陸上の女子マラソンが17日、天安門広場をスタートし、国家体育場をゴールとするコースで行われ、日本勢は中村友梨香(天満屋)の13位が最高で大会3連覇と5大会連続のメダルを逃した。中村は途中までは2位集団につけていたが、30キロ手前で離され、2時間30分19秒でゴール。昨夏の世界選手権で銅メダルを獲得した土佐礼子(三井住友海上)は15キロ過ぎから遅れ、25キロ過ぎで途中棄権した。優勝は20キロ手前から抜け出したコンスタンティナ・トメスク(ルーマニア)でタイムは2時間26分44秒だった。
(写真:12キロ過ぎ、大集団が駆け抜ける)
 スタート時点の気候はくもり、24度、湿度57%。途中からは雨もパラつき、北京の夏にしては比較的涼しい条件のレースだった。

 最初の5キロのタイムは18分を超え、30人ほどの大集団がゆったりとしたペースで進んでいく。道幅が狭く、カーブの多い天壇公園の敷地内で集団は縦長になったものの、大通りに出ると再び固まって走る状態が続いた。10キロの通過タイムは36分10秒。相変わらずのスローペースだった。

 日本勢もこの大集団の中でレースを展開する。初の五輪となる中村友梨香が2番手で世界最高記録をもつポーラ・ラドグリフ(英国)らの後ろを走り、土佐礼子は集団のやや後方につけた。

 レースが動きをみせたのは、15キロ過ぎ。大阪世界陸上金のキャサリン・ヌデレバ(ケニア)と土佐が集団からやや遅れ始める。特に土佐は腕の振りが乱れて表情もゆがみ、明らかに異変が生じていることを感じさせた。土佐はそのままズルズルと後退。時折、下を向きながら外反母趾の痛みが出たと報じられた右足をひきずりながら走る。だが、次々と後ろのランナーに抜かれ、完全に脱落した。そして、25キロ過ぎ、夫の村井啓一氏に抱えられ、涙のリタイアとなった。

 19キロ付近で集団から抜け出したのは、トメスク(ルーマニア)。一気にペースを上げ、10メートル、20メートルと後続を引き離していく。中村らの2位集団がこれを追うが、差はどんどん広がった。25キロ地点でトメスクとの差は34秒。独走状態に突入する。

 追いかけたい2位集団だが、周春秀(中国)、リディア・シモン(ルーマニア)、ラドグリフ、そして後方からペースを上げてきたヌデレバら実力者がそろいながら、追撃するランナーは現れない。道幅が狭くなる28キロ付近の北京大学構内では、中村が後ろに下がり、2位集団から引き離される。30キロ地点ではとうとうトメスクのリードは1分近くまで開いた。

 トメスクは30キロを過ぎても走りが衰えることなく、金メダルは確実な状況に。レースの焦点はケニア勢と中国勢の2位、3位争いに移った。ケニアのマーサ・コム、ヌデレバと中国の周、朱暁琳が4人でつかず離れず、勝負の行方はスタジアムまでもつれ込んだ。

 結局、38歳のベテランランナーが会心のレース運びをみせ、そのまま歓喜のゴールイン。最後の直線では手を上げて、歓声に応える余裕もみせた。2位はスタジアム内で地元選手の周と激しいデッドヒートを繰り広げたヌデレバが入った。3位は地元の熱い声援の後押しを受けた周だった。

■中村友梨香選手のコメント
「先頭についていこうと思ったが、ついていけなかった。世界のトップレベルとの差を感じた。最後は足が思うように動かなくて、これが自分の力かなと思った。日本がずっと続けていた(マラソンでの)入賞ができなかったことは、ちょっと残念という気持ちがある。これから1年1年経験を積んで強くなりたい」