二宮: 佐藤さんがトライアスロンを始めたきっかけは?
佐藤: 小学3年の時に、母の勧めでトライアスロンの大会に出たんです。初めてのレースだったのに、いきなり優勝した。それておもしろくなって競技に取り組むことになりました。

 水中での激しいバトル

二宮: トライアスロンはスイム、バイク、ランの3種目で構成されます。3つの中で得意なのは?
佐藤: 今はスイムですが、最初はランが得意でした。ちょうど女子マラソンの高橋尚子さんも所属していた佐倉アスリート倶楽部と練習が一緒になることがあって、小出義雄監督から「佐藤さん、マラソンに向いているんじゃないか」ってスカウトされたこともあります。

二宮: それはすごい。でも、佐藤さん自身はトライアスロンに魅力を感じていたと?
佐藤: ちょうど2000年のシドニー五輪からトライアスロンが正式競技に採用され、「私も出場したい」との思いがありました。単に泳ぐだけ、走るだけでなく、3種目やって、その間にいろんな駆け引きがある。何が起こるか最後まで分からないところがおもしろかったんです。

二宮: トップクラスになればなるほど、一般の人が気づかないような駆け引きがレース中に繰り広げられていることでしょう。最初のスイムでは全員が一斉にスタートするので、位置取りが大変だとか。
佐藤: 全員がいいところを確保して泳ぎたいので、水中でのバトルがすごいんです。前を行く選手の水着を引っ張ったり、後ろの選手を足で蹴ったりは当たり前。みんな必死なので、もう怖いですよ(苦笑)。

二宮: バイクではどんな駆け引きがあるんでしょう。
佐藤: バイクは集団で走る時はローテーションしながら交代で引っ張っていくのが暗黙のルールです。皆で速いペースを保って走らないと後続に追いつかれてしまいますから。なので、集団でペースの遅い選手が出てくると、外れて後ろに下がるように言われます。「あなた、遅いよ」って。

 地元の人の温かい差し入れ

二宮: 年明けは、また沖縄で合宿を予定しているそうですね。
佐藤: 1月下旬か2月上旬から、また宮古島でトレーニングをして3月のシーズンスタートに向けて、しっかり強化をしていくつもりです。

二宮: ちなみに1日の練習ではどのくらい走ったり、泳いだりしますか。
佐藤: 朝、6キロくらい泳いで、ランニングでは1日に15〜25キロ。バイクでは100キロくらい走ります。

二宮: 簡単そうに聞こえますけど、なかなかハードですね。エネルギーもかなり消費しますから、食事や栄養補給が大切になるでしょう。
佐藤: そうですね。特にレースの前日は炭水化物をたくさんとってエネルギーを貯める必要があります。この点でも沖縄は食べ物がおいしいので助かっています。特にゴーヤチャンプルは大好きです。ジーマーミ(落花生)豆腐ももちもちしていて、おいしいですよね。結構、練習しても、その分よく食べるので、逆に太っちゃうんです(笑)。

二宮: 本当ですか!? 沖縄は気候が暖かいのみならず、受け入れてくれる地元の人たちの温かさが魅力という話もよく聞きます。今年の流行語にもなった「おもてなし」の心ですね。沖縄の人たちとのふれあいで印象に残っていることはありますか。
佐藤: ランニングの練習で畑の中を走るのですが、そこで農作業をしているおじさんが、いつも温かく私たちのことを見守ってくれて、差し入れもいただくんです。「いつも応援しているから、頑張って」と、さとうきびやパッションフルーツをいただきました。走った後は糖分が欲しいので本当にありがたかったです。

 ランの強化が課題

二宮: 食べ物が豊富で、気候も温暖、人も温かくて、かつ景色がいい。沖縄の良いところはたくさんありますが、実際に走ったり、バイクに乗って練習をする上での環境面はアスリート目線からみてどうですか。
佐藤: 宮古島は道が広くて、車の量も少ないので、練習するには最高の環境です。しかも海沿いの平坦な道だけでなく、坂もあって、アップダウンですごく足腰が鍛えられます。風は強い時もありますが、それも逆にいいトレーニングになりますね。

二宮: スイムの練習は海で行うのでしょうか。
佐藤: いえ。宿舎から少し離れたところにスイミングプールがあるので、そこで泳がせてもらっています。だからトライアスロンの練習をするには本当に恵まれた場所ですね。

二宮: 昨年のロンドン五輪では残念ながら3名の日本代表枠に入れず、出場は叶いませんでした。3年後のリオデジャネイロでは、まずは小さい頃から夢見ていた五輪出場が目標になりますね。
佐藤: もちろんです。そして7年後の東京五輪では、トライアスロンでは日本人初のメダルを狙っています。

二宮: メダルを獲る上での強化ポイントは?
佐藤: トライアスロンは最後のランニングが勝負になります。スイム、バイクでは世界と戦えるレベルになってきたので、あとはランニングを強化すれば上位に行けると考えています。

二宮: 沖縄でしっかりトレーニングを積んで、さらなるレベルアップを期待しています。
佐藤: ランで勝負するには、もう少し体を絞ったほうがいいので、今は2キロ、体重を落とすことを目標にしています。合宿中も沖縄のおいしい料理はちょっと控えなくてはいけないと思いますが(笑)、その分、スピードアップして新しいシーズンでいい結果を出したいですね。

>>前編はこちら
(次回はプロゴルファーの青木功さんが登場します。前編は12月27日更新予定です)

<佐藤優香(さとう・ゆか)プロフィール>
1992年1月18日、千葉県生まれ。トーシンパートナーズ・チームケンズ所属。小学3年からトライアスロンを始め、2007年の日本ジュニア優勝。翌08年には16歳ながら日本選手権で5位入賞を果たす。09年にはITU世界選手権横浜大会のユース部門で優勝。10年にはシンガポールでの第1回ユース五輪で全競技を通じて最初の金メダリストに輝く。この9月のIOC総会では2020年五輪・パラリンピック招致団の一員として東京の最終プレゼンテーションに登壇。3年後のリオデジャネイロ五輪、7年後の東京五輪での活躍が期待されている。

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(構成・写真:石田洋之)
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