北京五輪代表選考会を兼ねた陸上の第92回日本選手権は第3日の28日、男女10種目の決勝などが行われた。男子棒高跳びでは日本記録保持者の澤野大地(ニシ・スポーツ)が5メートル70をクリア、3年連続7回目の優勝を果たし、北京五輪代表に内定。 男子110メートル障害は内藤真人(ミズノ)が13秒66で制し、五輪代表に内定した。澤野、内藤ともにアテネ五輪に続く2大会連続の五輪出場となる。
(写真:男子棒高跳びで2大会連続の五輪代表に内定した澤野)
 北京五輪から正式種目となる女子3000メートル障害では、昨夏の大阪世界選手権代表で35歳のベテラン早狩実紀(京都光華AC)が序盤から前に出ると一度もトップを譲ることなく、9分48秒43で3連覇。自身初の五輪代表に内定した。
 男子5000メートルは松宮隆行(コニカミノルタ)が13分47秒81で優勝し、26日に行われた1万メートルに続く五輪代表に内定。同時に、3年連続2冠の快挙を達成した。
 男子800メートルは、口野武史(日体大)、同女子は佐藤(旧姓杉森)美保(ナチュリル)が制した。
 男子100メートル予選では4大会連続の五輪出場を目指す朝原宣治(大阪ガス)が10秒65で1組1着となり、29日の準決勝に駒を進めた。

 澤野、「北京では力を出し切りたい」
 
 日本記録保持者の澤野が標準記録A突破となる5メートル70を3回目にクリアすると、多くの観客が詰めかけていたスタンドは歓声に包まれた。
 春先に左太ももの裏を故障し、今シーズンは大会の欠場が続いていた。試合後、報道陣の前に姿を見せた澤野は「ご心配をおかけしました(笑)。日本選手権という舞台で、標準Aを跳んで優勝できてよかった」と安堵の表情を見せた。
(写真:標準記録Aの5メートル70を3回目にクリアした)
 五輪イヤーを迎えての不調にも、「無理やり(試合に)合わせるよりも、じっくり治してじっくり練習する方がいいと思った。不安はなかった」と、焦りはなかったという。
 昨夏の大阪での世界選手権では予選で脚のけいれんに見舞われて記録なしに終わるなど、これまで世界の舞台での活躍が期待されながらも実力が発揮できずに終わることが多かった。
 今大会、「5メートル70の2回目は硬いポールを使ったが、ふくらはぎがピクッときた」ことから、3回目は負担の少ない軟らかいポールに持ちかえたという。冷静な判断が、今シーズン初の標準記録A
突破へとつながった。
 昨年、一昨年とヨーロッパを転戦し、経験も十分に積んできた。「もっと跳べる手ごたえがある」とさらなる進化への自信も見せる。「北京では自分の力を出し切りたい。澤野大地らしく、楽しく笑顔で跳びたい」
 力さえ出し切れれば上位に入る可能性は十分ある。最大の目標として見据えてきた北京五輪はもうすぐだ。