4日、日本サッカー協会(JFA)は、前日本代表監督イビチャ・オシム氏のアドバイザー就任を発表した。契約期間は今年の12月末まで。今後は指導者の養成やユースの育成、海外サッカーの情報収集が主な仕事になる。昨年11月に脳梗塞で倒れて以来、初の会見に臨んだオシム氏は「向こう側の世界から戻ってきました。復帰に際して激励をいただいたみなさんには感謝しています。プロとして努力をしてきたからこそここまでこれた」と喜びを口にした。
(写真:元気そうな姿を見せたオシム氏。今後はアドバイザーとして代表をサポートする)
 今回の就任にあたりオシム氏は、「人間誰しも希望を持って生きている。(私も)希望があったから、向こう側の世界から帰ってくることができた。私にとってそれは仕事を完遂できなかったということだ。これからはアドバイザーという立場としてできる限りのことはしたい」と日本サッカーの発展に尽くすことを誓った。

 契約延長については「ドクターに許可をもらわないと何もできない。何か必要な手順を飛ばしてしまうということはいけません。南アフリカに行くかどうかは、“うさぎを捕まえる前にあれこれ心配するな”ということわざにあるように、まず日本代表が南アフリカに行けるということが確定してから考えます。日本代表が予選を突破すれば、もうアドバイザーは必要なくなるかもしれない。いずれにせよ私にとっては実際に現場でサッカーを観たい。南アフリカに行きたい」と語った。

 今後は7日からスイス・オランダで共同開催されるEURO2008を視察予定。オシム氏は「EUROでは出来るだけ多くの試合を観たい。そこで起こっているサッカーの新しい発見があれば、それを見逃さないようにしたい」と精力的に活動する意向を示した。

 日本サッカーについては一般論としながら、「日本のサッカー選手はもっと走らなければならない。また技術のレベルももっと上げていかなければならない。小さい子どもの時期から動きながらのプレーをもっと習得しなければならない」と提言。「現代のモダンサッカーの方向というのは、スピードにある。それに伴って考えるスピード、走るスピードをあげる。それが最低限の前提になる。その上で早いプレーが可能になる。早いプレーをするためにはもっと高いレベルの技術・テクニックを身につけなければならない」と脳梗塞の後遺症を全く感じさせない滑らかな口調で持論を展開した。

 また、先日のU-23日本代表が4位になったトゥーロン杯を例に挙げ、「あの方向でいいと思います。つまり“できるんだ”ということ、“強いチームともいい試合ができるんだ”という自信をつける。サッカーというのは演劇と違ってあらかじめ勝者が決まっているわけではありません」と強豪相手に戦う必要性を訴えた。

 ただし、現場復帰については「もちろんベンチには座りたいが、ベンチでは死にたくないという気持ち」と久しぶりのオシム語録で否定。自身の後を継いだ岡田武史監督については「そんな質問に答えると思いましたか。言いたいことがあれば、本人にあって直接話す」とコメントを避けた。