今年の11月1日に発売された年賀はがきの枚数は35億6千万枚だったという。単純計算すれば、日本人ひとりあたり、30枚程度の年賀状を出していることになる。電子メールが普及した今でも、年賀状は日本人にはなくてはならないコミュニケーションツールである。
 しかし年賀状の歴史にはついて、私たちがどれほど知っているかとなると心許ない。かく言う私も本書を読むまでは、いつ始まったのかさえ知らなかった。年賀状を一般の郵便物と区別して取り扱うようになったのは明治39年からだそうだ。
 年賀状といえば、“お年玉はがき”だ。戦後間もない昭和25年用からスタートした。実はくじ付きはがきは世界初の試みであり、大阪の洋品雑貨店の店主が考案した。特等はミシン、1等は純毛洋服地。時代がしのばれる。
 また年賀状はワープロやパソコンなどの普及にも一役買った。プリントゴッコなる家庭用小型印刷機で年賀状の文面を印刷した読者も少なくあるまい。通信手段が多様化した今、年賀状の地位低下は避けられない。しかし、新年を祝う日本特有の慣行が、そう簡単に廃れるとも思えない。年賀状の行く末が気になる。 「年賀状の戦後史」 ( 内藤陽介著・角川oneテーマ21・724円)

 2冊目は「夢をかなえる。」( 澤穂希著・徳間書店・1200円)。 夢は見るものではなく、かなえるもの。そのためには「夢のレンガ」を積み重ねることが大事と著者は説く。逆境を乗り越え、夢を実現させた「なでしこ」主将による人生論。

 3冊目は「ドラフト外」( 澤宮優著・河出書房新社・1600円)。今季、ソフトバンクを日本一に導いた秋山幸二監督はドラフト外入団である。決して将来を嘱望されてはいなかったドラフト外、育成出身から活躍した11名を紹介。

<上記3冊は2011年12月14 日付『日本経済新聞』夕刊に掲載されたものです>
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