柔道男子100キロ超級に出場した石井慧(国士大)が決勝でタングリエフ(ウズベキスタン)を優勢勝ちで退け、五輪初出場で初優勝を成し遂げた。日本勢は鈴木桂治(平成管財)に続き、この階級2連覇。北京では不振を極めた男子柔道だったが最後は最高の結果で大会を締めくくった。
 石井は初戦の2回戦で、ビアンケシ(イタリア)を内股で葬り、順調なスタートをきった。続く3回戦もシェハビ(エジプト)を大内刈りによる一本勝ち。準々決勝はアテネ五輪銀メダリストのトメノフ(ロシア)を横四方固め、準決勝ではグゼジャニ(グルジア)を上四方固めでそれぞれ破った。最大の強敵とみられていたリネール(フランス)が準々決勝で敗れたことも石井には有利に働いた。

 決勝でも積極的に攻める石井。2分過ぎと4分過ぎ、タングリエフに指導が与えられ、そのリードをキープした石井が金メダルを手にした。準決勝までの全ての試合で一本勝ちを奪い、他を寄せ付けない圧倒的な強さを見せた。

■石井慧選手のコメント
「ありがとうございます。自分が優勝できたのは付き人、先生、応援してくれた人のおかげです。(北京の畳は)すべらなかったです。準決勝で勝ったトメノフは好きで見ていたのでそれが役に立ったんだと思います。リネールと決勝でやれなかったのは残念ですが、機会があれば戦いたいです。
 決勝の柔道が僕の柔道です。国士舘の柔道は絶対負けてはいけない柔道なんです。オリンピックのプレッシャーは斎藤(仁)先生のプレッシャーに比べれば屁のつっぱりにもなりません。全日本選手権を制した自分が負けたら日本柔道の負けだと斎藤先生に耳にタコができるほど言われていました。自分はスポーツではなく、“戦い”をやっているつもりです」

 一方、女子78キロ超級の塚田真希(綜合警備保障)は決勝でトウブン(中国)に一本負けを喫し、史上初となる最重量級連覇の夢は叶わなかった。2005、07年の世界選手権で敗れた宿敵の壁は高かった。

 塚田は初戦で世界ランク2位の強豪・モディエール(フランス)から大外刈りで一本勝ち。続く準々決勝でサンボッティ(メキシコ)、準決勝でポラウデル(スロベニア)を得意の横四方固めでおさえこみ、決勝までコマを進めた。

 決勝のトウブン戦は激しい組み手争いとなった。先に主導権を握ったのは塚田。足払いで有効ポイントを奪う。その後、指導をとられても前に出続ける塚田。しかし、金メダルまで残り時間約10秒となったところでどんでん返しが待っていた。一瞬、深く沈んだトウブンの一本背負いが炸裂し、塚田の体が宙に浮く。悔しい一本負けで塚田は涙を飲んだ。

■塚田真希選手のコメント
「悔しいです。(残り時間わずかで逆転されたこと)これが結果です。(銀メダルという立派な結果ですが?)今はあまり考えられないです」