四国・九州アイランドリーグの選抜チームが29日、NPBイースタンリーグの混成チーム(フューチャーズ)とさいたま市のロッテ浦和球場で交流試合を行った。リーグ選抜は初回に堂上隼人(香川)のタイムリーと比嘉将太(愛媛)の2ランで3点を先行すると、その後も元香川の深沢和帆(巨人)から2点を奪うなど、得点を追加し、7−4で連勝をおさめた。

(写真:初回、左越えにホームランを放った比嘉)
 リーグ最多勝・西川、2回を無安打に封じる(さいたま・ロッテ浦和)
アイランドリーグ選抜 7 = 300220000
フューチャーズ     4 = 002000100  
[ア] 西川(高)−渡邊(徳)−中江(福)−松居(香)−上里田(高)
[フ] 津田(日)−黒滝(ロ)−深沢(巨)−鈴木誠(巨)−染田(湘)−江口(ロ)−橋本(ヤ)
本塁打   (ア)比嘉(愛)2ラン、YAMASHIN(高)ソロ
       (フ)山本光(巨)ソロ2

「どの角度で投げたらいいかわからないんですよね。どこから投げても力が入らないんで」
 試合後、ポツリと語った言葉には苦悩がにじんでいた。アイランドリーグの先輩として存在感をみせたかった巨人・深沢和帆は1回を2安打、2四死球で2失点。残念ながら香川でみせた豪球投手の面影はそこにはなかった。

 今季の深沢はルーキーイヤー以上に悩めるシーズンを送っている。中継ぎサウスポーの競争が激しい巨人において、サイドスローへの転向も試みた。今は、スリークォーター気味に角度を変えて投げている。四国時代の勢いだけの投球では通用しない。試行錯誤を重ねた結果のフォーム変更だった。
(写真:ストレートの制球が定まらず、苦心の投球を続ける深沢)

 千葉ロッテの2軍本拠地である浦和球場での試合とあって、ゲーム前には角中勝也、宮本裕司、白川大輔(いずれも元高知)、小林憲幸(元徳島)の元アイランドリーガーがグラウンドに姿をみせた。また練習を終えた東京ヤクルトの伊藤秀範(元香川)も試合中にベンチ裏にやってきた。ひとつの夢を叶えた彼らではあるが、それはゴールではない。深沢同様、それぞれの選手がそれぞれの壁にチャレンジを続けている。

 2度の1軍昇格を果たしながら、現在はファーム暮らしの角中は「あのホームランで打撃が少し狂った部分がある」と話をしてくれた。独立リーグ出身者初のNPB本塁打と騒がれた4月の東北楽天戦での1発。しかし、ホームランは“麻薬”だった。結果を求めるあまり、知らず知らずのうちに自分の打撃を見失った。結局、本塁打の1本以外は1軍ではヒットすら打てず、2軍落ち。ファームでは本人曰く「(好不調の)波の少ないバッティング」を目標に練習を続けている。「バッティングは難しいですよ」。その言葉には実感がこもっていた。

「あと1、2度続けて結果を出せれば、チャンスはあると思うんですけどね」
 昨季は先発マウンドも経験したものの、今季は1度も1軍昇格がない伊藤は、そう自分の立場をとらえていた。今季は先発、リリーフで13試合に登板して2勝1敗、防御率3.00の成績を残している。発言の裏を返せば、続けて結果を出すことの難しさもうかがえる。「あと1、2度」。その壁を伊藤は乗り越えようとしている。

「試合に出る機会があまりないので、昨日からファーストと外野にも挑戦することになりました」(宮本)。「登板機会は与えてもらっているんですが、結構打たれてるんですよね」(小林)。
 言うまでもなく、プロは実力の世界である。日々、課題に取り組み、レベルを高めなければ、ユニホームを着続けることはできない。それはNPBもアイランドリーグも同じである。

 この日のリーグ選抜は先発の西川徹哉(高知)がスライダーを効果的に交えて、2回を無失点。今季は既に12勝を挙げている右腕が進化を印象づけた。打撃でも比嘉、YAMASHIN(高知)がホームランを放ち、パワーを示した。とはいえ、1軍で完封勝利の実績をもつ橋本義隆(東京ヤクルト)相手には多彩なボールの前に三者連続三振を喫した。

 初の関東遠征でNPB相手に連勝したことは大きなアピールだ。しかし中身をみれば、まだまだNPBとの間に壁があることもはっきりした。さらにいえば、リーグとの実力差を見せつけた彼らでさえ、1軍に上がれていないという現実がある。独立リーグから這い上がるために越えなくてはいけない壁は高く険しい。それでも、ひとつひとつ乗り越えなくては夢はつかめない。2試合での経験をいかに壁を乗り越えるためのくさびとするか。四国・九州に戻っての戦いはまだまだ続く。
 

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