北京五輪に出場する野球日本代表24選手が17日、発表された。キャプテンの宮本慎也(東京ヤクルト)をはじめ、不調で代表入りが不安視されていた上原浩治(巨人)もメンバーに残った。また最終候補の39選手からは漏れていた森野将彦(中日)も逆転で代表入りした。
(写真:「現時点での日本最強メンバー」と代表選考に自信をみせた星野監督)
 チーム別では中日の4選手が最多。次いで阪神、福岡ソフトバンク、千葉ロッテ、埼玉西武から3名ずつが選出された。広島とオリックスからの代表入りはなかった。前回のアテネ五輪に続く出場は岩瀬仁紀(中日)、和田毅(福岡ソフトバンク)ら4名。アマチュア時代にシドニー五輪を経験した選手も杉内俊哉(福岡ソフトバンク)、阿部慎之助(巨人)と2名いる。結局、24名中19名を昨年12月の予選に出場した選手が占め、実績重視の選考となった。

 24選手のリストの一番上にあった名前は上原だった。予選でクローザーを務めた右腕はここまで2勝4敗、防御率6.46。代表選考が大詰めを迎えた16日の試合でも中日打線に打ち込まれた。今季の調子だけをみれば、決して日の丸のユニホームに袖を通せる選手ではない。

「1週間の合宿で(大野豊投手コーチと)2人で立ち直らせてみせます!」
 上原について質問が飛ぶと、星野監督は力強く宣言した。「上(半身)と下(半身)のバランスが合っていない。やらなきゃいけないとの思いが強すぎて力んでいる」。大野コーチも上原の状態が悪いことを認めている。しかし、それでも「彼の力は必要」と代表入りに踏み切った。

 首脳陣は予選同様、上原をクローザーに指名する青写真を描いている。大野コーチも試合展開や監督の判断で変更はあると断った上で、「最後を任すと言ったほうが力が出る」とそれを認めた。藤川球児(阪神)、岩瀬とつなぎ、最後は上原――。ラスト3〜4イニングをこの3投手で乗り切る構えだ。

「悪いのは原因がある。話をしているとまだ本人が気づいていない点がある」(大野コーチ)。8月2日からの合宿で、いかに首脳陣が上原を復活させるか。ここが星野ジャパンの命運を握ると言っても過言ではない。「やってくれるでしょう。大丈夫」。大野コーチは自分に言い聞かせるように大黒柱の復調に期待を込めた。

 選考で首脳陣を最後まで悩ませたのは、野手と投手のバランスだ。当初は投手11名、捕手3名、内野手と外野手を10名にする構想だった。しかし、新井貴浩(阪神)、稲葉篤紀(北海道日本ハム)らがケガを抱えている現状を踏まえ、最終的には投手を1人減らした。そのため、投手の選考は「先発でゲームをつくれる人を優先」(大野コーチ)し、各チームの中継ぎ、セットアッパーはメンバーから漏れた。

 星野監督は「先発は5イニングを投げてくれれば、中4日でも中継ぎでも行ける」と10投手をフル回転させて戦い抜くつもりだ。「予選では成瀬(善久)が最初、リリーフの役目だったり、長谷部(康平)がいつでもいけるように待機してくれた。(各投手の)役割をどうつくっていくかが、担当コーチとしての役割になる」と大野コーチは話す。唯一、10代での選出となった田中将大(楽天)も「スタミナがある」との理由で中継ぎでの起用を示唆した。

 一方、野手は「広角に打てて、つなげる選手」(田淵幸一ヘッド兼打撃コーチ)との観点から選考が行われた。国際大会ではストライクゾーンが外角に広く、打者にとっては不利になることが予想される。「予選のようにつないで、バント、バスター、エンドランを絡めれば勝てる」と田淵コーチは戦略を明かす。最終候補には小笠原道大や高橋由伸(巨人)、和田一浩(中日)ら一発に期待できる野手も残ったが、いずれもメンバーから外れた。

 代表チームはオールスターゲーム(7月31日、8月1日)終了後に集結。読売ジャイアンツ球場(川崎市)で直前合宿を行い、8月8日にはパ・リーグ選抜、9日にはセ・リーグ選抜と東京ドームで壮行試合を行う。10日に北京へ乗り込み、まずは決勝トーナメント進出を目指して、予選リーグを戦う。

「とにかくケガせんでくれ」
 最後に星野監督は代表選手たちにそう呼びかけた。故障の場合は直前に開かれる監督会議まで、最大5人を入れ替えることができる。しかし、これ以上、頭を悩ませたくないというのが首脳陣の本音だ。「チームスポーツがいい成績を残せば、他のオリンピックの競技も勢いがつくし、日本も盛り上がる。一番、輝けるものを狙って、まずは(予選の)7試合を戦っていこう」。悲願の金メダル、そして2016年五輪での野球競技復活へ、いよいよ星野ジャパンが臨戦体制に入った。

 また、会見に先立ち、今回の日本代表選手が着用する公式ユニホームが発表された。ミズノ社製の新ユニホームは軽さのみならず、高いストレッチ性を実現。特殊な編み設計により、生地にふくらみをもたせることで、ストレッチ性は従来比で約2倍も向上した。前回のアテネ大会のユニホーム(250グラム)と比べて8%軽量化されており、背番号のマーク部分にメッシュ素材を使用するなど通気性にも優れている。
(写真:左がホーム用、右がビジター用ユニホーム)


【投手】 10名
巨人=上原浩治
中日=川上憲伸、岩瀬仁紀
阪神=藤川球児
北海道日本ハム=ダルビッシュ有
千葉ロッテ=成瀬善久
福岡ソフトバンク=和田毅、杉内俊哉
東北楽天=田中将大
埼玉西武=涌井秀章

【捕手】 3名
巨人=阿部慎之助
阪神=矢野輝弘
千葉ロッテ=里崎智也

【内野手】 7名
中日=荒木雅博
阪神=新井貴浩
横浜=村田修一
東京ヤクルト=宮本慎也
千葉ロッテ=西岡剛
福岡ソフトバンク=川宗則
埼玉西武=中島裕之

【外野手】 4名
中日=森野将彦
東京ヤクルト=青木宣親
北海道日本ハム=稲葉篤紀
埼玉西武=G.G.佐藤