野茂英雄、佐々木主浩、イチロー、松井秀喜、長谷川滋利、斎藤隆、岡島秀樹、福留孝介、ダルビッシュ有。以上9選手の名前を見てピーンときた人は相当なメジャーリーグ(MLB)通である。
 答えは「オールスターゲームに選出された日本人選手」。9人のうち6人がピッチャーで3人が外野手。内野手と捕手は、まだひとりも選ばれていない。
 この事実を受けて「捕手と内野手はMLBでは通用しない」と結論を出してしまうのは、あまりにも早計だ。城島健司はマリナーズで4年間プレーし、通算462試合に出場している。キャリアハイは渡米した06年で144試合に出場、2割9分1厘、18本塁打、76打点と大活躍した。盗塁阻止率も3割3分7厘を記録した。日本人にとって最も難易度の高い捕手というポジションで、この成績は驚異的といっていい。

 内野手も井口資仁、松井稼頭央、岩村明憲がワールドシリーズ出場を果たし、井口はホワイトソックスとフィリーズで2度、世界一になっている。井口はMLB通算4年間で494安打、松井は同7年間で615安打を記録している。岩村も最初の2シーズンで312安打を記録するなど、滑り出しは上々だった。

 日本人内野手の最大の敵、それはケガである。岩村は09年5月、マーリンズの選手から危険なスライディングタックルを受け「左ヒザ前十字靭帯断裂」(のちに部分断裂と判明)の重傷を負った。昨年4月にはツインズでプレーしていた西岡剛がスライディングで左足をさらわれ、左すねの腓骨を骨折した。松井も05年に左ヒザを蹴られ、戦線離脱を余儀なくされている。共通するのはいずれもポジションはセカンド、併殺プレーの際のアクシデントということだ。

 なぜ、日本人内野手は狙われるのか。松井から、こんな話を聞いたことがある。「アメリカには“ベースが防御してくれる”という教えがある。要するに(二塁)ベースの前に出るとやられる。僕の時もそう。ベースの前でボールをさばいたところを狙われたんです」

 既にMLB挑戦を表明している中島裕之や田中賢介は大丈夫なのか? “殺人スライディング”というと何やらプロレス風だが、それへの対応がMLBでの成否を分けるカギとなることは言うまでもない。

<この原稿は12年11月14日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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