6日、新潟アルビレックスBCは後期の通算成績を22勝4敗1分とし、前期に続いて上信越地区を制しました。これで前後期優勝は2年連続、2011年後期から数えると5期連続です。今回は9試合を残し、8割4分6厘という勝率での優勝でした。正直、ここまで圧倒的に勝つとは思っていなかったので、驚いています。考え得る勝因はただひとつ。選手ひとり一人が自分の役割を認識し、それに基づいてプレーしていること。それがチームワークとなっているのです。
 後期の流れの決め手となったのが、8月の2位・信濃グランセローズとの4連戦でした。その時点で信濃とのゲーム差は4。そこで引き離すことができれば、優勝はグッと近づいてくると考えていました。結果は3勝1敗。勝った3試合は1、2点差という接戦でした。もちろん、選手たちはいつも全力でプレーをしていますが、その4連戦は普段以上にスイッチが入っていたように感じました。

 4連戦を前に、僕は選手たちにはこう言いました。
「確かにこの4連戦は大事だが、崖っぷちだなんて思う必要はない。4ゲーム差ある分、オレたちは優位に立っているんだ。だから怖がらずに、初回から先取点を取りにいく積極的な攻撃を見せよう。そうすれば、相手が崖っぷちに追い込まれるはずだ」

 実際、4試合中3試合は相手に先取点を奪われる展開でした。しかし、僕は選手たちに「焦る必要はない」と言いました。「オレたちには逆転できる粘りがある。チャンピオンとしてどっしりと構えていればいい」と。とにかく守りに入って欲しくなかったのです。4連戦の重要性を意識するあまり、自分たちでプレッシャーをかけて萎縮するのではなく、普段通りの積極的な野球をして欲しかったのです。

 その言葉が効いたかどうか、定かではありませんが、「先取点を取るんだ」ということを口にする選手もいたりして、いつも通り積極的な姿勢でプレーしてくれました。その結果が3勝1敗という成績に結びつき、優勝へとつながっていったのです。

 チームを牽引する4番・足立の“無難さ”

 前期終了後、課題のひとつとして挙げていたのが、盗塁数の少なさでした。まだ完璧とまではいきませんが、それでも前期と比べると、走塁において積極的な姿勢が多くみられるようになりました。特に池田卓(相洋高−神奈川大)と佑紀(日本文理高−平成国際大)は出塁すると、相手ピッチャーがランナーを意識するような動きをするなど、チームにとっていい働きをしてくれています。

 昨年は野呂大樹(堀越高−平成国際大)がリードオフマンとして盗塁王に輝く活躍でチームを牽引しました。その野呂が今季はケガでチームを離れたものの、その穴を埋める役割をしてくれているのが池田と佑紀です。特に池田はリーグ2位、チームトップの盗塁数27をマークしています。昨季までは失敗を恐れてスタートが切れなかったり、たとえスタートを切ったとしても途中でやめてしまったりしていました。しかし、今季は自分の足を信じて走ることができているのでしょう。アウトになることを恐れることなく、初球から思い切ったスタートが切れています。それが数字にも表れているのです。

 打点では荒井勇介(文星芸大附高−中央学院大)がチームトップの41打点をマークしています。荒井は主に1、2番を任せられている選手ですが、下位打線も出塁率が高いため、チャンスに回ってくることが結構多いのです。彼はバットコントロールがうまく、打ち損じが少ない。バッティング練習を見ていても、芯でとらえている確率が一番多い選手です。特に低めのボールには強いため、ピッチャーが決めにきたり、厳しいところを突こうとしても、それを弾き返してしまうのです。

 とはいえ、やはり今季のキーマンといえば、前期途中から4番を担っている足立尚也(横浜商科大高−桜美林大)でしょう。彼の長所は「無難さ」です。バットに当てる技術があるので、三振も少ないですし、守備にも定評があります。バッターボックスでも、守備でも常に冷静にプレーすることができる選手です。それは4番に座っても、まったく変わりません。そんな彼の無難さが、周りの選手に好影響を与えています。「アイツがいるから、自分は思い切ってやるだけ」という気持ちにさせているのです。まさに、チームの大黒柱です。

 さて、後期も残り8試合となりました。その後にはプレーオフが待ち受けています。いくら前後期で優勝しても、最後を落としてしまったら、何の意味もありません。僕にとっては4回目のプレーオフですが、過去3回で感じたのは、やはり短期決戦は平常心でなくなってしまうということです。だからこそ、プレーオフに入っても、変わらず自分たちの野球をやれるかどうかがカギとなります。初回からエンジン全開で、勢いをつかめるか¥。こうした攻撃的な姿勢を貫くことが重要になるはずです。残り8試合は消化試合だからといって手を抜かず、プレーオフのつもりで積極的なプレーをしていってもらいたいと思います。

青木智史(あおき・ともし)プロフィール>:新潟アルビレックスBCプレーイングコーチ
1979年9月10日、神奈川県出身。98年、ドラフト6位で広島に入団したが、2000年オフに自由契約の身となる。その後渡米し、トライアウトを受け続けた結果、03年にシアトル・マリナーズ1Aと契約。しかし、同年に解雇。翌年には豪州のセミプロチームに所属し、05年には豪州選手主体のウェルネス魚沼に唯一の日本人選手として入団した。同年夏にはセガサミーに入社。08年、新潟アルビレックスBCに入団し、09年よりプレーイングコーチに就任。08年に本塁打王に輝くと、09年には本塁打、打点の2冠を獲得した。187センチ、100キロ。右投右打。
◎バックナンバーはこちらから