれば、僕は国民の皆さんの声に従って行動するつもりです。野田首相は、与野党で協議し、消費税増税を実現することが「決められない政治」の打破につながると主張してきました。しかし、それが「国民が“決められない政治”」なのだとすれば、これほど不幸なことはありません。


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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