6年目のシーズンとなった今季は、新潟アルビレックスBCの強さが際立ちました。リーグではもちろん、独立リーググランドチャンピオンシップで対戦した四国アイランドリーグplusの覇者・香川オリーブガイナーズと比べても、新潟のチーム力、メンタル面の強さは群を抜いていました。新潟の強さは決して野球の技術に限ったことではありませんでした。一野球選手として、そして一人の人間として、選手全員が地域の子どもたちのお手本となっており、チームが地域と一体化していたのです。そして、BCリーグの目指すべき姿が、そこにはありました。
(写真:独立リーグチャンピオンとなった新潟・高津臣吾監督<左>と優勝トロフィーを手に)
 BCリーグは年々、着実にレベルアップしています。今季、BCリーグを初制覇した新潟は、独立リーグチャンピオンシップでは香川に一つも負けることなく3連勝で、昨季の石川ミリオンスターズに続いて独立リーグチャンピオンを達成しました。新潟は、今季から公式戦として行なった横浜DeNAの2軍とも前後期合わせて2勝2敗。また、他球団との交流戦でも2勝2敗1分と、NPBの2軍とも全くひけをとりませんでした。また、10月25日のドラフト会議においては、福井ミラクルエレファンツから2人、信濃グランセローズと群馬ダイヤモンドペガサスからそれぞれ1人と、計4選手が指名を受け、そのうち1人はリーグ2人目となる本ドラフトでの指名でした。こうした実績は、リーグのレベルの高さを十分に表しています。

 しかし、設立当初からの課題である「観客動員数」については、まだ克服されたとは言えません。今季、観客動員数が前年を上回ったのは、新潟のみ。あとの5球団は下回ってしまいました。特に大きく落ち込んだのは群馬です。群馬はリーグを代表とする強豪チームとして、設立初年度から地区3連覇、2度のリーグ優勝を達成しました。しかし、今季は選手がほとんど入れ替わり、ゼロからのスタートだったこともあり、就任1年目の五十嵐章人監督も非常に大変だったと思います。チーム成績がそのまま観客動員に表れた結果となってしまいました。北陸3球団については、ほぼ横ばいではあったものの、目標を達成していないうえで前年を下回ったわけですから、決して楽観視することはできません。

 新潟に見た魅力あるチームづくり

 もちろん、これまで各球団ごとに、ファン層拡大への対策は懸命に行なわれてきました。リーグでも試合時間の短縮を試みるなど、試行錯誤が続いています。そうした中、6年目を終えた現在感じているのは、チームや選手の魅力というものを徹底的に追求していかなければならないということです。

 その手本となるのが、今季の新潟でした。試合時間は前年までとほとんど変わらなかった新潟が、今季なぜ、観客動員数をアップすることができたのか。決して、強さだけに限ったことではなかったはずです。それはひとえに魅力あるチームづくりに成功したからにほかなりません。日本人の心をひきつけてやまない「高校野球」に勝るとも劣らない“がむしゃらさ”や“清々しさ”にこそ、ファンは魅力を感じ、球場へと足を運んだのです。それこそが、BCリーグの集客力を高めるためのポイントになるということを、私は改めて痛感しました。

 今季の新潟のようなチームづくりを図るためには、BCリーグの共通認識として、全6球団の監督やコーチ、フロントに、そのことを理解してもらい、野球のプレー以外のところのメンタル的な教育を徹底的に行なってもらうような仕組みを築かなければいけません。まずは我々リーグが講習会を開くなどして、球団にきちんと理解を求めていく努力していくことで、これまでほとんど球団任せであった「チームづくり」に積極的に関わっていきたいと思います。リーグとしての大枠を用意し、その中で各球団が工夫を凝らし、魅力あるチームをつくる。これが来季以降の大きなミッションとなります。

 国際的に通用する育成力の強化

 さて、今季の新しい試みとしては、横浜DeNA2軍との試合を単なる交流戦ではなく、公式戦として行なったことが挙げられます。これはガチンコの真剣勝負が行なわれることによって、さらなるレベルアップを図り、観客にもより魅力あるコンテンツを提供したいという思いからでした。実際、観客の入りも上々で、まずまずの成功を収めたのではないかと思っています。今後はDeNAに限らず、賛同していただいた他球団との公式戦も行ない、より魅力ある試合を提供していきます。

 それは、国内にとどまりません。現在、海外の独立リーグとも交渉を行なっており、公式戦としての実現化を目指しています。これはNPBや社会人野球にはない、BCリーグならではのコンテンツとして、新たな魅力を引き出してくれることでしょう。国内ではNPBとの関係を強化するとともに、国際化も進めていきたいと思っています。

 その一環として、今月には国内のほか、米国でのトライアウトを開催しました。私自身、どんな選手が来るのか、どのくらいの人数が集まるのか、皆目見当もつきませんでした。ところが行ってみて、驚きました。なんと、100人もの選手が会場に集まってきていたのです。これは今回、コーディネーターを務めてくれた大塚晶則氏のおかげでもあります。彼は「BCリーグはかつて自分や今、メジャーで活躍しているイチロー選手がいたオリックスに2人の外国人選手を送り込んだ実績をもつ独立リーグ。それだけ、BCリーグの試合にはきちんとNPBのスカウトが視察に訪れているということ。だから、日本のNPBへの道が開くチャンスは、このBCリーグにはある」というふうに説明してくれていたのです。

 2日間に渡って行なわれたトライアウトは、2日目の2次テストに進む選手を絞るのに苦労するほど、レベルの高い選手が集まってきていました。1年目ですぐにNPBに行くのではないかと思えるほどの選手もいたほどです。しかし、何より嬉しかったのは、野球に情熱をもった若い選手たちが大勢いたことでした。彼らと直接話をすると、日本で夢を叶えたいという思いがひしひしと伝わってきました。海を渡って、異国の地に行ってまで夢を実現させようとしているわけですから、それだけでもどれだけ思いが強いかはわかります。そんな彼らがBCリーグでプレーすることで、日本人選手にもいい影響を与えてくれるはずです。

 今後、BCリーグは世界の育成リーグの拠点を目指していきます。
「BCリーグに預ければ、技術のみならず、選手として、人間として、きちんと育ててもらえる」「BCリーグの選手なら、安心して採用できる」ということを国内のみならず、世界において認めてもらうのです。そのためには前述したように、チームづくりの方針を統一させ、リーグ全体の育成力を強化していかなければいけません。来季はその第一歩を踏み出したいと考えています。

村山哲二(むらやま・てつじ)プロフィール>:BCリーグ代表
新潟県出身。柏崎高校では野球部に所属。同校卒業後、駒澤大学北海道教養部に進学し、準硬式野球部主将としてチームを全国大会に導いた。2006年3月まで新潟の広告代理店に勤め、アルビレックス新潟(Jリーグ)の発足時から運営プロモーションに携わる。同年7月に株式会社ジャパン・ベースボール・マーケティングを設立し、代表取締役に就任した。著書に『もしあなたがプロ野球を創れと言われたら――「昇進」より「夢」を選んだサラリーマン』(ベースボールマガジン社)がある。
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