10年も離れて暮らしていれば、空白の時間を埋めるのは容易ではない。元よりこの2人は、人生観も違えば、金銭感覚も異なるのだ。どうすれば元の鞘に収まるのか。
 仲違いしたどこかの夫婦のことを言っているのではない。世間を騒がせているbjリーグとNBLのことだ。片や地域密着を理念とするプロリーグ。片や社威発揚、福利厚生を前提とする実業団が主流のリーグ。どこまで行っても水と油の関係だ。
 国際バスケットボール連盟(FIBA)は日本バスケットボール協会(JBA)に対し、2008年から両リーグの統合などを命じていたが、目立った進展はなく、ついにこの11月、日本の加盟資格を停止した。これにより、日本チームは国際試合に出場できなくなった。

 さらにFIBAはガバナンス能力に欠けるJBAを抜本的に改革するため、自らの手でタスクフォースを発足させることまで明らかにした。こうなると、ほとんど進駐軍である。事務総長のパトリック・バウマンはダグラス・マッカーサーか。いや、倒産寸前の日産自動車に乗り込んだカルロス・ゴーンか。

 もちろん進駐軍の上陸を招いた責任の第一は機能不全に陥ったJBAにある。FIBAの要請に応え、諸問題を適切に処理していれば、こうした事態は避けられたはずだ。バウマンが「日本にはリーダーシップが欠如している」と嘆くのも、無理からぬことである。

 しかし、全てをスイス人の剛腕に委ねていいわけがない。たとえばバウマンは韓国、中国を含めた東アジアリーグ構想を視野に入れていると言われるが、これは日・中・韓・ロシア(極東地域)の4カ国のチームが参加して発足したアイスホッケーのアジアリーグが四苦八苦していることでも明らかなように、歴史問題や領土問題が微妙にからむこの地域でボーダレスなリーグを成功させることは、そう簡単ではない。まずは国内リーグの再構築に全エネルギーを傾注すべきだろう。

 もっとも統合の糸口が見出せないわけではない。bjが提案している双方の王者同士のチャンピオンシップなどは検討の余地があろう。今すぐひとつ屋根の下では暮らせないと言うのなら、テーブルを挟んでの2人きりの食事から始めてみてはどうか。冷え切った関係をほぐすには、まずは温かいスープである。

<この原稿は14年12月24日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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