国会会期中ではありましたが、8月6日からの3日間、ロンドン五輪を現地で体感してきました。今回のロンドン行きの目的は2つ。ひとつは国立競技場改築に向けて、最新のスタジアムを視察するため。そして、もうひとつは2020年の東京五輪・パラリンピックの招致へ、どのような大会を目指すべきかを学ぶためです。
(写真:男女サッカーの決勝などが開催されたウェンブリースタジアム前で)
 初日の6日には早速、ウェンブリースタジアムでなでしこジャパンとフランスの準決勝を観戦しました。ご存知のようにウェンブリースタジアムは9万人収容の巨大施設。新国立競技場は8万人のキャパシティを想定していますから、ひとつのモデルになる競技場と言っていいでしょう。

 実際に訪れてみると、さすがサッカーに関しては長い伝統があるだけに、そのノウハウを蓄積してできたスタジアムだと感じました。まずコンコースには過去の名選手の銅像やパネル、トロフィーなどが展示され、歴史を感じさせます。

 観客をもてなすホスピタリティゾーンも充実しており、ビュッフェ形式で食事も楽しめました。スタジアムの担当者によると、客席はすべてピッチの中央を向くように設計され、見やすさを追求しているそうです。確かにサッカー専用スタジアムということもあってか、ピッチは近く試合を十二分に楽しめました。

 このウェンブリースタジアムの建設費は7億9800万ポンド(約990億円)だったそうですが、2007年の開場から6年で、その分は回収し、来年からスタジアムの収支は黒字に転じるとの話でした。ここまで急激な黒字転換を可能にしたのが、スタジアムが販売するVIPルームです。

 このVIPルームを購入するとサッカーはもちろん、スタジアムで行われるイベントすべてを楽しむことができます。部屋内にはミーティングもできるスペースがありますから、仕事でもプライベートでも利用が可能です。あのデイビット・ベッカムも1部屋を購入しているほどで、全部屋が完売と聞きました。日本では各クラブが販売するシーズンチケットはあるものの、スタジアムそのものの席を買い取るようなシステムはありません。多額の赤字を抱えがちな日本のスタジアムでも、収支を改善させるために検討すべきひとつのアイデアだと思いました。

 ただ、このスタジアムの問題点を挙げるとすればアクセスです。スタジアムの近くに駅はあるのですが、今回も多くの人が殺到し、かなり帰りの電車に乗るまでに待たされたようです。この点、国立競技場はJRに地下鉄と周囲にいくつも駅が点在します。周辺にある神宮球場と秩父宮ラグビー場を合わせれば、現時点でも1日に10万人近い観客を運んでいる実績があります。国立競技場のキャパシティが増えても、アクセス面では大きな問題は生じないでしょう。

 続いて足を運んだのはアーセナルのホーム、エミレーツ・スタジアム。ここでは試合が行われていなかったため、スタジアムツアーに参加しました。これが本当に素晴らしいツアーでした。スタジアム内の施設をあちこち巡りながら、その構造を教えてくれるだけでなく、アーセナルの歴史についてもガイドが紹介してくれます。

 何といってもサッカーファンにたまらないのが、実際に選手たちが使っているロッカールームに入れるところ。しかもアウェーのみならず、ホームのアーセナルのロッカーにも行けるのです。そこには宮市亮選手のロッカーもあり、一緒に回った日本人は皆、記念撮影をしていました。さらにピッチでは、実際にアーセン・ベンゲル監督が使っているベンチにも座ることができ、本当に至れり尽くせりの内容でした。
(写真:ロッカールーム内で宮市選手のユニホームとともに)

 ここまでのサービスができるのもスタジアムがクラブの所有だからこそ。公共の施設を借りていることが多い日本の現状では難しい面もあるでしょう。ただ、こういった試合のない日でもお客さんを集める仕掛けは考えていく必要があるのではないでしょうか。

 最終日の8日に訪れたのはオリンピックスタジアムです。ここでは陸上競技の男子やり投げ予選や、ウサイン・ボルトが出場した200メートル準決勝を観戦しました。五輪のために仮設スタンドを設けて収容人員を増やしたこともあり、ウェンブリースタジアムと比べると、席はやや窮屈に感じられました。トラックとの近さを出すために、スタンドの上のほうは勾配が急な設計になっており、階段を使って上がると息が切れそうでした(苦笑)。

 今回訪問した3つのスタジアムは、いずれも世界基準。新しい国立競技場もこのような世界に誇れるスタジアムにしていくべきでしょう。とはいえ、どこにでもあるようなスタジアムではオリジナリティがありません。デザインなり、施設の中身なり、観客へのおもてなしなりで、“日本らしさ”も感じさせる競技場。この観点も重要です。ロンドンでの貴重な視察を、今後の議論に必ず生かしていきたいと考えています。

 他にも今回はレスリング女子の伊調馨選手、小原日登美選手の試合や、体操男子種目別の平行棒で田中和仁選手、佑典選手の演技も観ることができました。強行日程ではありましたが、五輪の雰囲気を肌で感じたことは本当に良かったです。

 ホームとあって、どの会場も英国代表選手への声援はすさまじく、スポーツで国がひとつになっていることを実感しました。ぜひ日本で、東京で、この一体感を味わってみたいものです。ロンドンでも開幕前は五輪とパラリンピックの開催を決して快く思わない市民も多かったようですが、現地で話を聞くと「やって良かった」と言っていました。

 今回、日本勢は過去最多の38個のメダルを獲得し、銀座のパレードでは50万人もの方が集まりました。これからも僕は五輪とパラリンピックの招致へ、ハードルをひとつひとつクリアできるよう政治の立場から力を尽くしていくつもりです。スポーツの力で、日本をもっと元気に。あのロンドンの熱狂を、日本でも8年後に感じられるよう精一杯、頑張ります。 


友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
 1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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