二宮: 美馬さんは身長169センチ。プロのピッチャーでは小柄な部類です。
美馬: プロに来る選手は皆、本当にでかいですよね。僕の場合、街中を歩いていても小さいので、あまり目立たない。その点は助かっています(笑)。

 ハンデをポジティブに捉える

二宮: 高校、大学、社会人を経てのプロ入りです。もっと体が大きければ、と思ったことはありませんでしたか。
美馬: それは高校時代からずっと周りから言われてきましたね。高校で2年の春に甲子園に出場しても、結局は「身長が170センチはないと……」という評価でした。だからこそ結果を出して、身長が低くてもプロに行けることを証明したかったんです。

二宮: 体の小ささを乗り越えるために、自分なりに考えたことは?
美馬: 小さいことをネガティブに捉えるのではなく、ポジティブに考えるようにしましたね。たとえば小さな体で速いボールを投げれば、体が大きな選手より目立つ。社会人に入って、この発想ができるようになって、自分の中で殻が破れた気がします。

二宮: 背が低いと同じスピードボールでも角度がつきにくい。このあたりはどのように補うのでしょうか。
美馬: 確かに、角度の面では背の高い選手と比べれば不利です。だから武田久さん(北海道日本ハム)のように、逆に低い重心から伸びあがるようなストレートを投げているピッチャーもいます。僕の場合はスリークォーターで投げるので、斜めにボールの軌道をつくることで他とのピッチャーとの違いをつくろうと意識しています。

二宮: 結果、楽天にはドラフト2位での入団でした。背が低いことで、いろいろ試行錯誤をしたのが成長につながったと?
美馬: それは間違いないですね。どうやったら体の大きな人に勝てるのか。体が小さいということは腕も短いですから、リリースポイントをよりバッター寄りに持ってくるにはどうしたらいいか。そういったことを考えてピッチングをしてきたからこそ今があると思っています。

二宮: 大学は中央大。プロで完全試合も達成している高橋善正監督(当時)の指導も受けました。
美馬: ピッチャーのフィールディングやベースカバーといった基本を徹底して教え込まれましたね。ただ、僕はケガが多くて主にリリーフでした。4年時にヒジの手術を受けて、プロはもちろん社会人に行けるかどうかも微妙な状況だったんです。

二宮: 大学卒業後は社会人の東京ガスに進み、クローザーとして注目されました。阪神の榎田大樹投手が同期ですね。
美馬: 榎田はドラフト候補として注目がどんどん上がっていくので、僕は指名されるかどうか不安な気持ちがありました。ただ、社会人ではケガなく2年間を過ごせたので、それは良かったと思います。

二宮: プロでも1年目はリリーフでしたが、2年目から先発に転向します。
美馬: 1年目にも右ヒジを痛めてしまったので、「先発で挑戦してみるか」ということで始めました。正直、最初は不安だらけでしたね。体力的にも3回くらいでバテていました。でも、コーチや周りの選手に調整方法を教えてもらいながら、少しずつ慣れていきました。成績は良くなかったですが、規定投球回数を投げることができ、ひとつの転機になりましたね。

二宮: ヒジの古傷を抱えているとなると、ピッチングの上で球数を極力減らす工夫も必要になりますね。
美馬: そうですね。星野仙一監督にも登板間隔を空けてもらったり、起用法ですごく気を使っていただいているので、本当に感謝しています。

 ヒジの状態にも沖縄は最適

二宮: 今季、美馬さんはキャンプは2軍スタートです。これもヒジの状態を考慮してのことでしょうか?
美馬: はい。僕は性格上、ついつい張り切って投げ過ぎてしまうところがあるんです。1軍だと、どんどんブルペンで投げ込む必要が出てくるので、「じっくり体をつくって、開幕に間に合うように準備してほしい」とコーチから言われています。

二宮: その点でも、暖かい沖縄で始動できるのは大きいですね。
美馬: ヒジのことを考えたら、沖縄でトレーニングできるのはありがたいですよね。やはり、寒いところで練習すると、どうしても体が固くなるので温めるのに時間がかかりますから。

二宮: 沖縄は景色もいいし、食事もおいしいですから、厳しい練習が続いても気分転換になりますよね。
美馬: みんなで焼肉を食べに行ったり、楽しんでいますよ。正直、沖縄に行くまでは「また長い1年がスタートするなぁ」と少しブルーな気分なんです(苦笑)。でも、久米島に入ってキャンプが始まると、そんな気持ちが一瞬で吹き飛んでしまう。これも過ごしやすい沖縄の環境のせいかなと感じています。

二宮: 昨季24勝0敗と圧倒的な成績を残した田中将大投手がヤンキースに移籍し、今季はその穴を全員でカバーしなくてはなりません。「田中がいないと勝てない」と言われないためにも大事な1年になりますね。
美馬: もちろんです。ひとりで田中の穴を埋めることはできないでしょうが、みんなで24個の白星を積み重ねる。そのピースのひとりとして頑張りたいです。僕自身にとっても存在をアピールするチャンスですね。

二宮: その田中投手とは仙台で一緒に自主トレをしていました。移籍先が決まるまでは、どんな様子でしたか。
美馬: 普段の田中と変わったところは全くなかったですよ。ただ、移籍先が決まってからは、少しホッとしたように見えました。

二宮: キャッチボールをしたら、ものすごく田中投手のボールが変化したとか。
美馬: メジャーリーグの公式球で投げたら、ツーシームがやたら動くんです。動きの予測がつかない。日本のボールではそんな変化はしていなかったので米国では大きな武器になるのではないでしょうか。

二宮: 今季、ブライアン・ファルケンボーグ投手を獲得してリリーフ陣は充実しました。先発にとっては少し負担が軽くなりますね。
美馬: 後ろには斎藤隆さん、青山浩二さん、小山伸一郎さんと控えていますから、6回までゲームをしっかりつくることが大切になるでしょう。1年間、体調を万全にしてローテーションで規定投球回を投げられれば、成績はついてくるとみています。去年は最後だけだったので、今年は1年通じて活躍して、もっといいシーズンにしたいですね。

>>前編はこちら
(次回からはFC東京・徳永悠平選手が登場します) 

<美馬学(みま・まなぶ)プロフィール>
 1986年9月19日、茨城県生まれ。藤代高を経て中央大時代は4年春に2部優勝に貢献してMVPを獲得。東京ガスでは抑えとして活躍し、11年に東北楽天からドラフト2位で入団する。2年目より先発に転向。3年目の昨季はレギュラーシーズンこそ6勝だったが、千葉ロッテとのクライマックスシリーズでは第3戦に先発し、4安打無失点で“プロ初完封”勝利を収める。日本シリーズでは第3戦、第7戦に先発して2勝をあげ、シリーズMVPに輝いた。身長169センチと小柄ながら、ストレート、スライダー、カーブ、シュートなどを投げ、打者を牛耳る。背番号31。


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(構成:石田洋之)
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