東京五輪・パラリンピックが開催される2020年、この国はどんな姿になっているのだろう。
 高齢化がさらに進んでいることは間違いない。前回、東京で五輪が開催された64年、全人口の1割未満だった高齢者(65歳以上)の数は、20年には3割前後に達するとみられている。
 医療、介護費の伸びはすさまじく、政府の推計では毎年2兆円ずつ増える見通し。11年度は総額48兆円だったが、25年度には83兆円にまで膨らむことが予想される。

 ウォーキングやハイキングなどを除くと高齢者に最も人気のあるスポーツがゴルフである。「エージシュート」を語る高齢者の顔は皆、一様に晴れやかだ。
 コースを歩けば足の衰えを防ぐことができる。新鮮な空気を吸えば気も晴れるだろう。高齢者はもとより、中高年の健康維持・増進にゴルフが果たしている役割は小さくない。

 一昨年に成立したスポーツ基本法の基本理念には、「生涯スポーツ」の推進が高らかにうたわれている。にもかかわらず、未だにゴルフ場利用税が廃止されないのは、いかがなものか。周知のように同税は、かつての娯楽施設利用税が姿を変えたものである。これはビリヤードなどにも適用されていたが、89年の消費税導入を機に廃止された。だが、ゴルフだけが別の税で生き残り、消費税との“二重課税”の様相を呈している。再び消費税率を引き上げるのなら、その軽減策として同税を廃止するのが筋だろう。

 まして7年後には、この国の首都に聖火が灯るのだ。五輪の正式競技であるゴルフに対する課税実態を知れば、ラウンドした外国人はビックリするだろう。大衆スポーツのゴルフにラグジュアリー・タックス(贅沢税)とはどういうことか、と。

 ゴルフ場利用税は各都道府県の財源となり、うち7割はゴルフ場が所在する市町村に交付される。地方自治体の厳しい財政事情を考えれば、同税の存続を訴えるのはわからないでもない。

 しかし五輪招致に成功し、「さぁ、スポーツ立国を目指そう」という国が、特定の競技にのみ、しかも発展の妨げになるような税をかけ続けるのは著しく公平性に欠ける。ゴルフは歳をとってからでも始められるし、うまいへたにかかわらず、誰もが楽しめる。そんな競技をもっと大事にすべきである。

<この原稿は13年9月11日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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