2015年シーズンから新監督として信濃グランセローズの指揮を執ることになりました、岡本克道です。私は現役を引退した後、2008年には長崎セインツ、09年には香川オリーブガイナーズと、独立リーグの投手コーチを務めました。そして10年からは横浜DeNAで投手コーチを5年間やらせてもらいました。そして今回は初めて監督という立場で、再び独立リーグに戻ってきました。自分を磨くいいチャンスだと思っています。
 とはいえ、監督就任というお話をいただいた際には、やはりすぐに決断することはできませんでした。同じ指導者とはいえ、コーチとはまったく立場が違うからです。これまで務めてきた投手コーチは、それこそ投手だけを見ていればいいわけですが、監督は違います。当然野手も見なければいけませんし、チーム全体を見なければいけません。目を配らせる範囲が、コーチとはまったく違うのです。

 そこで私は2、3日考える時間をいただきました。その間、友人、知人に相談したところ、「やってみたらいいと思うよ。これまでとは違った視野で野球を見れるようになるから」という助言を受けました。その言葉に背中を押してもらい、監督を引き受けることを決心しました。

 さて、08年からコーチを務めてきた中で、指導者として私が最も大事にしていること、監督という立場になっても継承していきたいのは、コミュニケーションです。選手とはもちろん、球団関係者とも普段からささいなことでもいいから積極的に話すようにしています。そうしないと、お互いを理解することができないからです。

 私がコミュニケーションを大事にしている背景には、現役時代の経験があります。福岡ダイエー(現ソフトバンク)でお世話になった、監督の王貞治さん、そして投手コーチの尾花高夫さん(現巨人二軍投手総合コーチ)です。王監督も尾花コーチも、選手とのコミュニケーションをとてもよくとる方でした。野球の話から、私生活の話まで、いろいろとしてくれたのです。また、何か悩んでいる時も、監督やコーチの方から「今、こういう状態じゃないのか?」などと、歩み寄って来てくれました。そんな現役時代の経験が、指導者としての礎となっています。

 根付かせたい勝ちへの“執着心”

 さて、信濃の監督としての最大の使命は、球団初の優勝以外にありません。では、どうしたら優勝することができるのか。私が重要視したいのは、「執着心」です。もちろん試合での勝利は大事ですが、その前に必要なのが「勝つ」ことへの執着心です。どういうことかというと、例えばピッチャーはマウンドに立てば、相手にはもちろん、自分にも勝たなければなりません。そして練習でも弱い自分に勝たなければならない時はたくさんあります。今の時期、長野県は雪が積もり、非常に寒い。そんな中でも、しっかりと練習することができるどうかは、自分に勝てるかどうかです。こうした「勝つ」ことへの執着心をひとりひとりに植え付けたいと思っています。その執着心の結果が、試合での勝利につながるはずです。

 また、選手全員に明確な役割を与えることも重要だと思っています。レギュラーだけでなく、代打や代走、そして守備要員なども勝利には欠かすことはできません。もちろん、投手陣には先発、中継ぎ、抑えという役割を固定していきたいと思っています。現在のところ、先発は既存の有斗(所沢商業高−東京国際大)、門中聡(松江商業高−鳥取キタロウズ−兵庫ブルーサンダーズ)の2人に加えて、3番手には斎藤研志郎(花巻高−道都大−トヨタ自動車東日本)を考えています。斎藤は、トライアウトでピッチングを見たのですが、非常にきれいなフォームをしており、スピードよりもキレとコントロールで勝負するという、理想のピッチャーでした。大学、社会人と経て、経験も豊富ですから、即戦力として期待しています。

 そして優勝するために最も大事なのは、チーム全員が目の前の1試合にどれだけ魂をこめて臨むか、です。そのためには練習から、常に実戦を意識することが重要です。キャッチボールからコントロールやフォームを意識し、バッティング練習でも一振り一振り、後悔のないよう、しっかりと振り抜く。こうした練習の時から実戦を想定してやっていく環境をつくっていきたいと思っています。そして球団、ファンの悲願である初優勝を達成し、信濃グランセローズの新たな歴史をつくりたいと思いますので、応援よろしくお願いします。

岡本克道(おかもと・かつのり)>:信濃グランセローズ監督
1973年6月9日、大阪府生まれ。柳ヶ浦高(大分)時代には2度、甲子園に出場。東芝時代には日本選手権と都市対抗大会で優勝を経験した。97年にドラフト5位で福岡ダイエー(現ソフトバンク)に入団。1年目から抑えとして活躍し、19セーブをマークする。翌年には21セーブを挙げた。2003年には中継ぎで54試合に登板し、日本一に貢献する。06年に退団後、米国、台湾でプレーする。08年に四国・九州アイランドリーグ(現アイランドリーグplus)の長崎セインツ、09年には同香川オリーブガイナーズで投手コーチを務める。10年には横浜(現DeNA)の投手コーチに就任。15年シーズンより信濃グランセローズで指揮を執る。
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